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熾烈なセ・リーグ優勝争いの行方【立浪和義の超野球論】

 

23日の試合でヤクルト先発の石川がまさかの1回途中降板


相当なプレッシャー


 前週まで、ヤクルトで間違いないと思われたセ・リーグの優勝争いですが、ここに来てヤクルトの負けが込み、まったく分からなくなってきました。

 原稿の締め切りは10月23日なのですが、ヤクルトは巨人戦(東京ドーム)で1対11と大敗。ベテランの石川雅規選手が先発しながら、プロ最短の1回途中KO。後続も振るわず、投手陣が11四死球を出す信じられない戦いとなってしまいました。調子よく打ちまくっていた打線も湿ったままでした。ただ、まだ戦いが終わったわけではなく、ヤクルト有利は変わりません。引きずることなく、悪いところがすべて出たと開き直れるかどうかでしょうね。

 対して阪神は、広島相手に引き分け(マツダ広島)。0対1から何とか引き分けに持ち込んだ展開でしたが、スタメンから大山悠輔選手が外れ、近本光司選手も欠いていることもあり、打線は決してよくありません。

 どちらのチームを見ていても感じたことですが、長いシーズンの終盤でもあり、蓄積した疲労があり、かつ優勝が近付き、相当なプレッシャーの中でやっているのだと思います。

 ただ、こういった雰囲気は1試合でがらりと変わります。特にヤクルトは若いチームですから24日の試合に打ち勝ったりすれば、そのまま一気に走って発売日までに優勝している可能性も十分にあると思います。

 ヤクルトに大勝した巨人は亀井善行選手の引退試合ということで、いい意味で切り替え、最近の悪い雰囲気から抜け出せたように思います。特に丸佳浩選手の2本塁打は素晴らしかったですね。今年はずいぶん苦しんできましたが、この試合に関しては、しっかりボールを呼び込む間ができ、体が開かずにスイングできていました。いいときの丸選手に戻ったようにも思います。

 巨人はクライマックスシリーズ進出も決めました。CSまで少し間が空きますし、しっかり調整してきたらヤクルト、阪神にとって大きな脅威になるでしょう。

見応えある戦いを


 優勝目前で足踏みしてしまっているヤクルトですが、前年の最下位チームであり、私も含め、解説者の多くはBクラスの順位予想でした。しかも今季も出だしは3連敗スタート。厳しい戦いになるなと思っていたら、いつの間にか首位ですから、野球は分からないなとあらためて思います。

 大きな要因はやはり先発投手です。特に9勝を挙げている奥川恭伸選手と、勝ち星は3勝ですが、高橋奎二選手の若手2人の存在は大きいと思います。2人は終盤戦に来ても強い球を投げていますし、ポストシーズンも楽しみです。あとはリリーフ陣ですね。セットアッパーの清水昇選手ら頭数がそろい、最後、マクガフ選手でひっくり返されることもありましたが、勝ちゲームを勝ちゲームのまま終わらせる試合が増えたのは彼らの貢献だと思います。

 あとは、もともと強力だった打線です。今年は塩見泰隆選手が一番に定着しました。長打力もありますし、巨人時代の長野久義選手(現広島)がよかったときのように、相手の出ばなをくじき、味方を乗せていく一発もありました。ほか村上宗隆選手、青木宣親選手、オスナ選手、サンタナ選手と強打者がそろい、中村悠平選手もいろいろな打順に入ってつないでいます。相手バッテリーからすれば手を抜くことができず、それが終盤の加点にもつながっています。

 この本が出ているころに決着がついているのかどうか微妙になってきましたが、2チームには最後までファンを喜ばせる戦いを見せてもらえたらと思います。

PROFILE
立浪和義/たつなみ・かずよし●1969年8月19日生まれ。大阪府出身。PL学園高からドラフト1位で88年中日入団。1年目からショートのレギュラーをつかみ新人王、ゴールデン・グラブに。その後、95年から97年とセカンド、03年にはサードでゴールデン・グラブに輝き、96年にセカンド、04年にサードでベストナインを手にしている。09年限りで引退。通算2586試合2480安打、135盗塁、打率.285。487二塁打は日本球界最多記録でもある。

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