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井端弘和コラム

守備が疎かになってはいないか?巨人・吉川岡本の拙守は情けなかった【井端弘和の「野球の“極意”」】

 

3月30日の中日戦[バンテリン]の3回二死一、二塁から巨人の三塁手・岡本和真が野選。二塁手・吉川尚輝があわててベースカバーに入ったが…


 ペナントレース序盤戦の、この早い段階でお伝えしたほうがいいと思い、今回は『守備』をメーンのテーマとしました。セ・パ両リーグともに対戦は2巡目に入っていますが、開幕から例年以上に守備のミスが目立ち、残念でなりません。

※2020年、21年ともに6カード終了時点。楽天は参考記録


 プレーが雑(ざつ)に感じてしまうのは、試合を左右するような「1点」に直接的または間接的に結びつくエラーやボーンヘッド(判断ミスを含む)があまりにも多いからです。1日に6試合が行われているとすれば、1試合は守備のミスによって決着がついているといっても過言ではないでしょう。データを見てみると、実際にセ・リーグでは前年の開幕6カード終了時点と比較して、失策数が大幅に増えているのが比較表からも分かると思います。ここで出ているデータは、あくまでも公式記録で失策とされたものだけであって、記録としては残らない痛恨のミスもかなりの数が散見されます。

 一例を挙げるとすれば、3月30日の中日対巨人(バンテリン)での巨人・吉川尚輝選手、岡本和真選手の拙守でしょう。先制点を奪った直後で、大事にしなければいけない3回裏の守備でした。二死一塁の場面で中日・阿部寿樹選手が放った打球はピッチャーの足元を抜くものでしたが、あらかじめ二遊間を詰めて守っていた二塁手の吉川選手は打球に追いついていながら、後ろに逸らしてしまいます(記録は失策)。捕球後そのまま二塁ベースを踏むことを意識したのか定かではありませんが、情けないプレーでした。

 百歩譲ってエラーは出るものとしても、直後の岡本選手のミスは論外です。続く高橋周平選手のフルカウントからの三ゴロを、三塁手の岡本選手は二塁に送球しオールセーフに(記録は野選)。二死一、二塁フルカウントで、走者自動スタートは常識。二塁に投げて間に合うはずがありません。併殺でも狙うかのように捕球してすぐの送球は、状況が頭に入っていない証拠です。結果、二死満塁とピンチが拡大、ビシエド選手の2点適時打を許し、最終的に3対3と引き分けに終わっています。

 現役時代、もちろん私もミスは犯しました。ただ、「ここ」という緊迫の場面ではグッと集中し、1点を防いできた自負があります。そのための練習も繰り返し行ってきました。プロとして過ごした時間で言えば、8割が守備で、打撃は2割でしょう。

 なぜ今、守備のミスが多いのか。原因は1つではありませんが、チームとしても、個人としても、打撃に重きを置き、守備が疎(おろそ)かになっていることが挙げられると思います。今春キャンプを見ても、投内連係など細かいプレーに時間を割いても、実際に打球を受ける本数は圧倒的に少ないことが気になっていました。打って稼ぐ1点と、守備で防ぐ1点の価値を、果たしてどう考えているのか。実際に序盤戦で守備の綻(ほころ)びがこれだけ多いわけですから、日々の練習でも意識して取り組んでほしいですし、1点を守り勝つような、緊迫の試合を数多く見せてほしいと思います。

PROFILE
いばた・ひろかず●1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。右投右打。内野手。堀越高から亜大に進み、98年ドラフト5位で中日入団。ゴールデン・グラブ賞7度の華麗で堅実な守備と、しぶとい打撃で2000年代の中日黄金期を支えた。14年に巨人に移籍し、15年限りで引退。即コーチとなり、19年からは侍ジャパン内野守備走塁コーチ。通算成績は1896試合1912安打56本塁打410打点149盗塁、打率.281。

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