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高校生ドラフト特集2022 夏を沸かせた逸材球児

浅野翔吾は「1位競合」が有力。山田陽翔(近江高)は「投手評価」で一致か!? 高校日本代表ドラフト候補の顔ぶれ&傾向

 

今年の高校3年生が入学したのは2020年4月。つまり、新型コロナウイルスの感染拡大の影響をまともに受けた世代だ。3年間、活動停止期間など、さまざまな制約があった中でも、努力と工夫で乗り越えてきた。高校生は現時点の「実力」に加えて「将来性」が評価基準。侍ジャパン高校日本代表から有力選手を探る。

大学日本代表との壮行試合後、侍ジャパンU-18代表の主将・山田はU-18W杯[アメリカ・フロリダ]への意気込みを話した[写真=田中慎一郎]


 8月28日に結成された侍ジャパンU-18代表は30日、初の対外試合を立大グラウンドで行った。一般公開はされず、報道陣も人数制限があり、NPBスカウトの入場も各球団1人。新型コロナウイルスの感染防止対策の観点から厳重に行われた。

 高校日本代表が出場するU-18W杯における使用バットは木製。毎回、チームが編成されるたび、金属バットからの「順応性」が話題となる。NPBスカウトにとっては、格好の確認作業の場となる。

170センチのサイズも不問


高松商高・浅野は今夏の甲子園終了時点で高校通算67本塁打。U-18W杯のメキシコ戦では、木製バットで68本目のアーチを放った[写真=日本雑誌協会代表取材]


 そこで「問題なし」とジャッジされたのが高松商高・浅野翔吾だ。2年生だった昨夏の甲子園3回戦(対智弁和歌山高)で本塁打を放つと、2年連続出場の今夏は主将として強烈なインパクトを残した。佐久長聖高(長野)との2回戦では、右と左に打ち分ける2打席連続アーチ。近江高との準々決勝では高校日本代表の主将・山田陽翔(近江高3年)からバックスクリーンへ一直線の豪快な当たりを披露した。この日の立大との練習試合では一番・右翼で起用されると、1回裏の初球を右中間へ運ぶ二塁打を放った。

 U-18W杯のメキシコ戦では、木製バットで高校通算68本塁打。金属バットと変わらないパワーを見せた。

 セ球団のスカウト幹部は言う。

「夏の地方大会前の段階から1位候補になるとは思っていましたが、甲子園で競合になる、と確信しました。スター性抜群。期待している場面、大舞台で結果を残すわけですから、自分の心をコントロールできる証拠。体のサイズ? 関係ありません」

 浅野は170cm86kg。身長を問題視するプロ関係者もいたが、そんな声を打ち消すだけの実力を見せた。パ球団のスカウト幹部はこう言う。

「サイズがあれば『何かが、ある』と、私たちは見るものです。浅野君の場合は低身長が完全に払しょくされました。170cmでも十分、180cmに近いパフォーマンスを出せる。ふだんから練習を重ねているようですが、木製バットもまったく違和感がない」

 浅野は昨秋の公式戦後から左打者にも挑戦。投手のタイプ(右のサイドスロー、変則投手)によって左打席に入り、スイッチヒッターの可能性を広げていた。ただ、前出の幹部は「現実的には右でしょう。気分転換で左を練習するのは、体のバランスを整える上では良い」と示唆した。右の和製大砲――。どの球団もノドから手が出るほど欲しい逸材である。

「集客力・人気面」で太鼓判


8月31日の壮行試合、8回裏に救援すると1四球を出すも、3三振と能力の高さを見せた山田[写真=田中慎一郎]


 近江高から慣れ親しんだ背番号1を着け、侍ジャパンU-18代表・馬淵史郎監督から主将に指名された山田は2022年の高校生で知名度ナンバーワンだ。2年夏は4強、3年春は準優勝、3年夏は4強と3季連続で出場した甲子園で計15試合を戦った。通算11勝を挙げ、四番打者としても打率.321、2本塁打、16打点と、まさしく甲子園の申し子だった。懸命に腕を振り、フルスイングする姿は高校野球ファンの支持を集めた。馬淵監督は国内合宿期間中、今夏の甲子園での疲労も考慮し原則、投手を軸とした起用を明言。指揮官は「あれだけのボールを投げる投手はいない」と絶賛し、プロも投手としての評価が高い。セ球団のスカウト幹部は見解を示す。

「投げても良し、打っても良し。ウチの球団は両方を評価しており、気持ちの強さがプレーに出ている。私個人としては、投手として見たい。ただ、本人の率直な気持ちを聞いてみたい気もします。今年は日体大・矢澤(宏太)選手も投打でアピールしていますが、選手の意思を尊重してあげたい。『二刀流』と言っても、指導システムなどが整っていない球団は難しいのではないかと思います」

 山田が一軍に定着すれば「集客力・人気面」においても、太鼓判である。8月31日の壮行試合も8回裏に山田が救援マウンドに立つと、スタンドからこの日一番の拍手が沸き起こったほどだ。

2022年夏の甲子園は好捕手が多かったが、その代表格が大阪桐蔭高・松尾[左]と九州国際大付高・野田[右]だ。智弁和歌山高・渡部も攻守でセンスの良さを見せている


 捕手では大阪桐蔭高・松尾汐恩、九州国際大付高・野田海人が攻守で存在感を発揮。特殊技術を必要とするだけに、獲得しておきたい人材であることは間違いない。

広陵高・内海は大学日本代表との壮行試合でチーム唯一の得点となる、右中間へのソロアーチ。軸がぶれない打撃は、どんなタイプの投手も、順応できる[写真=榎本郁也]


 なお、高校日本代表の四番・内海優太は大学日本代表との壮行試合で、チームの唯一の得点となるソロ本塁打を放った。視察した侍ジャパントップチームの栗山英樹監督が「俺は忘れない」とインパクト十分の一打。打撃センス、飛ばす能力は今回のチームで突出したレベルであるが、卒業後は「大学進学」を希望しているという。4年後が楽しみな左のスラッガーである。

『週刊ベースボール』2022年9月26日号(9月14日発売)より

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