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柿澤には強い気持ちを持ってほしいです。楽天にはさらに、いい組織作りをしてほしいです【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】

 

楽天二軍時代に心肺停止事件も起こした柿澤です。これが大きな問題になりましたが、なぜ楽天はこのどうでもいい情報を管理できなかったのか……組織の甘さだと思います/写真=BBM


 2014年の楽天の久米島二軍キャンプのことです。前年に柿澤貴裕についてのいろいろな出来事がありましたので、彼には野球に集中させて、体力をつける練習を組みました。

 もちろん、コーチ陣と話し合いながらやるわけです。私もほかのコーチも現役時代に1000本ノックを受けました。厳しいノックをすることで確実に体力がつくことは事実ですし、最近では科学的に悪いことではないという証明もされています。

 そういう効果を狙い、私がノックを打ちました。ノックが進む中、突然柿澤がゆっくり地面に倒れていきました。私もコーチ陣も、現役時代に同じようなノックを受けたので本当に倒れた選手を何度も見てきています。実際に、どういう倒れ方をするのか分かっています。その倒れ方とは明らかに違ったんです。

 私は声掛けをしました。しかし、反応がありません。反応がない場合、人工マッサージをしなければいけないというルールがあります。もちろんトレーナーが「AEDがあるのでやりましょう」と。柿澤はAEDをすると「ウッ、痛え」と反応したんです。その後、救急車を呼びました。心電図をとれば、心肺停止をした形跡を調べることができます。その後の安全性を確認するうえでも、そうすることを決めました。

 そして救急車で病院に搬送し、心電図を取りました。医者からは「心配停止の症状はどこにも出ていません」と報告を受け、病室に出向きました。このとき最初に発した柿澤の言葉が「お腹がすきました」でした(苦笑)。その後、「帰りたい」と柿澤は言いましたが、お灸を据えようと思い「今日は帰らなくていい。何ならずっと入院しておけ」と入院させたのです。彼には私たちの思いが伝わっていませんでしたからね。ただ雇われ二軍監督がやれるのはこれくらいです。また、私の中には「雄星問題」のことが頭によぎったので、そこまで足を踏み入れることができませんでした。

 この事件があってから1週間後のこと。スポーツ紙でスクープとして報道されました。柿澤の心の問題として、これから育成していこうと思っていた矢先です。あのとき、あの場面、記者は誰ひとりいませんでした。その中での記事。球団関係者のリーク以外に考えられませんでした。柿澤を更生させたい気持ちで現場は動きながら、身内からこういう情報が「悪」として漏れる。私は記事に出た「球団本部長から厳重注意」は受けていません。こちらの要求にはまったく動かず、おかしなリーク事件が起きる。こういうことでは絶対いい方向には向かわないですよ。

 もう一度、愛を込めて書きます。球団が発足して13年くらい。しっかりと他球団に負けない組織作りをしてほしいです。それが真の強豪球団になる1歩だと思っています。そして柿澤には今一度、ひと言。「強い気持ち」を持たないと更生はできないぞ、と言わせてもらいます。

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