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2024背番号STORY

背中に込める熱い思い 「バックナンバー」珠玉のエピソード【パ・リーグ編】

 

背中に“魂”を宿しながらグラウンドに立つ選手たち。多くの選手が背番号に熱い思いを込める。数字の裏に隠されたストーリー。背番号に関する数々のエピソードを集めてみた。

西武・甲斐野央「#34」三振を積み重ねるリリーバー


甲斐野央[西武/投手][写真=桜井ひとし]


「三振という意味もあるのかな」と笑顔を見せた。ソフトバンクにFA移籍した山川穂高の人的補償で今年1月に西武加入が決まった右腕の新背番号は『34』だ。渡辺久信GMは「真っすぐとフォークで打ち取ることができるライオンズにはいない魅力的なタイプの投手」と高評価。昨年は42回2/3で奪三振39。奪三振率は8.23だったが、さらに「K」を積み重ねる能力はある。もっとも本人はゴロを打たせるのを目的にキャンプでツーシームの習得も目指すが、勝ちパターンのリリーバーとしての期待は高い。明るい性格もチームに好影響を与える。V奪回への貴重なピースだ。

ロッテ・中村奨吾「#8」敵の監督でも師匠は師匠


中村奨吾[ロッテ/内野手][写真=高塩隆]


 ロッテの『8』と言えば、山内一弘有藤道世といった中心選手の番号。中村奨吾が入団した2015年は、大先輩の今江敏晃の背中に『8』が大きく輝いていた。そのオフに今江は楽天にFA移籍。1年の空白期を経て、中村が『8』を背負うことが決まると、今江はチームリーダーの後継を託された中村に「おめでとう。あとは頼んだぞ」と電話を掛けたという。「(今江は)野球選手としてあこがれの存在」と言う中村は今江が楽天の監督に就任してもオフには一緒に千葉県こども病院を慰問するなど、グラウンドを離れれば師弟関係は継続している。

日本ハム・淺間大基「#8」1年越しの思いを胸に


淺間大基[日本ハム/外野手][写真=兼村竜介]


 2022年のオフ、横浜高の先輩でもある近藤健介がソフトバンクへFA移籍すると、背番号『8』を継承した。「尊敬する近藤先輩の背番号を受け継ぐことになり、素直にうれしい。しっかりと期待に応えられるように」と臨んだ昨季、どん底に突き落とされた。2月下旬のオープン戦で右中間フェンスに激突して左足を負傷し、手術。シーズン半ばで復帰はしたものの完治に至らず、ほぼシーズンを棒に振った。それだけに今年に懸ける思いは強い。「1年間、センターで出る。そこしか見ていない」。その言葉を現実のものにして、先輩が背負った『8』をさらに輝かせる。

楽天・則本昂大「#14」あこがれの背中を追いかけて


則本昂大[楽天/投手][写真=井沢雄一郎]


 野球少年だったころ、テレビの特集で津田恒実(元広島)の生きざまを見てあこがれを抱いた。津田が座右の銘としていた「弱気は最大の敵」。これは則本昂大のグラブにも刻まれている。プロ入り後、同じ背番号を背負いエースへと上り詰めた。そして今季、松井裕樹の抜けた穴を埋めるべく、クローザーに挑戦する。津田もまた先発から抑えに転身した投手。理想の守護神はもちろん「津田恒実さん」。その姿を追いかけるように新たな場所でチームを支える覚悟を決めた。どっしりと構え、気迫あふれる投球で勝利を手繰り寄せる。背番号『14』のガッツポーズの数だけ、優勝が近づく。

ソフトバンク・甲斐拓也「#19」何年たっても思いを背負って


甲斐拓也[ソフトバンク/捕手][写真=湯浅芳昭]


 今は亡き野村克也氏(元南海ほか)は、自ら指名した“後継者”の姿をどのように見守ってきたのだろうか。「次は君に『19』を着けてもらいたい」。甲斐拓也が尊敬する野村氏から直々に言葉を掛けられたのが2017年。それから扇の要として着実な成長を見せ、20年に思いの詰まった背番号を受け継いだ。しかし、直後に飛び込んできた訃報。「『19』を見てもらいたかった。見せたかった。着けさせてもらう以上、これからもいい姿を見せられるように頑張っていきたい」。寂しさをこらえて前を向くと、球界を代表する捕手として存在感を見せ続けている。これからも『19』に恥じない活躍を誓う。

オリックス・山岡泰輔「#19」勝負の厳しさを知って



 原点は忘れない。瀬戸内高時代からプロ注目も「通用しない」と社会人・東京ガスへ進むと厳しさを知った。「企業を背負って戦う。それまで緊張したことがなかったけど、都市対抗予選の前は緊張しっぱなしで、なぜだか試合前に涙も出てきた。それほど必死な世界。だから勝つために相手をどう抑えるか真剣に考えた。今の僕がいるのも(東京)ガスでピッチングと向き合ったから」。当時の番号が『19』だ。入団時は金子千尋が着けていたが、2018年オフに移籍すると20年に志願して『13』から変更したのは社会人時代の思いを忘れぬため。身長172cmと小柄な右腕が技術と思考を磨いた原点が、背中に宿り続ける。

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