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「夏のセンバツ」や代替大会は、高3球児の心の区切りに【大島康徳の負くっか魂!!】

 

センバツに出場するはずだった32校の3年生は、甲子園での試合で心に区切りをつけることができる/写真は昨夏の甲子園での選手権大会


変わった高野連の意識


 春のセンバツに出場するはずだった32チームに、8月に甲子園で、1試合ずつですが試合をしてもらおうというプランが発表されましたね。春には相当悲しい思いをさせてしまったわけですから、何とか実現させてあげてほしいなと思います。32校の選手たちは、甲子園で試合をする権利があるわけですから。

 また、都道府県ごとの、夏の大会に代わる代替大会も、ほとんどの地域で行われる方向になってきました。まあ、当初の「甲子園を目指して」というところとは、目標が少し変わってしまいますけれども、3年生にとっては、一つの区切りにできるかもしれないですね。

 3年生にとっては、こういう状況の年に当たってしまった、ということが、こればっかりはどうしようもない不運だったわけで、それを「割り切れ」というのはなかなか大変なことだと思いますけれども、そんな中でただ解散して引退というのでは、気持ちに区切りがつかないし、次への一歩が踏み出せませんのでね。そういう意味で、この代替大会は球児たちにとってはいい区切りになると思いますし、ぜひ、そこで心の問題なども整理していってほしいと思います。

 阪神が、甲子園の土の入ったキーホルダーを、3年生の野球部員皆にプレゼントするという話もあります。個人的には、甲子園に出場した選手が持って帰ってきてこそ「甲子園の土」じゃないの? という感じもありますが(笑)。アイデアとしては、非常にいいアイデアを出してあげたな、という感じはします。

 最初の「夏のセンバツ」のこともそうですけど、「何かできることをしてあげよう」という方向に、高野連の方の意識が向いているところがいいですよね。昔は、高野連と言えば、もう部を辞めている人が起こした不祥事で野球部が大会出場辞退に追い込まれたり、何か、「あれも駄目、これも駄目」と取り締まっている組織、というイメージが、私なんかにはあったのですが、今回は、「何かできるんじゃないか」「何かしてあげよう」という方向性の意識になっている。これはいいことだと思います。今回のことが、意識の方向性が変わる、一つのきっかけになってくれればいいと思いますね。

投手のいいチームが浮上?


 さて、プロ野球のほうでは、先週のこのコーナーで言っていたとおり、開幕に向けて全選手がPCR検査を受ける、という方向になりそうです。これはいいことですよね。絶対やるべきです。そして定期的に続けていけば、戦う選手にとっても、見ている私たちにとっても、安心感が違いますからね。

 それにしても、練習試合を見ていると、やっぱり3月に見ていたときとは、各チーム、見え方が変わってきていますね。セ・リーグは、3月は「広島巨人がリードし、DeNAが続いて、あとはダンゴ」という印象でしたが、阪神とDeNAはそのときより私の中で上がってきています。阪神はボーアが打ち出して、「ひょっとしてこのムードを開幕に持ち込めれば開幕ダッシュもある?」と思わせますし、DeNAも筒香(筒香嘉智、現レイズ)の抜けた穴が意外と感じられないんですよね。逆に広島は3月は強そうに見えたけど、今はちょっと元気がないように見えますし……。

 パ・リーグは、ソフトバンク西武の2強が抜けている、という図式は変わらないと思います。ただ、残りの4チームから抜け出す可能性があるのは、3月にはロッテかなと見ていたんですが、今はオリックスのほうにその可能性を感じるようになってきました。まあ、ロッテもホントに佐々木朗希あたりが出てくれば、またムードが上がってくるかもしれませんけれども。

 先週も書きましたが、最近の練習試合を見ていると、予想に反して、バッターが全然、振り負けしていないんですよね。割合、一線級のピッチャーに対しても打てている。そうなると、もともと「投手力はあるけど打てないからな……」と見ていたチームが、「打てる」となった時点で浮上してくるんです。それが阪神だったり、オリックスだと思います。

 3月には、ボーアがこんなに打つようになるなんて思っていませんでしたからね(笑)。オリックスも、まあ外国人選手をどう使うかとか、野手のポジションをどうやりくりするかということはありますけれども、その辺がうまくいって、ある程度得点能力が出てくれば、ピッチャーは山岡(山岡泰輔)、山本(山本由伸)と持っていますから、走り出せる可能性が見えてきます。打線の機能の向上によって、投手力が生かせる形が出来上がりますからね。

 そう考えると、今季は特例で、一軍の登録枠を増やすとか、外国人選手の登録枠を増やすとかいうことが検討されていますけれども、その枠をうまく使えるかどうかも、けっこうペナントレースの行方を左右する気もしますね。ここをうまく使えるチームがあったら、意外な結果が生まれる可能性もあるかもしれない。

 あとは、開幕したら「やっと開幕だ!」というので、選手はすごく張り切ると思うんですよ。たとえ無観客であっても。ただ、いきなり夏に始まるということもあって、その状態は故障が怖いですよね。そこのところをどうやって、うまく一番いい状態に持っていくか。ベンチ入りの人数が増えたら、疲れが見えた選手をスパッと代えていくとか、そういう采配もカギを握ってくるかもしれません。いずれにしても、選手の皆には、張り切ってやってほしいけど、ケガだけはしないようにしてもらいたいと思います。

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