週刊ベースボールONLINE

Vへ最後までスキを見せるな!【伊原春樹の「野球の真髄」】

 

スパンジェンバーグに逆転2ランを浴び、ヒザに手をつき、うなだれるハーマン/写真=内田孝治


 ペナントレースは早くも残り40試合近くになってきたが、セ・リーグはマジックも点灯している巨人の優勝で間違いないだろう。一方、パ・リーグはソフトバンクロッテがV争いを行い、少し離れて楽天西武日本ハムがひしめき合っているが、セと違いクライマックスシリーズ(CS)がある。今年は2位までに入らないとCS進出はかなわないが、楽天、西武、日本ハムにも十分チャンスがあるだろう。

 ここから先、1試合、もっと言えば1プレーの重みは増していくのは間違いない。シーズンが終わった後に「あの1打席が……」「あの1球が……」と後悔することがないように、慎重に慎重を重ねたプレーをしていかなければならないのは確かだ。

 まだ最近の試合を見ていても、そのあたりがおろそかになっているのが散見される。例えば9月13日のソフトバンク対西武(PayPayドーム)。0対1と最少失点差で9回裏を迎え、ソフトバンクは西武のクローザー・増田達至から先頭のグラシアルが中前打。続く代打の高谷裕亮が死球で出塁すると甲斐拓也は犠打を決めて一死二、三塁と逆転サヨナラ勝ちのチャンスを作る。ここでソフトバンクベンチは川瀬晃に代えて川島慶三を打席に送った。

 今年10月で37歳を迎える経験豊富なベテラン。普段はバットを長く持ち、足を大きく上げて打つスタイルだ。この場面ではどのように対応するか注視していたが、その打撃を変えることはなかった。結局、川島は三振。増田は150キロ超の強いストレートが武器だ。川島相手にも初球に151キロ、2球目に149キロを投げ込み、いずれもファウルであっという間に追い込んだ。1ボール2ストライクとなり、最後も真ん中近辺だったが152キロの直球に川島のバットは空を切った。

 140キロ台の直球ならまだしも、150キロを超えると長くバットを持っていると対応は難しい。少しでもいいからバットを短く持てば操作性は上がり、150キロでもとらえる可能性は高まるだろう。やれることをやり尽くしたか、疑問の残る打席だった。

 9月15日の西武戦(メットライフ)ではロッテバッテリーに詰めの甘さが出た。3対1で迎えた8回裏、ロッテ先発の石川歩金子侑司に中前適時打を浴び、1点差に迫られる。さらに一死二塁となったところでハーマンにスイッチ。ハーマンは源田壮亮を二ゴロに仕留め二死三塁となって打席にはスパンジェンバーグを迎えた。

 この場面で気を付けなければいけないのは本塁打。ヒットなら同点で済むが、一発を打たれれば逆転されてしまうから、是が非でもそれは避けなければいけない。しかも、スパンジェンバーグは最初から振り回してくるから初球は注意だ。果たして、ロッテバッテリーが選択したのはストレート。捕手の江村直也はミットを低く構えたが、意に反してハーマンが投じた1球は真ん中高めへ。スパンジェンバーグが一閃したバットから放たれた打球は右翼席へ飛び込んだ。

 ロッテベンチが「初球の入り方に気をつけろ」と注意を促していれば、どうだったか。とにかく、ペナントも終盤を迎えれば迎えるほど、1プレーの重要度は増してくる。栄冠をつかむのは少しでもスキを見せないチームになるはずだ。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング