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総合力ではやっぱり阪神はいいよ。首脳陣は外国人をじっと見てほしい【岡田彰布のそらそうよ】

 

四番候補のボーア[左]とサンズ[右]。2人がしっかりと働けば優勝は見える。だがスランプになったとき……首脳陣は手を入れ過ぎないことやな/写真=石井愛子


キャンプで大事なことは選手たちを見る「目」よ


 キャンプがスタートした。いよいよ野球シーズン到来やね。ここから先、10、11月までの長い戦いが待っている。それを乗り切るための下地を作る。それがキャンプの持つ意味である。心技体……、体を作り、技術を得て、心を鍛える。重要な1カ月となる。

「監督として、キャンプの目的は?」と何度も聞かれた。目的は個々によって異なる。しかし、監督として求めるのは常に「故障なく、順調な1カ月を」。やっぱり最も怖いのはケガ、故障、アクシデントやね。チームの根幹にかかわることもある。チーム構想を根底から壊す危険がはらんでいるからな。でも、それを恐れていては前に進まない。決して“無理”はよくない。でも、“無理”をさせるときがある。それを見極めること。それで大事なのがコーチ、トレーナーの“目”となるんよ。

 例えば日々の練習に入る前のアップの段階も、ランニングする姿を、ボーッと見ているのではない。常に異変はないか、目をこらす。選手は少々のことでは自己申告してこない。だが体は正直だ。前日までとの違いが生じるはずや。それを見抜いて、早め、早めに処置していく。コーチやトレーナーは、そのためにプレーヤーの姿を追う。大事になる前に、未然に防ぐ。こういうことがスムーズに行われたら、チームとしての形は保たれるわけよ。

 だから、オレはこの時期、いつも思う。体調管理をしっかりして、故障なく乗り切ってくれ、まずはこれが基本と考える。

 オレの沖縄入りはもうすぐや。今年も阪神のキャンプを中心に沖縄に入ることになっている。星野(星野仙一)さんが監督だった2003年からスタートした宜野座キャンプ。やっぱり温かいところはいいよ。年々、整備されているしね。そこでのキャンプ、今年はルーキーの顔はない。高校生中心のドラフトだったし、予想されたことだ。言いかえれば現有戦力の争いの期間ということだ。オレは今年、阪神優勝を予想している。それだけの戦力があるという判断なのだが、伸び盛りの若手、中堅が思惑どおりに成長することが前提となる。レギュラーのポジションは投手を除き、8つ。監督として、メンバーを固定して戦えるのが理想だし、そういうチームは間違いなく強い。

 しかし、チーム力というのは総合力であり、レギュラーを脅かす選手が多くいるチームこそが、頂点を目指せる。タイガースはいよいよ、そういうときを迎えようとしているんや。高いレベルでのチーム内の競争。これをキャンプのときから見せてくれれば、阪神優勝の確率はより高まることになるよ。

2年前のロサリオの二の舞いだけは避けたいな


 そして、ここからが阪神キャンプのポイントとなる外国人問題となる。理想としては、外国人選手に依存するのは決していい形ではないけれど、阪神の場合、そんなことは言ってられない。外国人選手次第……という不安定要素を持つのが阪神。そうも言えるのだ。

 ジョンソン、ドリスが抜けた投手陣だが、オレは深刻にとらえていない。もともと質、量とも豊富な陣容だし、十分に戦っていけるとの評価よ。問題は攻撃陣やね。こればかりは本当は見てみないと分からない。いくらメジャーの実績があっても、うのみにすることはできない。

 いい例がある。2年前、鳴り物入りで入団してきたロサリオだ。オレはキャンプで彼のフリー打撃を生で見て、これは本物と確信した。ほかのほとんどの評論家も同様で、絶賛した。ところが、どうよ。シーズンに入ると、まったく結果が出なくなった。キャンプ終盤からオープン戦にかけて、その兆候はあったのだが、結局、シーズン途中で、その姿は消えた。

 見誤ったのか……。まさかの結果だったが、オレはこんなことを考えていた。例えば打てなくなり、コーチが手を入れ過ぎたのではないか……ってこと。難しい判断であり、コーチとしては一刻も早く修復したいと考える。これは当たり前のことだが、やはり詰め込み過ぎは、逆効果になることがあるんや。その典型がロサリオではなかったか。だから今年、同じことを繰り返さないためにも、あくまでも“見る”ことを重視してほしいと願っている。

 以前にも書いたけど、新外国人を獲得する場合、送られてきたビデオを見てジャッジするわけよ。そのビデオといえば、結果が良い、いわゆる“セールスビデオ”となる。これが根底にあるから、実際にナマで見たとき、欠陥が露呈して、すぐに修正したくなるもの。でも、そこは“見る”ことに徹するべきや、と思うんよね。セールスビデオにあるような、長所をさらに伸ばしていく。そういう考えが、外国人選手には必要ではないかな。

 今年、ボーアとサンズの2人が加入した。実績としても十分。合格点だけに、期待値はどんどん上がっている。しかし阪神というチームの特殊性というか、結果が伴わなければ、マスコミの扱いは大きく変化するけど、これに影響されてはならない。過敏になってはいけない。コーチが手を入れるのを我慢して、思いどおりにやらせればいい。彼らのプライドも考え、適切な方法を考える。ロサリオの二の舞いだけは避ける。そういう事態にならないことを願うが、まさにいい教訓があるわけや。

 話は古くなるけど、あのバースだってキャンプでは目立たなかったわ。あらためて新外国人は分からないもの。果たしてボーアとサンズの力は……タイガースの命運を握る2人の外国人を、ジックリ見極めていくことにしますわ。(デイリースポーツ評論家)

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