高卒1年目ながら堂々とした投球を見せている。ファームで13試合に登板して防御率は2.72。最速は153キロまでアップ、フォークも習得した。成長を続ける”エース左腕”候補は、一軍でプロ初先発も経験。そこで得た課題とは──。心は静かに燃えていた。 取材・構成=鶴田成秀 写真=佐藤真一 投手/1年目/19歳
高卒新人とは思えぬ落ち着きぶりだ。飄々(ひょうひょう)とテンポよく投じる姿は19歳とは思えない。言葉の端々からも“大人な考え”が伝わり、成長を期していることが感じ取れる ◎
投球板を踏み変えて
──1年目の今季は「とにかく結果を残したい」と言っていましたね。
宮城 はい。勝ち星や防御率など『この成績』というのは特別なくて。全体的に見て、周りからも『いい成績』と思われる数字を残したいと思っていました。
──それはファームの成績?
宮城 ファームで良い成績を残せば、一軍に上がることができる。どちらというより、自分が出た試合でということ。ただ、ファームのことしか頭になかったのが正直なところでもあります。
──成績を残すために、必要だと思うことは何でしょうか。
宮城 すごい打者が多い中で『どうやってカウントを有利にするか』です。真っすぐでファウルを取る、変化球でファウルや空振りを取るなど、方法はいろいろありますけど。
──投球テンポの良さも特徴です。これも有利なカウントに運ぶため?
宮城 はい。相手に的を絞らせないように。ただ、テンポを意識し過ぎてもダメだなと思っています。ランナーを出すまでは良いんですけど、ランナーがいるときは特に。投げ急いでしまうとワンテンポになって単調になることもあるので。でも『守備は短く、攻撃を長く』がチームにとっていい形なので、理想に近づけるため、テンポを意識し過ぎない程度に心掛けています。
──投球プレートも打者に応じて一、三塁側を踏み変えていますよね。
宮城 もともと一塁側だったんですが、左打者の内角が投げにくくて。投げるときにインステップしてしまうので、左(打者)の内角が小さく感じて外(角)にしか投げられなかった。そこで、
アルバースの投球を参考にしたんです。右打者ならクロスファイアでインコースを突けるように一塁側を踏んで、左打者にもインコースを投げやすくするために三塁側を踏もう、と。そうすれば、どちらでも投げられるので。
──それは、いつごろからですか。
宮城 8、9月くらいからです。左のイン(コース)に悩んでいた時期で、どうしても外(角)だけになると、真っすぐもスライダーもカットされて、フォアボールを出してしまうこともあって。内に投げられるようになったので、投球の幅も広がりました。
強くなった思い
──一軍でも初先発を果たしましたが、新たに感じたこともあったのでは。
宮城 どんなボールに対しても、迷いなく振ってくることを感じました。そこが一軍と二軍の差なのかな、と。どのボールに対しても強いスイングをしてきて、(打者が)泳ぐことがなくスイングが強いので、詰まってもポテン(ヒット)になることも。スイングの違いを感じました。
──となると、制球力がより大事になる。
宮城 はい。ただ、コースを狙い過ぎるよりも、早いカウントでアウトを取るのが良いのかな、と。三振ばかりを狙うのではなくて。
──プロ入り後にフォークも覚えましたが、三振を奪うためではない?
宮城 真っすぐ、カーブ、チェンジアップなどでストライクが取れて、ワンボールツーストライクから、フォークを1球見せるだけでも、投球の幅が広がるかな、と。フォークを投げることで、ほかの球種で打ち損じることもあるだろうなと思い、覚えたんです。
──フォークは一軍初登板の
楽天戦で投げず、
西武戦では2球投げています。
宮城 まだ、いいときと、悪いときの差が大きいんです。楽天戦のときはチェンジアップが良かったので、(捕手で)受けていただいた伏見(寅威)さんから「今日はフォークはなしで、チェンジアップで行こう」と言っていただいて。西武戦は「使えるときに、使っていこう」となったんです。でも、投げた2球とも良いフォークとは言えなくて。1球はベースの手前でワンバウンドして。もう少し、奥(捕手方向)でワンバウンドさせたかった。もう1球は落ちなくて。それが逆に良くて見逃し三振だったんですが……。
──精度を上げている最中なのですね。
宮城 フォークだけじゃなく、全体的に自分はまだまだなので。それに、個人だけでなく、チームとして勝ちたいという思いが強くなっているんです。
──それは、一軍を経験してのこと。
宮城 はい。個人じゃない、チームだって。ベンチの雰囲気を感じて、そう思いました。みんなで勝って喜びたい。
──一軍初勝利だけでなく、1つでも多くの白星を挙げることは、ファンも期待していることです。
宮城 とにかくチームで勝ちたいので、その力になれるように、頑張ります。(その後、11月6日の
日本ハム戦で一軍初勝利)
落ち着いたマウンドさばきと表情は高卒とは思えぬもの。だが、一軍を経験して「勝ちたい」思いが倍増と、心は熱い[写真=桜井ひとし]
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