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NEW-WAVEが到来 阪神タイガース2021

阪神・サンズ インタビュー 「どの試合でも去年以上にいいものを見せなければいけない」

 

昨季は第3の野手助っ人として開幕は二軍だった。だが一軍昇格後は、勝負強い打撃でチーム2位の原動力となり、再契約を果たした。今季は紛れもない打線の中心人物だ。シンプルな考えの元、打撃で好成績を残している。すべては阪神で優勝をつかむため、ハードなスイングで打点を挙げていくことにまい進している。
取材・構成・英訳=椎屋博幸 写真=BBM
※成績は4月25日現在



ファンの声援に応えるため いい状態でシーズンイン


 3月26日の開幕戦。ヤクルトの投手陣に打線が抑え込まれる中、2本の本塁打を放ったサンズ。8回表のソロ本塁打は決勝打となった。そして現在7本塁打を放っているが、すべて勝ちに結びついている。開幕から快進撃を続ける阪神の攻撃の中心にいるのだ。

──開幕から打撃好調ですね。いいスタートが切れたのではないでしょうか。

サンズ いいスタートが切れたな、というのはありますが、一方でもう少しできたかな、というのもあります。それよりもチームがとてもいいスタートを切れたことが、すごくうれしいですね。

──昨年は新型コロナの影響で開幕が遅れました。今年は日程どおりの開幕となりましたが、調整はうまくできたでしょうか。

サンズ 去年は少し変なシーズンで、なかなか開幕が来ない状況でした。それでも調整して開幕を迎えたんですけど、それに比べたら、今年は日程もスムーズにきたのでしっかりと準備できましたね。開幕のために体を整えていますし、ファンもそれを望んでいるので、その声援に応えられるようにしっかり調整してシーズンを迎えることができました。

──昨年、日本で野球を1年間やってどう感じていますか。

サンズ 去年はシーズンが始まる前にある程度、日本の野球に対して知識を持っていました。去年多くの試合に出て、シーズンをしたことで日本野球を知ることはできました。それを踏まえてここまでもう少しできた部分はあったかな、という思いはありましたね。どの試合でも去年以上にいいものを見せなければいけないと思っていますから。

──新型コロナの影響で、短いオフになりました。その中で、昨年足りなかったと思うという部分を補うトレーニングなどはしたのでしょうか。

サンズ オフが短かったので、特に何かをやったということはないですね。体をしっかり休めてから、いつもどおりのトレーニングをしていました。ただ打撃では、少し自分の中でシーズン後半によくなかったので、スイングを見直しました。小さな部分ですが、自分の中の悪いクセが出ていたので、修正しました。そこを直しているので、今季いい形でシーズンに入ることができました。

──春季キャンプではそのスイングをうまく保つことができたでしょうか。

サンズ 微調整を元に戻したという感じですから、全体的にはスイングに大きな変化はないですが、そのいい形はキープできました。それと、昨年はピッチャーから内角を攻められることが多かったですからね。それとタイミングをズラしたりしてきたので、その部分でのアプローチをキャンプ中にも図ったりして調整した部分もあります。

──そういうオフからキャンプとしっかりした調整が、開幕での2本塁打につながったのではないですか。

サンズ オフシーズンに昨シーズン中に起こったいろいろな状況を思い描きながら、自分の中で修正をして今シーズンに備えようと思っていましたからね。それをキャンプのときに継続していましたし、それがうまく開幕戦でハマったと言えます。当然、私もそうですが、チームが高いレベルでのゴールを目指しているので、開幕戦を私の本塁打で勝てたことは、自分が描いていたものと近い状況になっています。

今季も豪快なホームランを効果的に放ちチームの勝利に貢献している


──ここまでの7本塁打は昨年1年間日本の野球を経験し、そこで自分の打撃の修正をしたことが間違っていなかったという証明にもなったような感じですね。

サンズ もちろん、そうです。去年1年間で多くのピッチャーと対戦をして、多くの経験を積んだことで、私に対する攻め方や、相手ピッチャーの傾向が分かってきた部分はあります。それが今季の打席の手助けになっているのは間違いないですね。もちろんミスショットもありますが、今のところ、去年の対戦経験を生かしてしっかり打っていけていると思います。

──今年は五番を打っています。三番・マルテ選手、四番に大山悠輔選手、六番に佐藤輝明選手です。このつながりをどう思っていますか。

サンズ すごくいい流れのオーダーになっていると思いますね。パワーのある選手が六番までいるという部分が大きいですね。今は少しずつオオヤマの調子が上がってきています。彼が昨年のような打撃を取り戻したときに、今まで以上にすごく怖い打線になると思いますね。

──それがリーグトップのチーム打率(.264)になっているのでしょうね。

サンズ やはりクリーンアップにパワーバッターが並ぶというのは相手にも脅威を与えられますしね。それと同時に六番までではないですよ。七番のウメノ(梅野隆太郎)が好調をすごく維持していて、チャンスにも強いですし、心強い。そして八番は何人かのショートストップが入っていますが、彼らも素晴らしいチーム打撃をしています。ラインアップという点では、すごくつながりがある打線になっています。

シンプルに考えればいい結果が付いてくる


 今季の猛虎打線はチーム打率、本塁打、打点ともリーグトップを走る。それは三番から六番まで一発のある打者をそろえているから。その中で五番を打つサンズは、今季の打線について六番に入っている黄金ルーキーの佐藤輝明の存在を認め、さらに温かく見守っている。それも打線が機能するため。そして優勝へつながる近道だと信じている。

バットスイングの軌道をしっかり修正して試合に臨んでいる。常にセンターを中心に打ち返すことを心がけている


──その中で六番のルーキーがすごい打撃をすると、サンズ選手も刺激になるのではないですか。

サンズ サトウに関しては、春季キャンプのときの打撃練習でパワーのある打球を見せられましたからね。あのパワーはすごいですよ。私にとっても彼が六番にいることはすごくいい効果になりますが、それ以上にチームにとっても大きいですね。相手ピッチャーも気を使わなければいけない打者だと思いますからね。それにファンがあのすごい打球を心待ちにしているのですから。チーム全体にいい効果となるのは当然ですね。

──ルーキーとして彼のパワーは、メジャーのルーキーたちと引けを取らないですか。

サンズ プロになって12年間、いろいろなルーキーを見てきましたが、あんなにとてつもなく空高く打てる打者を見たことないですね。それは試合でも、バッティング練習でも。彼の打球を見るとすごく驚かされますからね。でも彼はまだ、ルーキーですよ(笑)。

──佐藤輝選手は、現在は相手チームから対策を練られて、打撃が下降していますね。

サンズ 今はすごく苦しんでいますよね。私も練習で打撃について話をしたりしますが、試合の中でいい投手のピッチングをたくさん見て、多くの経験を積んでいけば、今シーズン中からでもすごい打撃をする打者になっていくと思いますし、それだけタレント性のある打者だと思っています。

──そういうつながりの中で、長いシーズンでは打撃の調子が落ちてくることがあります。そのときのサンズ選手なりの対処法はありますか。

サンズ やはり打撃では、タイミングというのを一番大事にしています。これまでの試合でも、いくつかのボールをしっかりとアジャストできず打てませんでした。それは相手投手もいいボールを投げるわけですから。当然、私のスイングがよくない場合でミスショットしてしまうこともあります。その中でいかに自分の思い描いたスイングポジションを保つことができるかだと思っています。

──スイングポジションを保つとは軌道を一定にするということですね。

サンズ そうですね。それと去年は各チームが内角に速いストレートを投げてきて、厳しく突かれました。今年はその反省を生かして、より集中力を高めて、そういう球も含めてセンター返しをしていく意識を強く持っています。しかもハードにボールをたたくイメージでいます。それが今自分の中で大きなトライとなっていますね。

──そのイメージを常に考えながら打席に立っていくのですね。

サンズ そうですね。“強くセンター返しで”という意識です。長いシーズンですから、その日によって体調も違いますし、打撃のときのスタンスも微妙に違うときもありますよね。しかし、センター返しというのは、いつでもシンプルに考えられることですし、それを続けていき、いい成績を出したいです。

──シンプルに考えていくことで打席での迷いがなくなる。

サンズ シンプルに考えることができれば、来たボールをハードに打ち返すことができますし、いい結果が付いてくると思います。だから常にシンプルに頭の中を考えることを大事にしてます。

──「シンプル イズ ベスト」という言葉もあります。

サンズ テクニカルなことを考えても仕方ないというか、苦手なことを直そうとすることで、調子を落とすということもあります。そういう深みに去年の後半はハマってしまった部分があります。その中で、阪神は今年もサイン(再契約)をしてくれて、ここでプレーできています。だからこそ、今年は深く考えるのではなく、シンプルにハードにボールをコンタクトしていきたい。それだけなんですよね。

──それを続けていけば、チームも首位にいますので、優勝も見えてくると思います。

サンズ そのとおりだと思いますし、この阪神には才能のあふれた選手たちがそろっています。その選手たちが、毎試合、いいパフォーマンス、いいプレーを続けていくことで、絶対にいい結果が見えてきます。そして誰もが健康に気を付けて、そしてケガに気を付けてプレーしていけば、優勝というのは必然的なものになっていくと思いますよ。

本塁打を打ったときにベンチで行う「ハッピーハンズ」のパフォーマンスを30回以上できるようだとチームの優勝が見えてくる


サンズってどんな人?栗山正貴通訳


頭のいいナイスガイ

 サンズは本当にナイスガイです。ガンケルもそうですが、彼らは勉強熱心で、すぐに相手選手の名前を覚えましたね。今までの助っ人の中でも、すごく早いほうですよ。2人ともですが、すごく頭がいいので、話がすごくまとまっているんです。インタビューのときなども、通訳するのがすごく楽で、私たちの仕事をしやすくしてくれる。彼らといると仕事をした、という実感があまりわかない。そんな外国人ですね(笑)。


PROFILE
ジェリー・サンズ●1987年9月28日生まれ。アメリカ・ニューヨーク州出身。右投右打。193cm 102kg。カトーバ大から2008年ドラフト25巡目でドジャースに入団。11年にメジャー・デビュー。その後4球団を渡り歩き、18年途中から韓国リーグに移籍し19年に打点王を獲得。20年に阪神に入団。昨季は四番も務めるなどリーグ2位に貢献。今季は開幕から五番打者として猛虎打線をけん引している

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