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巨人やロッテは戦略的なチームづくりが好循環を生んでいます【大島康徳の負くっか魂!!】

 

セ・リーグで独走態勢を築きつつある巨人。原監督の勝負勘のよさや、トレードを含めたチームづくりのうまさが光ります


「G包囲網」もなかなか……


 両リーグのペナントレースも折り返し地点を過ぎましたので、今週は現時点の展開を見て思うところを書いていきたいと思います。

 セ・リーグは、まだ何があるか分からないとは言いながら、巨人がちょっと独走に近い状態になってきました。先日、原辰徳監督が球団歴代最多の勝利数となりましたが、やっぱりゲームを展開するのがうまいですよね。勝負どころで1イニングに3人の投手を投入したり。「ここを抑えれば勝てる」というところをつかんで、そういう発想ができるというのは、やっぱり戦い方がうまい。

 阪神とかDeNAが直接対決で勝ち越せないですもんね。阪神でも、肝心なところでミスが出ています。追いついていかなければいけない試合で、ミスをして勝利を逃してしまうというところを修正しないと、一年間戦ったとき、トータルではやっぱりミスの少ないほうが上に来ますからね。

 DeNAも、直接対決でブルペンデーをやって失敗しました。奇策は分からんでもないけど、打った手がボロボロになったときには勢いが死んでしまいます。ファンから見たら「何やってんだよ」という感じになってしまいますしね。

 巨人は、ペナントレースでそれだけリードを奪っていながら、なおトレードを積極的にしています。勝利に対して貪欲ですし、それによって選手も危機感を持ちますよね。

 巨人のトレードと言えば、昔はONの後を打つ五番打者がいないと言っては補強をしていた、という印象があるんですが、最近の巨人はトレード補強の仕方がそのころとは変わってきています。自チームでは使う場所がなくなった選手を、そのまま置いておくぐらいだったら他球団に出してあげて、その代わり、若い有望選手を獲得する感じになっています。それによって新陳代謝もできていく。そういうことを、ある程度戦略的にやっていますね。これは、下位にいる他球団が同じようにできるかと言ったら、なかなか踏み切れないことです。

 それによって、巨人は選手層も厚くなり、故障や不調の選手が出たときも、それをカバーする選手が出てきてくれる。最近、広島が強いときもそういう感じの層の厚みがありましたが、巨人は今、そうなりつつある感じがします。

 この先も、先発ピッチャーに故障者が出ない限り、巨人の優位は動かないでしょうね。今年のセ・リーグはクライマックスシリーズ(以下CS)がなく、優勝しかないんですけど、では下位のチームがそこに向かっていくかと言ったらなかなかどうでしょうね。

 本当は、先日、中日がエースの大野雄大を菅野(菅野智之)にぶつけたみたいに、下位のチームからしたら、「3連敗の危険があっても3連勝を目指す」という戦略を取っていかなくてはいけないゲーム差になっていると思います。でも、「順位を一つでも上へ」という欲もなかなか捨てられないものですから、「強い巨人とケンカするより、ほかのカードで勝とう」というチームもやっぱり出てくるものなんですよ。5球団がローテーションを変えて、皆で「巨人包囲網」を敷くかと言ったら、なかなかそうもいかないと思いますよ。

パは最後まで楽しめる!?


 パ・リーグのほうは、序盤は楽天の頑張りがあって面白いペナントレースになり、ここにきて、一時、失速するかなという感じだったロッテが、トレードの効果なんかもあって、うまく戦っていますよね。

 ロッテは故障者のカバーがうまくいっていますよね。レアードが故障しても安田(安田尚憲)が入り、福田秀平がいなくても、和田康士朗あたりがうまく働いています。

 僕もそういう考え方はいいと思うんですけど、最近は四番が抜けたら抜けたで、あえて下位打線から持ってきたりせずに、次の世代で用意していた安田をポンとハメていくようになっています。そうすることによって、打順によって選手の意識が変わってうまく働かない、ということも防げます。そういうやり方には、やっぱり選手としても感じるものはあるし、抜けたところをカバーして、いい戦いができる。それで勝てれば勢いを保っていけるし、たとえ負けたとしても手ごたえのある戦いができると思います。ロッテは今、そういう感じになっていると思いますね。抜きんでた成績の選手はいませんが、チーム全員で戦うということが、うまくできています。

 パ・リーグは、ソフトバンク、ロッテ、楽天、さらには日本ハムあたりまでが、けっこう終盤までもつれていくチャンスがあると思います。一時期ちょっと走りそうだったソフトバンクを走らせなかったですから。これからは、下位に低迷しているチームとの対戦で星を落とさないように戦っていくことが、上位チームにとってはより大事になってくるのではないでしょうか。パ・リーグは、1位対2位だけとはいえ、CSもありますし、最後まで楽しめるでしょう。

 最後に。いわゆる「田澤ルール」の撤廃が決まりました。これはこれでいいと思います。日本に帰ってきたときにプレーするところがない、といった選手の不利はないようにしてもらいたい。ただ一方で、アメリカとの間の新人選手の獲得に関する取り決めは、何かがないといけないでしょう。最近は海外FAまでの期間もそれほど長くなくなり、選手が「日本である程度やって、メジャーへ」という形が多くなって、大きな問題は起きていませんが、新人の獲得に関しては、日米でちゃんとしたルールを作っておかないと、「紳士協定」だけでフリーにしてしまったら、いずれまた問題が起きかねないな、という気はしますね。

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