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有力プレーヤーCLOSE UP スカウト垂涎の超高校級投手

関戸康介(大阪桐蔭高・投手)&松浦慶斗(大阪桐蔭高・投手) 春頂点を見据える左右の剛腕コンビ

 

昨秋の近畿大会で準優勝。大阪桐蔭高は今春のセンバツ出場を有力(32校が決まる選考委員会は1月29日)の立場としている。春夏連覇を遂げた2018年以来の優勝を狙う強豪校のキーマンは、最速で150キロを超える真っすぐを投げ込む左右の2人だ。
取材・文=岡本朋祐 写真=石井愛子


交流試合はカウントしない?


 大阪桐蔭高を指揮する西谷浩一監督は、甲子園歴代3位の55勝(9敗)。1位の智弁和歌山高・高嶋仁氏の68勝、同2位のPL学園高・中村順司氏の58勝を塗り替えることに、期待が高まる。2008年夏、12年春・夏、14年夏、17年春、18年春・夏の優勝7度は歴代最多である。

 昨秋は近畿大会準優勝。今春のセンバツ選出は確実で、目指すは頂点のみ。18年には史上初となる2度目の春夏連覇を遂げたが、21年も3度目の偉業に挑戦する。優勝を目指す上での二枚看板が150キロ左腕・松浦慶斗と154キロ右腕・関戸康介だ。

 なぜ、強いのか。大阪府と奈良県の境、生駒山にある同校グラウンドへ行けばすぐに分かる。40人の全部員が、部訓の「一球同心」で意思統一。グラウンド近くの合宿所で共同生活し、「甲子園優勝」を逆算した取り組みを展開する。説明するまでもなく、プロ・アマ問わず同校出身者の活躍ぶりは、目覚ましい。卒業後も見据えた高い意識で過ごす。すべての現実を覚悟した上で、全国から逸材が入学する流れができている。

 松浦の言葉を聞いて、驚いた。

「交流試合だったので、甲子園で投げた感覚はないんです。1回にカウント? していません。センバツに出場できたら、甲子園のマウンドをしっかりと経験したいと思います」

最速150キロ。恵まれた体格で昨秋の時点で2試合連続完投も経験しており、心身ともに充実している


 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、昨年は春のセンバツ、夏の地方大会と全国大会(甲子園)が中止。センバツ出場32校が8月、1試合限定で甲子園に招待された。大阪桐蔭高は東海大相模高(神奈川)との一戦で、逆転勝利を収めている。松浦は1点を追う8回表から救援し、2イニングで打者6人をパーフェクト。ドラフト指名を受けた山村崇嘉(西武3位)、西川僚祐(ロッテ5位)を抑えた。8回裏の逆転劇につなげる好投を見せ「自信」にはなったものの、トーナメントの大会を勝ち進む「達成感」を得られなかったため、先述の談話に結びついている。

 実家は北海道旭川市。「北海道から高校野球を見ていて近畿地区の実力の高さに驚いていたんです。果たして自分の力がどんなものなのか。レベルの高い環境ならば、上達すると思い、進学を決意しました」。父・吉仁さんは北海高の外野手として1988年春、89年夏の甲子園出場。卒業後は社会人野球でプレーし、引退後は日本製紙石巻の監督も歴任した。11年の東日本大震災で被災し、父の仕事の関係で、北海道へ引っ越した。

 母・美雅さんの妹にあたる古谷理江さんの次男は、ソフトバンクの160キロ左腕・古谷優人。年末年始など親戚で集まる際には、大きな刺激を受けてきた。

「従兄が活躍しているのはうれしいこと。身近なプロ野球選手で、自分も同じステージに行きたいですが、簡単に行ける場所ではありません。1試合1試合の投球内容にこだわれば、結果的に近づいてくると思う」

 古谷の160キロには魅力を感じるが「球速表示に興味はない。求めているのはキレと圧」と、球質アップと得意のスライダーに磨きをかけている。

仲間以上の「家族」の絆


 昨秋、松浦が初めて背番号1を着けたが、この春、エース番号に狙いを定めているが関戸(昨秋の大阪大会は11、近畿大会は10)である。

 長崎県佐世保市出身。小学6年時には全日本学童大会に出場(1回戦敗退)し、ソフトバンクJr.ではNPBジュニアトーナメント準優勝の実績がある。自身の成長を追い求め、中学軟式野球の名門・明徳義塾中へ進学。高知で3年間を過ごし、146キロ右腕は3年夏の全日本少年(横浜)では準優勝を遂げている。軟式球で150キロを計測した高知中・森木大智(高知高)とは県内のライバルとしてしのぎ合った仲だ。「森木がいたから、高みを目指せた。甲子園で対戦できる機会があればいいな、と思っています」。好きな言葉は「創造的破壊」。常に考え、挑戦する姿勢を貫く上で、高校進学先に志望したのは大阪桐蔭高だった。「春夏連覇している学校。自分をさらにレベルアップするには、環境を変えていくしかないと思いました」。中学3年の11月に地元・長崎の広田中へと転校し、一般入試で大阪桐蔭高の門をたたいた。

明徳義塾中時代には軟式球で146キロを計測。昨夏にはNPBスカウトのスピードガンで154キロを計測した


 抜群のポテンシャルを誇るが、昨秋までは故障が多く、本領発揮とは言えない。とはいえ、昨夏の上宮太子高との大阪独自大会5回戦で、自己最速を3キロ更新する154キロ(NPBスカウトのスピードガン)を計測。研究熱心で、趣味は読書だ。「さまざまな分野で成功された方の自己啓発本を好んでいます」と、引き出しを増やしている。

 高卒でのドラフト指名を目指すが「プロと言えるレベルに達していない。もう一つ、二つ、見ていただけるような段階に引き上げたい」と控えめに語る。目標はNPBにとどまらず「小さいころからの夢はメジャー・リーガー。尊敬しているのは野茂英雄さん(元ドジャースほか)です。小さな夢よりも、大きな夢のほうが成長できる」と目を輝かせる。

 学校生活、寝食をともにする環境下で、2人には仲間以上の「家族」の絆がある。お互いで協力し、3年ぶり史上3度目の春夏連覇に挑む。

PROFILE
せきど・こうすけ●2003年4月14日生まれ。長崎県出身。179cm81kg。右投右打。広田小1年時からセインツジュニアで野球を始め、投手兼遊撃手。6年時にソフトバンクJr.でプレー。高知・明徳義塾中では3年夏の全国大会準優勝(投手兼一塁手)。広田中に転校後、大阪桐蔭高では1年秋からベンチ入り。甲子園交流試合では背番号11でベンチ入りも登板機会なし。最速154キロ。変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップ。50メートル走6秒2。遠投110メートル。

まつうら・けいと●2003年7月1日生まれ。宮城県出身。186cm94kg。左投左打。門脇小1年時に門小ガッツで野球を始める。3年時に北海道・新富小へ転校し、新富野球少年団で投手兼一塁手。6年時にファイターズjr.。明星中では旭川大雪ボーイズに在籍し投手、一塁手、外野手で3年時に主戦で全国大会8強。大阪桐蔭高では1年秋からベンチ入りし、2年夏の甲子園交流試合で救援。2年秋から背番号1で大阪府大会を制し、近畿大会4強。最速150キロ。変化球はスライダー、スプリット、ツーシーム。50メートル走6秒2。遠投90メートル。

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