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裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第44回 ある取材拒否の話

 

突如出た木田の移籍話で事件が勃発する


 今回は広報時代の「取材拒否、出入り禁止」にまつわる話だ。

 読者の方々は盛んな報道環境に取り巻かれている巨人軍の裏側で、球団とメディアが対峙(たいじ)していることがあるというのをあまりよくご存じないのでないだろうか。報道された内容に問題があれば、「事実に基づいた正しい報道」がされていないことについて巨人軍広報部は抗議する。報道された内容が明らかに事実と異なっていたり、表現に行き過ぎる部分があったり、明らかに悪意に満ちていて、球団や選手個人の名誉を著しく傷つけるといったケースが生じるときがあるからだ。

 この多くは、夕刊紙や週刊誌を中心とした雑誌という括りになるものが多かったが、時には公共の電波であるテレビやラジオでさえ、われわれ側としては問題視される内容の物もあった。抗議は広報部長が口頭もしくは文書で行うが、報道した側が抗議内容を認めた場合などは謝罪と同時に、紙面であれば謝罪文や訂正文の掲載を求める。一方、取材に基づき、報道内容が正しかったということになればこちらからの抗議も叶わぬものになるケースだってある(ほとんどなかったが)。

 僕の記憶では、僕が仕えた多くの広報部長の方々はいつも腹を立てていて、いつもその作業の中で不健康な仕事のストレスを抱えていたのを覚えている。本当に気の毒だったと思う。それだけトラブルが起きた案件も多かったということだ。

 僕は抗議の作業に直接かかわることはあまりなかったが、自宅には毎朝スポーツ紙全紙が送られてきて、僕の朝一番の仕事もその全紙すべてに目を通し、記事の内容をあらかじめ把握しておく必要があった。週刊誌、写真週刊誌に関して問題が起きると即座にファクスでその原稿が自宅に送られてきた。「ファクスで送ります」の広報部からの電話がないので呑気に平和だなぁなどと構えていたりすると、いつの間にか多くの週刊誌、写真誌のスキャンダル系の記事が続けて送られていて、部屋のドアを開けた瞬間、電話機から何メートルというファクス用紙が飛び出し、部屋一面が紙でうずまってしまうような光景が、わが家ではそれほど珍しいことではなかった。

仲良し2人が大ゲンカ?


 そんなある日に起こった一例を挙げてみよう。1996年だったと思うが、シーズン中にサンケイスポーツの一面に、「巨人・木田、オリックスにトレード!」とデカデカと記事が載った。投手で、現日本ハムファイターズの木田優夫二軍監督のトレード話だ。

「えっ? 木田がトレード?」

 この移籍のようなデリケートな話には驚いた。本当なのか? 本当ならばどこから漏れた話だ? などと考えていると・・・

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ジャイアンツ一筋41年。元巨人軍広報による回想録!

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