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BUFFALOES KEYMAN INTERVIEW リーグ連覇への決意

オリックス・吉田正尚インタビュー 原動力は一つの思い「厳しい戦いが続くけど、それも楽しいんです」

 

1敗の重みが増す最終盤を戦う主砲の決意は頼もしい。新型コロナ陽性反応に左太もものケガでの離脱と万全の状態でシーズンを送れてはいないが、自らの成績はすべてが終わってから残るもの。だからこそ1試合、一打席、一球に全力を尽くす。昨季の思いも胸に秘めて“頂”を目指す男の原動力は、チーム全員が忘れてはならないものだ。

求められる役割



 逆転優勝へ突き進む。手に汗握る展開が続く中でも、打線の軸を担う男は冷静だ。強いチームになるために、個人としても打線としても1打席もムダにはしない。混戦を勝ち抜くために──。求められる役割を全うしていく。



──残り1カ月、逆転優勝も見えてきました。緊張感ある日々ではないですか。

吉田 ありますね。1つひとつのプレーが、勝敗に結びつくものだと思っているので。優勝を争っている終盤だからというわけではないですが、より気を抜かず。集中力をより高めてやっています。

──混戦を勝ち抜き連覇へ。当然、ナイン皆が思っていることだと思います。

吉田 最後まで、どこが優勝するか分からない混戦で、面白い展開になっていますからね。自分たちもついていきたい。それに、こういう展開、厳しい戦いの中で勝っていけるのが強いチームだと思っているので。そこで、しっかりと勝ち切れるように。そう思って戦っています。

──『面白い展開』との言葉は、どこが混戦を楽しんでいるようにも聞こえます。

吉田 厳しい戦いですけど、やっぱり楽しいですよ。シーズン終盤は、消化試合というか、優勝が見えない中で戦ってきたことが多かったので。でも、優勝を争う中で試合ができている。優勝争いを楽しみながら、かみ締めながら、勝ちに向かってやっていく。しびれる展開が続く中でも、楽しみながらも全力でやっていきたいと思っているんです。

──では“勝ち切る”上で大事になってくることは何だと考えていますか。

吉田 いろいろありますけど、でも、もう細かいこと云々ではないのかな、とも思うんです。チームの勝利にどうすれば貢献できるか。今、自分に求められているプレーは何なのか。どんな形でもいいので、チームの勝利に貢献すること。それだけだと思います。

──開幕から続けてきた、その思いをより強く持って、と。

吉田 はい。常にそういう気持ちで戦ってきましたし、そこは僕だけではなく皆、そう。今までやってきたことを出すだけだな、と思うんです。

──吉田選手個人の話に移れば、今年は打順が三、四番と日によって変わることも多いです。最善を尽くす上での“準備”の面では、いかがでしょうか。

吉田 三番も四番も、初めて打つ打順ではないので。打順が変わることも今までもあったことですし。そこは、自分の経験に基づいて頭を整理して。相手ピッチャーの球種もそうですし、打席に入るケースもそう。今までの経験を生かしながら、しっかり対応していくことですし、しっかりできていると思っています。

──状況によって求められることが変わる中、8月30日の楽天戦(楽天生命パーク)では、1点ビハインドの9回一死で打席へ。一発長打を狙ってもいい場面とも言えますが、ボールを見極めて四球を選んだことも、勝利に貢献することであり、準備の賜物とも言えるのでは。

吉田 そうですね。でも、どんな場面、どんな打席でも、しっかり集中することなんです。いつも言っていることですが、ホームランって自分のスイングができたときに生まれるもの。長打を狙うのではなく、自分のスイングをすること。そうするには、やっぱり1球に集中することなんです。その結果として、あの打席はフォアボールになった。塁に出ることもチームに貢献できることですから。

──その試合はその後に逆転勝利。ただ、シーズン全体を見れば、今季はストライクゾーンで、どんどん攻めてくる傾向が強いように映ります。

吉田 それは僕も印象としてはあるんですよね。どんどんインコースを突いてくる。どんどんストライクゾーンで勝負してくるなって。まだ(シーズンが)終わってないので、データとかは見ていないんですけどね。でも、甘いコースには投げないようにしつつ、相手も攻めの姿勢というのが伝わってきていて。バッテリーの作業は、バッターのタイミングをズラすこと。そこに僕も負けないように対応するだけです。

──吉田選手の前後を打つことが多くなっている中川圭太選手、頓宮裕真選手とも、そんな話はするのでしょうか。

吉田 意見交換は欠かしていません。どういう球種が、どんな軌道か。どういう印象を受けたかなどは、試合中も話しますし。それはすごく大事なこと。自分で感じたことを皆で共有することができれば、仮に凡打に終わっても、1打席を皆で生かすことになる。皆で攻撃すると言うと連打とかをイメージするかもしれませんが、1打席を共有することも、皆で攻撃することにつながると思うんです。

──それが吉田選手の高打率にもつながるわけですね。そんな個人成績では、3年連続首位打者の期待も寄せられますが。

3年連続首位打者の期待も寄せられるが、求めるのは安打だけではない


吉田 最終的には目指しているところではありますが、それは『タイトルを獲る』ではなくて、チームの勝利に貢献するプレーをして、全部が終わってから『獲れている』のがベスト。目指しているけど、そのためにやっているわけではないというか。なので、終わってから、どんな数字が残っているかが大事だし、終わったときに良い数字が残っているように、毎日懸命にプレーするだけです。

全員で勝つために


今季のチームスローガン『全員でW[笑]おう!!』を形にすべく、混戦を勝ち抜いてみせる


 万全の状態でプレーし続けてきたわけではない。新型コロナの陽性反応に、左足の負傷。チーム内には今も離脱者はいる。思えば、昨季の自分がそうだった。だからこそ、今季こそ──。スローガン『全員で勝つ!!』の思いは誰より強い。



──入団時から「一喜一憂しない」と言ってきました。緊迫した中で気持ちを整えるために大事になることは何でしょう。

吉田 もちろん、良い結果を出すためにやっていますけど、失敗もある。仮にダメでも次はある。そこは引きずらないこと、しっかり切り替えることですよね。引きずって、失敗を続けるのが一番ダメだと思うんですよ。短期決戦のようで、短期決戦ではない混戦の展開での終盤。失敗しても次はあるし、明日は来る。その切り替えですよね。そう思ってやっていかないと、どんどん悪い方向に行ってしまうこともあるじゃないですか。悪いことばかりを考えても仕方ない。やっぱり、切り替えることです。

──今季は新型コロナの陽性反応や故障離脱もあり、「切り替え」を含めて状態を整える難しさも感じているのでは。

吉田 そうですね。気を付けてはいたんですけど……。何とも言えないですよね、そこは。僕だけじゃなく、ほかの選手もそうだし、ほかの球団も同じことなので。

──新型コロナの陽性反応は、無症状でも離脱となり、プレーできるけど、できないもどかしさもあったと思います。

吉田 それはありました。だからこそ、復帰してから誰かが離脱すると「その分まで」の思いは強くなりましたし。経験したからこそ、分かることもあるので。

昨季終盤は左尺骨の骨折で離脱。昨年の背番号34のユニフォームがベンチに置かれるなど、もどかしい時期に


──“経験”で言えば、昨季最終盤も骨折で離脱を余儀なくされる中、優勝争いを見守っていました。昨年のもどかしさも、今季の原動力となっているのでは。

吉田 もちろんです。僕は最後プレーできなかったけど、CS、日本シリーズとプレーできる場を皆がつくってくれましたから。だから今年は自分が力になりたい。優勝に導くプレーをしたい。そういう気持ちは、もちろん強く持っています。

──8月末には杉本裕太郎選手が新型コロナで離脱し、復帰後に足を痛めて再離脱。昨年は、その杉本選手から手紙をもらっていましたが、今年は吉田選手から杉本選手へメッセージも?

吉田 もらいましたね(笑)。今年も一緒にクリーンアップも打っていましたし、昨年のような成績を残せず、歯がゆい思いをしているのを近くで見てきたし、感じてきたので。最後は、また一緒に戦って、一緒に勝利をつかみたいなって。だから、手紙は送ってはいませんが、早く治してください、と連絡はしました。

そんな思いを知っているからこそ、今季は故障離脱中の杉本[写真右]のためにもバットを振る。


──そうして離脱者が相次ぐ中で一丸となって粘って戦ってきたシーズン。チームとしての成長を感じることもあるのでは。

吉田 そこに関しては『何が』とか『どこが』ではなくて、『チームが勝っている』ということがすべてだと思います。緊迫した中で試合を重ねて、しっかり勝つ。それが成長かなとも思う。でも……。

──でも?

吉田 僕が言うのも変なんですけど、成長を感じるというより、まだまだチームが成長しているところだと思うんです。まだまだ強くなる。もっともっと勝てるチームになる。その中の1人として、どんどん成長していきたい。全員で勝って、皆で最後に笑えるように、全力でやる。だから厳しい戦いを勝ち切って、もっともっと成長していきたいと思っています。

取材・構成=鶴田成秀 写真=小山真司
『週刊ベースボール』2022年9月19日号(9月7日発売)より

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