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チームの“柱”は好成績を継続してこそ。セ・リーグ各球団の柱と来季展望【大島康徳の負くっか魂!!】

 

11月10日、巨人戦[甲子園]後の引退セレモニーであいさつする藤川[阪神]。「昭和の男」を思わせる気骨に共感しました


「昭和の男」の気骨


 先日、阪神の藤川球児の引退セレモニーがありました。僕もテレビで見ましたが、あいさつの言葉を聞いて、なんか「昭和の男」のにおいを感じましたね。

 僕も「昭和の男」ですけど、最近はこういう周囲への感謝を述べる場で、自分の家族に対する感謝が前面に出過ぎているような気がするんですよ。それは個人的にすればいいことであってね。

 球児(藤川)の場合はそこもよくわきまえていて、野球ファンや、自分をここまで導いてくれた野球界の人たちに対する感謝のほうを前面に出していた。「あの若さでも、さすがは球児だな」と好感が持てました。「いごっそう」と言われる高知の育ちもあるんでしょうが、この気骨を、後輩の選手も受け継いでくれないかなと思いましたね。

 阪神は、球児が引退し、福留(福留孝介)、能見(能見篤史)がチームを離れるようです。新旧交代のときに差し掛かってきたのかなと思いますけれども、今度は藤川球児にはなれないまでも、それに代わるような、柱になる選手が出てこないといけないですよね。そういうハートを持った選手が何人か出てきてくれないと、常に優勝を争うようなチームにはなれないと思います。

 今季、ブレークした大山(大山悠輔)も候補だと思いますが、今年ぐらいの成績を、1年だけではなく、継続していかないといけない。そうなって初めて、チームの後輩が「大山さんの背中を見てついていこう」というふうになる。そういう存在が何人か出てきて初めて、阪神というチームが一つ上に登れる、と思うんです。

 今週は、「チームの柱」に注目して、セ・リーグの2位以下のチームの今季を振り返り、来季の展望をしていきましょう。

Dは高卒の成長を待てるか


 中日は、大野雄大が柱になりました。10勝したら10敗するピッチャーかと思っていましたが、2ケタ勝って、貯金も多く(5個)稼ぎました。これでこそ柱の成績です。力の抜き方、脱力を覚えたような感じがしますね。前は150キロを超えるようなストレートをがむしゃらに投げている感じでしたけど、今は147、148キロぐらいでも、150キロと同じような感覚をバッターに与えている。その違いだけだと思うんですよ。その分、球持ちがよくなり、リリースポイントも安定してきました。

 ただ、彼も大山と同様、これを続けていって初めて、吉見(吉見一起)が引退した後の、本当の柱になっていけると思いますけどね。

 中日は今季、8年ぶりのAクラスになりましたけれども、これもつなげていかなければいけない。常に上位に行くためには、根尾(根尾昂)、石川昂弥、来年入るであろう高橋宏斗といった高卒のスターたちが育ってこなければいけませんが、まだ少し時間が掛かるでしょう。でもその成長を待つ間に、またBクラスに戻ったのでは今年の大野雄大の一本立ちが生きてきませんのでね。

 今、左打者でチームの脇を固める存在は、大島(大島洋平)、京田(京田陽太)といますが、ビシエドが頑張ってやっている部分を、本当は日本人選手でやっていかなくてはいけない。そういう意味でも石川昂弥の成長が望まれますが、育ってくるまでを、左打者ではありますが高橋周平なりが主軸になって頑張っていけるか。いずれにしても、投手に大野雄大という柱ができたことを、一つのきっかけとしなければいけないでしょう。

DBとCも柱はある


 DeNAは、監督が代わることになりました。監督が代われば野球も変わってくるでしょうけれども、ただ、このチームは戦力は持っているんですよね。打線には、佐野(佐野恵太)という柱ができましたから、彼が今年ぐらいの活躍をすれば、あとは枝葉を広げればいいだけです。外国人選手も残るでしょうし。投手も、戻ってくれば今永(今永昇太)が柱になれる。チームの戦力自体はあると思うので、優勝を争えないはずがない。あとは新監督がどうプランを立てるか、そしてシナリオどおり動かしていけるかでしょう。まあ、ルーキー監督にそれをどこまで望めるか、というところはありますけれども。

 広島は、3連覇のあと、そんなに戦力が下り坂になっている感じはないんですが、ちょっと野球が変わったのかなという感じがしますね。広島が強いときは、ち密な野球の中に、長打がプラスされていた。それが今年は、エラーやフォアボールが多くて、そこから破たんを招いています。そこを修正しないと、何年か前の強い広島には戻れないんじゃないかと思いますね。ただこのチームは、打者では鈴木誠也がいて、守備では菊池涼介がいて、柱はいますからね。ピッチャーは大瀬良(大瀬良大地)がどう復活するかというところはありますが、3連覇の良さを知っている選手がいるうちに立て直したいですね。

 ヤクルトは、野手もピッチャーも、年齢層を考えるとやっぱりちょっとコマ不足なのかなと思いますね。村上(村上宗隆)はいい四番に育ってきましたけれども、一人ではどうしようもない。ホントにチームを変えたかったら、大きな補強をしないといけない局面でしょう。それが難しくて自前の選手を育てていこうというのであれば、ちょっと時間が掛かると思います。山田哲人にFAせずに残ってもらって、村上と山田哲の2人を柱に、バックアップする選手を育てていくしかないでしょう。

 シーズン中のトレードが成功した巨人を何が何でも見習え、というわけではないですけれども、チームのどの部分を自前で育てて、どの部分を補強によって強くしていくか。巨人以外の5球団はしっかり考え、策を打っていかないといけないような気がします。

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