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有力プレーヤーCLOSE UP スカウト垂涎の超高校級投手

小園健太(市和歌山高・投手)152キロ右腕が目指す「春夏連覇」の偉業 「春はもちろん、夏も絶対に負けない投手になりたい」

 

「野球王国・和歌山」に公立校の逸材がいる。2年夏に152キロを計測し、昨秋は県内最大のライバルに3連勝。近畿大会4強と、出場が有力視される今春センバツで目指すは優勝。さらに42年ぶりの快挙も狙っている。
取材・文=沢井史 写真=石井愛子

昨秋の近畿大会4強。センバツ出場は有力であり、今春の甲子園で通常に近い開催であれば、全国のNPBスカウトが熱視線を注ぐことになる


 初回の先頭打者から143、145、146。スピードガンに表示される数値は、投げるたびに上昇していった。11月29日に行われた関大北陽高(大阪)との練習試合。2020年の対外試合ラストを締める先発マウンドに立った小園健太は、立ち上がりから武器の真っすぐに力を込めた。1回の三番打者から2回にかけて4者連続三振。3回に3連打で1点を失うも、4回から5回にかけての6者連続を含み、5回11奪三振で折り返した。終わってみれば、13奪三振2失点完投(16対2)。終盤は疲れも見えたが、9回にも145キロを計測し、126球を投げ切った。この日の最速は149キロ。近畿大会の準々決勝(対智弁和歌山高)で4安打シャットアウト(2対0)して以来、約1カ月ぶりの完投だった。

「自分は最終回に最速を出したいタイプ。5回から7回にかけてはかわすような内容になってしまったので満足はいきませんが、ペース配分をもっとしっかりできていたらと思いました」。反省を口にしたが、4球団5人が視察したNPBスカウトはあらためて、素材の高さを認めた。

 現役時代に右投手だったDeNA安部建輝スカウトは「ストレートの質、角度、すべてが良く、変化球もしっかりコントロールできている。昨秋のドラフト会議の対象だったら、おそらく、1位指名されていたでしょう」と絶賛した。同じく元右腕の楽天愛敬尚史アマチュアスカウトグループマネジャーは「ストレートのコントロール、キレ、精度すべてが完成されている。スピードはもっと伸びそう」と、最終学年へ向けて期待を膨らませていた。

その日の調子に合わせて配球組み立て


 昨年7月、大阪桐蔭高との練習試合で自己最速を更新する152キロをマーク。2年夏を前にして小園の名は、NPBスカウト戦線へ一気に広まった。だが、周囲の喧騒はどこ吹く風、本人はどんな状況でも涼しげな表情でコメントを並べる。自身の性格を「マイペースです」と語り、とにかく芯がブレない。常に「自分に今、何が一番必要なのか」を念頭に置いて、練習方法を試行錯誤。自分だけの世界に入るのではなく、周囲のアドバイスにも耳を傾け、創意工夫を重ねている。硬式球3個分の重さのサンドボールを握り、指先を鍛える独特なトレーニングもその一つだ。

 昨秋は県内最大のライバル・智弁和歌山高に新人戦準決勝、二次予選準決勝、先述の近畿大会準々決勝と3連勝。県1位で進出した近畿大会では東播磨高との1回戦で1失点完投。智弁学園高との準決勝では救援で4回無失点。3試合、22イニングで1失点と圧巻の投球を見せた。

 ここ一番の場面でカットボールやツーシームで三振を奪うスタイルを見て「変化球投手」と評する関係者もいた。確かに、変化球をウイニングショットとするシーンが多かった。ただ、見方を変えれば、持ち球を駆使した投球術は、超高校級。自慢のストレートを軸にしながらも、その日の調子に合わせて、ピッチングを組み立てることができるのだ。

「昨秋は変化球をうまく使ったというより、かわすピッチングが通用したという感じがします。その中で、ストレートでしっかり勝負できたかと言われると、そこはクエスチョンマークがつきます。真っすぐで押し切れなかったシーンもありました。これから春、夏と勝っていくためには、変化球ばかりだと研究されたときに乗り切れない。変化球を生かすためにも、もっとストレートの質を上げないといけないと思いました」

 試金石としたのが、関大北陽高との練習試合だった。5回までは直球で押した。前半の11奪三振のうち、ストレートを決め球にしたのは4個。カウントを整えていく中で、厳しく真っすぐで攻めるのが印象的だった。

「体をしっかりつくって、強いストレートが投げられるようになりたい」

中学時代から組む正捕手の存在感


 19年のドラフトで3球団が第1回1位入札で競合した星稜高・奥川恭伸(現ヤクルト)の球質と、小園をかぶらせるスカウトもいる。一冬を越え、すごみが増す期待感もある。

 市和歌山高・半田真一監督は言う。「数字にとらわれず、力の出し入れも、しっかりできている」とエースの姿に目を細めると、こう続けた。

「これだけ投げられるのは(主将で捕手の)松川(松川虎生)の存在が大きい。松川が小園の良さを引き出し、小園も松川を信頼して投げている」

 貝塚ヤング時代からバッテリーを組む2人。市和歌山高への入学を先に決めていた松川が小園に声をかけたことで、同校への進学を固めた。

「松川は自分が投げたいボールを分かってくれているので、安心して投げられます」。ともに1年春からベンチ入りし、高校でも1年半以上、コンビを組んできた。目標は一つ。

「日本一になることです。春はもちろん、夏も絶対に負けない投手になりたい」

 過去8回(7校)ある甲子園の春夏連覇で、公立校が遂げたのは1979年、和歌山県立の箕島高のみ。小園は2021年、野球王国・和歌山に42年ぶりの偉業を刻み、目指すは世代No.1。高校卒業後の「プロ志望」も表明しており、ドラフト1位指名の夢を抱いている。

中学時代に在籍した貝塚ヤングでバッテリーを組んだ主将・松川[左]も、高校通算31本塁打を誇るプロ注目の大型捕手。相性抜群のコンビは、センバツ優勝を目指している


PROFILE
こぞの・けんた●2003年4月9日生まれ。大阪府出身。184cm89kg。右投右打。中央小1年時にR.I.C.Aで野球を始め、貝塚市立第一中では貝塚ヤングに所属し、3年夏に全国優勝。市和歌山高では1年春からベンチ入りし、2年夏の独自大会は智弁和歌山高との3回戦で敗退。同秋は準決勝では同校に雪辱し、県大会を制して県1位で近畿大会4強。最速152キロ。球種はカーブ、スライダー、ツーシーム、カットボール、チェンジアップ。50メートル走6秒7。遠投120メートル。

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