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2024ドラフト特集

<2024ドラフト>スカウト布陣から読む12球団補強ポイント【パ・リーグ編】

 

全国津々浦々の逸材に目を光らせているスカウト陣。チームの将来は彼らの手腕に託されていると言っても過言ではない。地道なスカウティング活動を日々行っている2024年シーズンの12球団スカウト布陣をチェックしながら、今年の補強ポイントを探っていこう(表内の新は新任)。


オリックス・新任+担当地区の変更


 独立リーグで監督経験もある牧野塁氏が投手コーチに転向し、上村和裕氏が退職。新たに元ロッテで投手としてプレーした小林敦氏、昨季までオリックスで現役だった佐野如一氏が加わった。担当地区も変更され、北陸・関西を担当していた谷口悦司氏が関西のみになり、小松聖氏が北信越・関東から、下山真二氏が東海・関西から変更され、岡崎大輔氏が関東に加えて東北も担当する。新たな布陣で即戦力と将来を見据えた逸材に熱視線を注いでいく。

【2024補強ポイント】チーム事情を踏まえ柔軟かつバランス良く

 世代交代が順調に進むだけに、特定の補強点は見当たらず、昨秋のドラフト同様、上位で素材型、下位で即戦力を指名する可能性も。ただ、今季はエース・山本由伸がMLBに移籍しただけに、シーズンの成績次第では投手に狙いを絞る可能性もあるだろう。野手も同じことだが、柔軟な指名戦略を打ち出すのは、昨秋のドラフトで実証済みだ。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
 ★牧田勝吾[全国]=10[2]比嘉幹貴(日立製作所・投)
 ☆山口和男[全国]=17[4]山本由伸(都城高・投)
  谷口悦司[関西]=19[1]太田椋(天理高・内)
  小松聖[北海道・東北]=23[2]内藤鵬(日本航空石川高・内)
  下山真二[東海・北陸]=21[6]阿部翔太(日本生命・投)
  乾絵美[関西]=21[3]来田涼斗(明石商高・外)
  早川大輔[中国・四国]=24[2]河内康介(聖カタリナ高・投)
  縞田拓弥[九州]=20[1]宮城大弥(興南高・投)
  岡崎大輔[関東・東北]=23[1]曽谷龍平(白鴎大・投)
(新)小林敦[東海・関東]
(新)佐野如一[関東]
★=編成副部長、☆=グループ長

ロッテ・元捕手の福澤洋一氏が復帰


 かつて佐藤都志也高部瑛斗の担当スカウトを務め、昨年は二軍バッテリーコーチで現場復帰した福澤洋一氏が再びスカウトに配置転換され、関東地区を担当する。昨年新人スカウトだった田中良平氏、有吉優樹氏は昨秋のドラフトで担当選手を発掘。永森大士氏はかつて自身が球団代表を務めたBCL/富山から、昨秋は育成を含めて2選手を指名した。そんなアマチュアスカウト陣を束ねるのは榎康弘氏で、視察のために全国を駆け回っている。

【2024補強ポイント】成長過程にある若手の今季の結果次第

 現状では投手、捕手、内野手、外野手すべてのポジションに「近い将来の主力候補」は存在するので、補強ポイントを挙げるなら今秋の時点で「若手が伸び悩んで滞留しているポジション」「引退・退団する選手が出てきて手薄になりそうなポジション」となる。もともと選手層が厚くはないので、極論すればすべてが補強ポイントだ。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
松本尚樹
☆高橋薫
◎榎康弘
 柳沼強[北海道・東北・関東]=20[1]佐々木朗希(大船渡高・投)
□福澤洋一[関東]=23[1]菊地吏玖(専大・投)
 中川隆治[関東・甲信越]=21[1]鈴木昭汰(法大・投)
 田中良平[東海・北陸]=24育[1]武内涼太(星稜高・投)
 三家和真[関西]=22[1]松川虎生(市和歌山商高・捕)
 黒木純司[中国・四国]=21[2]中森俊介(明石商高・投)
 有吉優樹[九州・関東]=24[4]早坂響(幕張総合高・投)
 永森大士[独立リーグ]=24[2]大谷輝龍(NLB/富山・投)
★=球団本部長、☆=編成管理部長、◎=アマスカウトグループディレクター、□=復帰(配置転換)

ソフトバンク・新担当はなじみの地で


 充実の“戦力”に新しい仲間が加わった。山崎賢一氏に代わって中国・四国地区担当になったのは、球団OBの大本将吾氏だ。2017年育成ドラフト1位で入団し、4年間在籍。20年オフに戦力外通告を受けた後は四国IL/愛媛でプレーをし、今季限りで現役を引退した。今年26歳と若く、育成選手だった自身の経験も踏まえた視点でドラフト候補選手の伸びしろに着目していく。四国ILに在籍していたとあって土地勘もバッチリ。独自情報も基に逸材を発掘する。

【2024補強ポイント】世代交代を推し進める後継者候補は見過ごせない

 投手以上に野手の世代交代が進まず。今年も主力に30歳オーバーが並ぶようなら、事態はさらに深刻化する。その点において、明大・宗山塁は競合を覚悟の上でも獲りにいく価値あり。大学入学時からずっと熱視線を送っており、守備力を高く評価。アマ球界トップの遊撃手とあって、2025年には34歳を迎える今宮健太の後継者に申し分ない。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
 ★永井智浩
 ☆福山龍太郎[(全国)]=11育[6]甲斐拓也(楊志館高・捕)
 ◎作山和英[北海道・東北(全国)]=24[6]大山凌(東日本国際大・投)
  宮田善久[関東・静岡]=13[1]東浜巨(亜大・投)
  松本輝[関東・北信越]=24[3]廣瀬隆太(慶大・内)
  福元淳史[関東]=21[1]井上朋也(花咲徳栄高・内)
  稲嶺誉[関西]=24[1]前田悠伍(大阪桐蔭高・投)
(新)大本将吾[中国・四国]
  加藤領健[九州・沖縄]=24[7]藤田悠太郎(福岡大大濠高・捕)
  古澤勝吾[東海など]=24[2]岩井俊介(名城大・投)
 〇山本省吾[(全国)]=15[2]栗原陵矢(春江工高・外)
 □小川一夫[(中国・四国・BCリーグなど)]
★=球団統括本部 編成育成本部本部長 兼 スカウト部 部長、☆=チーフ、◎=チーフ補佐、〇=スカウティングスーパーバイザー、□=球団統括本部付アドバイザー 兼 スカウト部アドバイザー

楽天・地元路線も継続しながら


 今季のスカウト陣に大きな変化はなさそうだが、地元選手の活躍はチームを盛り上げる要因の一つという考えから、北海道・東北のスカウトにはさらに力を入れていきそうだ。ドライチには即戦力の選手が指名される傾向が強く、近年では辰己涼介小深田大翔早川隆久荘司康誠が期待どおりの活躍を見せている。その中でも北関東地区の沖原佳典スカウトは早川、荘司を担当するなど絶大な信頼と実績があり、関東出身の選手が多いのもうなずける。

【2024補強ポイント】右の本格派が加われば厚みのある先発陣に

 補強の中心はやはり投手だろう。則本昂大が抑えに配置転換されたことを考えてもローテーションの柱を担えるような先発投手は喉から手が出るほどほしい存在。早川隆久、荘司康誠、古謝樹とは違う、本格派右腕が求められそうだ。入団当初の田中将大のような気迫を前面に押し出す力投型が加入すればバリエーションも豊かになる。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
後関昌彦=14[1]松井裕樹(桐光学園高・投)
愛敬尚史=19[1]辰己涼介(立命大・外)
 益田大介[北海道・東北]=23[4]伊藤茉央(東農大北海道オホーツク・投)
 沖原佳典[関東]=23[1]荘司康誠(立大・投)
 部坂俊之[関東]=24[1]古謝樹(桐蔭横浜大・投)
 山田潤[東海]=22[2]安田悠馬(愛知大・捕)
 足立祐一[関西]=23[5]平良竜哉(NTT西日本・内)
 岩見雅紀[中国・四国]
 大久保勝也[九州・沖縄]=23[3]渡辺翔太(九州産大・投)
★=スカウト部部長、☆=アマスカウトグループマネジャー ※1月14日時点で未発表。布陣は2023年

西武・スカウト増で細かくチェック


 昨季からは三軍も稼働しているが“育成のライオンズ”をさらに推し進めていくために、アマチュア担当スカウトの増員を図った。昨季はファームスコアラーを務めていた上本達之氏がスカウトに就任し、中国地区を担当することに。近畿・中国地区を担当の後藤光貴氏が近畿専任でドラフト候補に視線を送る。昨年10月のドラフトで育成選手を6人指名。今季の育成選手は26人と過去最大となった。全国に散らばる金の卵たちをより細かくチェックしていく。

【2024補強ポイント】投手偏重の指名から野手メーンにシフト!?

 昨年のドラフトでは支配下指名7選手のうち、6選手が投手。1、2位で即戦力の武内夏暉上田大河、3位以下で将来性のある杉山遙希らを獲得した。投手偏重となっただけに、今年は野手狙いにシフトするか。特に最大の目玉・宗山塁(明大)がいる。源田壮亮の後継者となる遊撃手もキーになるだけに、成長過程はしっかりと見ていきたい。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
 ★渡辺久信
 ☆潮崎哲也
 ◎前田俊郎=15[1]高橋光成(前橋育英高・投)
 ◯渡辺智男[四国]=21育[5]水上由伸(四国学院大・投)
  水澤英樹[北海道・東北]=11[3]秋山翔吾(八戸大・外)
  竹下潤[関東]=23[1]蛭間拓哉(早大・外)
  後藤光貴[近畿・中国]=13[3]金子侑司(立命大・内)
  鈴木敬洋[独立リーグ・信越]=22育[2]滝澤夏央(関根学園高・内)
  十亀剣[関東]=24[1]武内夏暉(国学院大)
  安達俊也[東海・北陸]=17[3]源田壮亮(トヨタ自動車・内)
  岳野竜也[九州・沖縄]=21[1]隅田知一郎(西日本工大・投)
(新)上本達之[中国]
★=球団本部GM兼編成統括、☆=スカウトディレクター、◎=アマチュアスカウトチーフ、○=アマチュアスカウトチーフ補佐

日本ハム・1人減も新たな視点に期待


 スカウト陣は全体で1人減となったが、新たな人材も加わった。1人は昨季まで一軍内野守備走塁コーチを務めていた飯山裕志氏。プロスカウト兼務で、名遊撃手として鳴らした守備職人ならではの視点で次代を担う逸材発掘に注力する。もう1人は東大出身で社会人野球の西濃運輸を経て2022年に球団職員として入団した荻田圭氏。フロントの一員としてチームの現状も把握しており、異色の経歴から独自の目線での見極めが期待される。

【2024補強ポイント】二遊間&No.1選手方針に合致の1位候補

 近年レギュラーを固定できていない二遊間が最優先の補強ポイントになる。その年のNo.1選手を指名する方針はぶれない中で、今秋ドラフト戦線の超目玉、宗山塁(明大)が現時点で1位入札の筆頭候補だろう。全体的に選手層も厚くなってきているだけに、数年後を見据えたポテンシャルの高い高校生なども多く指名対象となりそうだ。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
 ★大渕隆=12[4]近藤健介(横浜高・捕)
 ☆山本一徳=23[1]矢澤宏太(日体大・投&外)
 ◎山田正雄[関東]=13[1]大谷翔平(花巻東高・投)
  白井康勝[北海道・北東北]=19[1]吉田輝星(金足農高・投)
  高橋憲幸[南東北・北関東]=22[2]有薗直輝(千葉学芸高・内)
  坂本晃一[関東]=21[2]五十幡亮汰(中大・外)
(新)飯山裕志[関東]
  熊崎誠也[東海・北陸・近畿]=22[1]達孝太(天理高・投)
  加藤竜人[中国・四国・近畿]=17[1]堀瑞輝(広島新庄高・投)
(新)荻田圭[近畿・東海]
  石本努[九州]=24[4]明瀬諒介(鹿児島城西高・内)
★=GM補佐兼スカウト部長、☆=アマスカウトグループ長、◎=アマスカウト顧問

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