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百花繚乱のユニフォーム特集

気になるウワサの現場 福岡ソフトバンクホークスユニフォーム洗濯業者 博文舎クリーニングに潜入!

 

選手にとっての“仕事着”“戦闘服”“衣装”であるユニフォームは、一つの戦いを終えると、勲章ともいえる汗や汚れがたっぷり。しかし、次の試合前にはキレイにピカピカ、カッコいい姿でグラウンドを駆け回る。そこにはチームを陰で支える人たちの激闘とともに、深〜い愛情があふれていた。
取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM

ユニフォームはどんなふうに洗濯されているんだろう?


洗濯物にも個性あり


 戦う男たちは、カッコいい。そのカッコ良さを引き立たせるのがユニフォームだ。ソフトバンクの場合、ホームゲームならば真っ白にレボリューションイエローが映えるユニフォームを、選手たちがピシッと着こなして戦いに挑んでいく。それが、試合が終われば、汗と汚れにまみれた“男らしい”姿に様変わりする。シーズン中、繰り返される一連の流れ。では、この汚れたユニフォームは、どのようにして毎試合キレイになっているのだろうか。普段はなかなか見ることのできない“ユニフォームの秘密”に迫るべく、今回、ソフトバンクのクリーニングを担当している『博文舎クリーニング』を訪ねた。

 この日は、一軍の試合がPayPayドーム、二軍の試合がタマスタ筑後で、どちらもデーゲームで行われた。同社の作業場を訪ねたのが午後9時。すでに一軍の洗濯物が到着しており、中島康雅社長が仕分け作業(1)に取り掛かっていた。ユニフォームだけでなく、アンダーウエアや練習着、タオル、球団スタッフのウエアなどもあるためすごい量だが、中島社長に言わせると「まだまだ。これから筑後の荷物が届くから」とのこと。確かにこのあと、作業場は山のような洗濯物であふれ返ることとなった。

1 仕分け

洗濯機に入れる前に、種類ごとに選別。ユニフォームは汚れ具合によっても分ける。


 仕分けは、種類ごとにカゴに分けられていく。ドームから届いた袋の中は、ほとんどが選手が脱いだまま。それを裏返したり、パンツの足部分を元に戻したりしながら、「個性があるんですよね(苦笑)」と中島社長。キレイにたたまれたパンツは「栗原(栗原陵矢)選手です。毎回こうやって出してくれるんですよ」。気遣い100点満点の選手がいるかと思えば、パンツの中から一緒に脱いだであろうストッキングが出てくることもあった。選手それぞれ、クセがはっきり出ている。

一〜三軍まで合わさるとすごい量だ


 ユニフォームでも特に汚れがひどいものは、また別に分けられる。若手選手たちに交じって、一際汚れているのが松田宣浩選手だという。「ベテランになっても、それだけ練習をしているということです」(中島社長)。ここでもまた、35歳を超えてもなおレギュラーを守り続けている松田選手のすごさを痛感した。

2 洗い

ここであらためて数を確認し、メモしていく。帽子はつけ置き洗い


 洗いは、ドラム式の洗濯機を使って分けられた種類ごとに、時間や洗剤の量などを調整して行われる。特に、ストッキングや汚れがひどいパンツは念入りに時間をかけて洗い上げる。あちこちから洗濯機がうなりを上げたかと思えば、洗い上がりの洗濯機のふたを開けると同時にいい香りも漂ってくる。この香り、実は選手からの要望によるもの。「いろいろと試行錯誤しました」と中島社長はここにたどり着くまでの裏話をしてくれたが、期待に応えられるよう、こういう細かな部分にも気を配る。

全国の人が見ている


3 乾燥

洗濯機と同様、ドラム式のほか、ユニフォームの場合は上着をハンガーのまま乾かせる機械を使用


 乾燥はドラム式のほか、ユニフォームの上着に関してはハンガーに掛けたまま乾燥させることのできる特殊な機械を使用する。電話ボックスのような長方形の機械の中では、吊るされたユニフォームの上着がゆらゆらと揺られている。なるほど、これで乾燥と同時に、シワを伸ばすこともできるわけだ。

4 仕分け・たたみ・包装

1つひとつ誰のものかを確認、ストッキングはセットにしてたたみ、該当選手のロッカーに入れていく。


 乾燥が終わると、今度は2階の作業場へ。実はここから一番大変な作業が待っていると、中島社長は言う。「洗いも大変ですが、一番は選手別に分けてたたんで包装する作業なんです。選手によって(洗濯物の)枚数が少ない人もいれば、多い選手もいる。また、毎年、選手の入れ替えだけじゃなくて、スタッフの数も増えたりするから、棚が足りなくなってきてしまって(苦笑)」。だが、この作業を任されている女性スタッフは、お手のものとばかりに、次から次へと選手ごとに仕分けて、たたんで、それぞれの選手の棚にしまって、を繰り返す。さすがの一言だ。

ロッカーは壁沿いにズラリ


 この4つの工程が、ほぼ同時進行で繰り広げられていく。この日は翌日が休みということもあってスケジュール自体はタイトではなかったと言うが、それでも筑後の洗濯物が到着したあとは、作業場は戦場と化し、明け方まで作業は続いた。1〜3は中島社長と同社勤続20年以上のベテラン担当者・木場興信さんの2人で、4はこの日は女性スタッフ3人で。思っていた以上の少人数での作業体制に、中島社長は「大変ですよ。特にナイターで試合があった翌日、デーゲームのときなんかは……」と現状の厳しさを教えてくれた。

 それでも任されている以上、一切妥協はしない。「球場で、テレビを通じて、全国の人がうちの仕事を見ている。見られているという意識が、モチベーションにつながっています」と、中島社長は強い口調で語る。

 博文舎クリーニングは、ユニフォーム専門の業者ではない。Yシャツなど一般の方の洗濯物も扱う、いわゆる町のクリーニング屋さんだ。そんな彼らが、誇りを持って、愛情も持って、地元球団を支えている。

選手ごとに包装された洗濯物とともに、ユニフォームの上着はハンガーに掛かったまま、キレイにシワも伸びた状態でPayPayドームに届けられる


作業の合間に中島康雅社長にお話を伺いました!


――ソフトバンクのユニフォームを洗濯するようになったのはいつから?

「ソフトバンクになって2年目からなので、今年で16年目。きっかけは、球団が募集をしていたんですよ。もともと野球が好きだった私にとって、球団に関わる仕事ができるのは本当に光栄なこと。だからこそ、大変でもやり続けられるんだと思います」

――やりがいを感じるのはどんなときですか。

「昨年はありませんでしたが、優勝するとビール掛けがありますよね。これがまた大変な作業にはなるんですが、やっぱりうれしい! 2014年だったかな。秋山(秋山幸二)監督最後の年に、リーグ優勝、クライマックスシリーズ、日本一と3回、ビール掛けがあって。一番印象に残っています」

今回、取材協力してくださったのは……
博文舎クリーニング
〒811-2304 福岡県糟屋郡粕屋町仲原2485-4
TEL:092-626-5255(受付時間9時〜17時)
http://hakubunsha.com/

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