日本ハム・万波のホームラン。もっと警戒してほしかったとダンプさん
ファインプレーのあと
もう9月になりましたが、最近は、まだまだ暑いですね。ダンプが
阪神にいた50年以上前の昭和の時代は、8月半ばごろになると少しずつ朝晩が涼しくなって、ナイター練習のときにトンボが甲子園に入ってきました。シオカラトンボ、オニ
ヤンマと少々大きな2種類のトンボが少し涼しくなった芝生の上をスイスイとね。
このころになると、一軍でも二軍でも成績が悪く、ベテランになった人が「あ〜、トンボが来たか。クビが涼しくなってきたな」とよく大きな声で言っていました。全員じゃないけど、もう少しすると、その声が小さくなり、あまり言わんくなって消えていく人もいます。野球の世界で秋は優勝だ、タイトルだと景気のいい話が多いけど、そういう寂しいこともある季節です。でも、あのトンボ、昭和の終わりくらいになると、もう飛んでなかったな。理由は分かりませんが、周りに緑がなくなったりしたんですかね。
僕の連載は、昔話のほうが喜ばれるらしいけど、最近、いろいろ試合を見ながら話したいことがたまっているんで、今回も最近のことからにさせてください。
8月27日、日本ハムのヒゲでノッポの外国人投手(
ポンセ)が
ソフトバンク戦(札幌ドーム)でノーヒットノーランを達成しましたよね。このとき、ちょっとあれって思った1球を見つけました。
1対0とリードして迎えた2回表の守備で、日本ハムのセンター、万波(
万波中正)が低いライナーをうまくキャッチしたんですよ。ファインプレーですね。これでヒゲの外国人投手も大喜びし、チームがわっと盛り上がった。それで2回裏、万波が先頭打者で打席に入り、カーブ2球で1-1のあと、甘くなった真っすぐをソロホームランです。試合は一気に日本ハムペースになりました。
これって日本ハムファンにとってはうれしいシーンでしょうが、キャッチャーとしては絶対にやってはいけないことの1つです。万波に対しては、歩かせてもいいくらいの気持ちで厳しく攻めなきゃいけないシーンだったと思います。
昔から言われていることですが、ファインプレーをした選手が、次の攻撃で先頭打者になると、打たれる確率って結構、高いんですよ。いいプレーをして、ベンチに帰っても周りが褒めてくれる。そうなるとうれしくなってアドレナリンがドバッと出て集中力もすごく高まっているはずですからね。もう1つ、ここで打たれるのが嫌なのは、そういう選手が打つと相手がすごく乗ってくるからです。試合の流れとよく言いますが、まだ2回ながら勝負を左右する大事なポイントだったわけです。
僕はこういうファインプレーをしたり、前の打席がホームラン打ったとか、気分よく打席に入ってくるバッターはすごく警戒し、いつも以上に打たれない配球をしました。打たれそうだなと思ってから厳しく攻めるでは遅いんですよ。初球からすべて厳しくいかなきゃいけない。
でもまあ、今年の日本ハムはよく負けましたね。見ていると試合の前半はリードしていても終盤で負ける展開が多かったように見えます。これはリリーフ投手の力が落ちるのもあるだろうけど、もう1つ、守備やバッティングが、前半も後半も同じに見えます。競ったとき、逆転しようとしているときと、前半の戦いが変化しているように見えない。
これはまあ、選手の経験不足でしょうね。新庄(
新庄剛志監督)は気付いてないわけはないでしょうから、1年目はそこまで教えきれんかったんでしょう。来年、新庄が監督をやるかやらんか知りませんが、今年、あいつがやってる外野手の低く投げる送球とか走塁とか、試していることは間違いじゃないと思います。それがどう結果になるのかをぜひ見てみたい。BIGBOSS、神奈川のおじいちゃんがそう言ってますんで、ぜひ監督続けてください(笑)。
1球の重要性
巨人のキャッチャーの大城(
大城卓三)の話もしましょうか。昔からの習慣で、やっぱり巨人戦を見ることが多いんで、どうしても目立つんですが、リードだけじゃなく、構えやキャッチングも、よかったり悪かったりの波が大きい選手ですね。要は本当に正しい技術が体に身についていないんでしょう。だから体の状態や気持ちの集中力でプレーが変わっちゃうんじゃないかな。
リードが1球1球途切れていて、最後、そのバッターをどの球で、どう打ち取るかが見えていないキャッチャーとも思っていましたが、この間、堀内(
堀内恒夫)のコラム『悪太郎の遺言状』に同じようなことが書いてありました。みんな同じこと思っていたんですね。
ただ、打撃は僕なんかが偉そうに言えんくらい打ってます。大城のいいときは構えから打ちにいくまで間があって、ゆったり出ている。だから遅いチェンジアップとかにも体が崩されずホームランを打てるんでしょうね。
そうそう、これは大城の悪口じゃないですけど(笑)、名前を聞いて思い出しました。これも大分前だけど、大城が
広島・大瀬良(
大瀬良大地)からタイムリーを打ったシーンがありました(7月15日の巨人-広島戦の6回裏。東京ドーム)。四番を打ち取り、五番にヒットを打たれ、六番を抑え、二死一塁という場面です。2対1と1点差で広島がリードしていました。
ここで七番の大城でしたが、初球にすっと高めの甘い真っすぐを投げてフェンス直撃の三塁打です。テレビで見ていただけで断言するのもなんですが、気持ちが入らず、すっと来た球。経験のあるピッチャーなのに不用意な1球でした。「何でそんな1球だけを取り上げてガタガタ言うんだ、性格悪いな」と思う人もいるかもしれないけど、試合を左右する1球って必ずあるんですよ。それをいかに打たれそうな雰囲気が出てからではなく、前から警戒し、対処していくかがキャッチャーの仕事です。
二死一塁だから長打のある大城で勝負しなくて八、九番勝負でもいいわけですよね。その中で、初球の選択としては、ボールピッチをする、長打を避け、外の低めに投げる、もちろん、勝っているので思い切って強い球で攻めていくでもいいんですよ。でも、あれは無造作な1球だった。その試合の大事なところを占める1球なんで、もっと丁寧に投げてほしかったなと思いました。試合はこれで同点になり、最後は広島が勝ちましたが(6対3)、勝ち星は大瀬良じゃなかった。しっかりエースが勝ち星を積み上げればチームも乗っていけます。そのためにも、キャッチャーだけじゃなく、大瀬良自身も、ああいう1球を大事にしてほしいと思いながら見ていました。
注目は試合後でしょうね。バッテリーがあの1球について、どう反省しているか。野球というのは失敗は仕方ないスポーツです。次にいかに同じ失敗をしないかが重要です。そんな話をしていたらいいのになと思いました。