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秋季キャンプはパワハラでいこう!【川口和久のスクリューボール】

 

若いときの俺。なんだか分からんままにしごかれたけど、確実に成長はできたと思うよ


がっちりした城


 日本シリーズが終わった。

 広島は1勝しかできなかったけど、決して弱かったわけじゃない。1戦目はリリーフ投手が踏ん張っての引き分け、2戦目は広島のジョンソンが好投し、四番・鈴木誠也ソフトバンクバンデンハークを打ち崩しての勝利。ヤフオクに行ってからは4連敗となったけど、内容は悪くなかった。第5戦がその象徴じゃないかな。最後は柳田悠岐のサヨナラ本塁打で敗れたが、緊迫した、いい試合だった。

 これだけの勝負ができたのは、互いに攻守走の完成度が高かったからだと思う。広島は先発陣と選手層においては、ソフトバンクに差をつけられていたけど、それは仕方ない。年俸はソフトバンクが倍以上だからね。チーム作りは城みたいなもんだけど、2つとも土台も天守閣もしっかりした強いチームだった。

 ただ、じゃあ、なぜ広島が1勝しかできなかったのか、となる。痛かったのは、自分たちのストロングポイントを封じられたことだね。シーズン中も確かにホームランは多かったけど、盗塁・走塁で相手をかく乱し、四球も選びながら走者をためて畳み掛ける攻撃が持ち味だった。

 それを消したのが、ソフトバンク投手陣の制球力の高さと捕手・甲斐拓也の肩さ。特にMVPにもなった甲斐はすごかったね。6連続盗塁刺か。最後はカープも意地になって走っているようにも見えた。自分たちのスタイルにこだわり過ぎたかな。結果的には、ホームランでしか点が取れなくなっていた。

 ホームラン依存に関してはソフトバンクも同じだけど、いいところで出た。打率はソフトバンクより3分も高いのにね(広島.245、ソフトバンク.215)。ホームランテラスができた後、抽象的な言い方になるけど、本塁打による勝ち方がうまくなった気もするね。

 それはさておき、要はセのほかの5球団が、いかに広島に楽に勝たせてきたかを証明するシリーズにもなった。甲斐の肩は真似できないにしても、同じプロなんだからね。

首脳陣は鬼になれ!


 正直、今回の日本シリーズを見ていて、ほかの10球団とソフトバンク、広島との差が開いた印象がある。パの覇者西武もそうだよ。CSは明らかに投手力の差が出ての敗退だったし、ソフトバンクにはまったく勝てなかったにせよ、菊池雄星がポスティングで抜けるのは痛い。来季の戦力差は、かなり開いたと言っていいだろうね。

 これをおカネの差と言ったら、そこで終わり。広島だって巨人をはじめ、他チームとの資金力の差を埋めての3連覇でしょ。いまのうちにやるべきことをしないと、始まる前に2019年が決まってしまうよ。チームの補強もそうだし、秋季キャンプでは若手、中堅を徹底して鍛え直さないと。今回の日本シリーズの映像を見せ、「この2チームにお前たちはどうやって勝つんだ!」と考えさせながらね。

 いまのご時世に逆行するけど、秋季キャンプはパワハラまみれでいいと思う。暴力はいけないけど、「一軍で生き残りたいなら、お前は、ここまでレベルを上げろ。ダメならとっとと帰れ」くらいセーフでしょう。だって、実際、できないならいずれ戦力外にするしかないわけだしね。これはイジメじゃなく、愛のムチさ。俺も巨人のコーチ1年目の秋季キャンプでは、「痛い、かゆいと言ってるヤツはいらねえよ」と言ったことがある。特に巨人というチームは優勝しなきゃいけない球団だったしね。

 春は故障したらシーズンに間に合わないけど、秋はまだ時間がある。自分自身の限界って、自主性に任すだけだと、なかなかリミッターが外れない。この秋は、首脳陣に鬼になってほしいな。いまは恨まれても、いつか感謝されるはずだよ(と思う)。

 最後、いつものように巨人ネタになるが、フロントもファンも、もしかしたら原辰徳さんが戻ったから優勝できると思っているかもしれないけど、そんな簡単じゃないよ。今年の戦いを見ても広島との差はどんどん開いている。前回と違うことを言うけど、あとは「ハラ任せ」で大丈夫じゃなく、フロントも選手も原監督から言われたこと以上をやらないと、この2チームに大きな差をつけられちゃうよ!

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