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球団史上初の開幕投手に新外国人を送り込んだ巨人 ビーディの逆襲なくして低迷打破はない!【堀内恒夫の悪太郎の遺言状】

 

今季の巨人の先発陣を見渡せばビーディ[写真]とグリフィンの活躍なくして浮上はない


先制点を与えないグリフィンと先制点を許すビーディの明暗


「イチ押ししたい希望の星!」などと言うよりも、俺は「こいつらに頑張ってもらわなければ困る」という切実な願いを込めて、巨人のカギを握る男たちに注目してみたいと思う。

 今季から新外国人として加入した長身左腕のフォスター・グリフィンと、右腕のタイラー・ビーディ。この2人はもう「カギを握る」などという生易しいレベルの言葉ではなく、「活躍してもらわなければチームに明日はない」というくらいに救世主としての期待が高まっていた。

 ところが、巨人史上初の新外国人開幕投手を務めたビーディは、日本の野球に順応できず、4月30日に東京ドームで行われた広島戦で、4回途中まで8安打5失点と打ち込まれて大炎上した。今季5度目の先発で、ここまで勝ち星なし。この試合が終わった時点で24回2/3を投げて被安打34、防御率5.47と実力が発揮できずに、二軍降格が決まった。

 まったく首脳陣にとっては最も大きな誤算だったと思うよ。だからこそ、ビーディには欠点を修正して、一軍へ帰ってきてもらいたいね。

 一方のグリフィンはビーディよりもボールのキレがあって球持ちも良い。腕が遅れて出てくるから、バッターにとっては打ち難いタイプのピッチャーなんだ。しかも、2月の宮崎キャンプからブルペンで走者がいることを想定しながら、クイックの練習も取り入れていた。順応性もあるし、一目見たときから即座に俺は「こいつは使えるぞ!」と思ったものだよ。

 一方、ビーディは右腕が体から離れて出てくる。その理由は踏み出した左膝が開いてしまうからだよ。左膝が割れてしまうから右腕が遠回りする。だから、体が開いて打者にボールが見やすくなってしまう。でも、左膝が割れないときには良いボールが来る。膝が開き気味だと、どうしてもボールがシュート回転してしまうからね。

 その欠点が武器に変わることもある。シュート回転したボールが右バッターのインコースへ決まれば抑えることができるが、その反対にアウトコースへ入れば、痛打されてしまう。巨人の守護神・大勢のように右バッターのインコースには食い込んでいくシュート、アウトコースには意識してシュートしない真っすぐを投げられるようになれば、もっとボールにも威力が出てくるはず。そうすれば、しっかり抑えることができると思うんだけどね。

 そのためには左膝の開きを修正するしかないだろう。どうして、その欠点を投手コーチが直そうとしないのか。なぜ、手をこまねいて見ているのか。俺には理解し難いね。

 もし、もっと早い時点で修正を試みていたら、また違った結果が出ていたはずだ。ビーディは走者が出たときに思うようにクイックで投げられないから、走られっぱなしになってしまう。メジャーと日本のキャッチャーを比べたら、肩の強さが違うから、良いピッチングをできるわけがない。

 それにしても、今季の巨人は新外国人をいとも簡単に開幕1、2戦の先発ピッチャーとして使った。しかも、2人ともアメリカでは主にリリーフとして使われてきたピッチャーだからね。本当に思い切ったことをやったものだと思うよ。

 それでもグリフィンは5月4日時点で3勝(1敗)を挙げて、順調なスタートを切った。一方のビーディは先発したどの試合も、いつも相手から先に点を取られてしまう。これが一番悪いところだ。いまの巨人は打線が弱いからドカーンと先に点を取られたら、追いかけたくても追いつくことができないじゃないか。こんなことを繰り返していたら勝てるわけがないよ。

若手投手たちの力を引き出せない最大の理由は大城のリードにある


 それでも開幕からBクラスに低迷する今季の巨人は、グリフィンに勝ち星を積み上げてもらうことと、ビーディの復活に期待することしかできないんだからさ。

 二軍に降格したビーディだって、本来は自滅するタイプのピッチャーではない。ストライクが取れるコントロールもある。だから、ちゃんとした方向性を示して、ヒントを与えながら修正してやれば、もっとボールにもすご味が出てくると思うんだけどね。

 一方のグリフィンには今季2ケタ勝利が期待できるはずだ。ビーディも、欠点を直すことさえできれば復活して、2ケタ近く勝てる可能性がある。それだけに巨人の投手コーチには一、二軍問わずにできるだけ早く「ビーディ改造計画」に着手してもらいたい。

 欠点が改善されたあとに残される課題は「投げる体力とスタミナ」だよ。アメリカでは主にリリーフ役を務めていたビーディは、近年は長いイニングを投げた経験が少ない。だから、このあたりも修正していってもらいたいね。

 先に点を与えてしまうビーディはグリフィンとは真逆だ。グリフィンが勝ち星を挙げることができる理由は、先に点を与えないから。そこに2ケタ勝利を可能にするカギが隠されている。

 若いピッチャーである今季2年目の赤星優志や3年目の山崎伊織にしても、「昨年と同じように勝ち星を積み重ねることができるか」と問われれば、俺は「プロ野球はそんなに甘くない。なめるなよ」と言いたくなるね。彼らはそれぞれ5勝5敗の成績を残した昨季と同じように事が運ぶと勘違いしているのではないかな。相手チームも研究してくることは必至だ。

 2月のキャンプ時からブルペンで投げても1日わずか50球程度。投げたくなくなったら「もうやめた!」では実質2年目のジンクスを打破して成長できるわけがないよ。

 俺は彼らに「お前らはまだベテランじゃない。だからもっと走り込むなり投げ込むなりの練習をしろ!」と言いたい。特に赤星は真っすぐ、スライダー、シュートにも見るべきものがある。残された課題はピッチングの組み立てだけだからね。

 ほかのピッチャーにも、同じような課題があることは言うまでもない。その不足したダメな部分を正捕手の大城卓三がカバーし切れていない。それが今季の巨人がドン底へ落ち込んだ最大の理由だよ。

 話が少し横道にそれたから軌道修正したい。今季の巨人は新外国人のグリフィンとビーディに期待するしかない。ビーディの復活と逆襲を待つとともに若手ピッチャーの成長を促しながら、上昇気運をつかまえていくしかないだろうね。

「世界のホンダ」を築き上げた本田宗一郎さんの言葉を聞くたびに勇気づけられる。

「私の最大の栄光は、一度も失敗しないことではなく、倒れるごとに起き上がるところにある」

 まさにその一言に尽きるだろう。まだ諦めるわけにはいかない。

「巨投」一丸となっての逆襲劇に、俺は期待したいね。

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