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裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第76回 プロスカウトという仕事【6】

 

清武代表に筆者は木佐貫[写真]と中継ぎ左腕の交換トレードを成立させることを命じられた


 これまでプロスカウトとして僕の悶々(もんもん)とした話を書いてきたが、それよりも今回からはトレードについて思い出してみたい。プロスカウトになって2年目、2009年の先発ローテーションの一角を担っていた木佐貫洋は調子が上がらず、苦しんでいた。他球団の先発投手のコマが足りないチームは当然、木佐貫を徹底マークしてトレードを画策していた。このシーズンは終わり、オフとなった11月、東京大手町のオフィスで清武英利球団代表に呼ばれ、こう言われた。

「木佐貫のためにも環境を変えてあげたいんだ。トレードをするなら、ウチは左の中継ぎ投手が欲しい」

 巨人の補強ポイントの重要課題は勝ち試合の投手リレーに入ってこられる左の中継ぎ投手だった。しかし、清武代表は木佐貫のことが心配で、彼の野球人生について親身に考えていたようだった。

「中継ぎ左腕獲得」――。

 その指示はここにきて急浮上してきたものではなく、僕は常日ごろからそのことを念頭に調査を続けていた。しかし、その当時はどの球団を見ても左の中継ぎ左腕獲得は大きな課題だった。巨人も勝ち試合の投手リレーにしっかり入ってこられる力を持った投手は山口鉄也一人だけ。山口の09年の成績はリリーフとして73試合に登板し、78回を投げ9勝1敗35ホールド4セーブで中継ぎエースとして大車輪の活躍をしていた。

 しかし、巨人は山口に続く2枚目の左腕リリーバーが不在だった。「山口の負担を少しでもカバーできる左投手はいないか」と清武代表は僕に神妙な面持ちで言った。だが、僕の調査では木佐貫クラスとトレードとして釣り合う中継ぎ左腕というのは不在で、仮にいたとしても、それは絶対と言っていいほど放出などできない貴重な存在ばかりだった。

 実はこのとき、すでにオリックスから「木佐貫譲渡の申し入れ」があったようで、清武代表は「チームにプラスになる中継ぎ左腕はいないか、リストを出してくれ」と言った。準備はできていたが、何人かの候補の名前は並んでも、その中でこちらが希望する選手を果たして譲渡してくれるかがポイントで、実現性の高い選手に絞るということは特に今回は難しい作業だった。

オリックスの気になる左腕


 ただ、これまでずっと「中継ぎ左腕」を探し続けてきた僕の頭の中で一人、気になるピッチャーがいた。オリックスの「高木康成」だった。高木は僕の評価としては・・・

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