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香坂英典コラム 第104回 全府中「NPBトリオ」樋口龍之介編

 

2020年から3シーズン、日本ハムでプレーした樋口。一軍では通算18安打、1本塁打をマーク[写真=BBM]


「一発勝負」的な戦い


 全府中野球倶楽部(以下、全府中)NPBトリオの3人目は今年から加入した樋口龍之介だ。「攻撃力アップ」。これも全府中の課題だった。昨年、全府中は全日本クラブ選手権の春季東京都予選、東京都クラブ秋季大会兼関東連盟クラブ選手権で優勝し、春秋連覇を遂げたが春は関東大会で神奈川県の全川崎クラブに0対3、秋の関東大会では山梨県のGOOD JOB硬式野球部に0対3と、ともに初戦で退けられた結果に。それも両試合とも散発の2安打、5安打と攻撃で精彩を欠く試合となった。

 そして相田征一部長の「補強」の号令の下、攻撃の要となるべく、山下浩宣、永野将司に次ぐNPB出身3人目の選手獲得に向けて、スカウトの堀切浩太君と活動を始めた。とは言っても、今回は元プロに捉われず、大学、社会人、独立リーグも視野に入れて、ネットワークを広げ動いた。

 樋口は19年のドラフト会議で日本ハムから育成ドラフト2位指名を受け入団。20年9月には支配下登録され、2ケタの背番号となったが、日本ハムで入団年の支配下昇格は初めてのことであった。そして、9月23日の西武戦(メットライフ)でプロ初安打、10月25日の楽天戦(楽天生命パーク)ではプロ初本塁打を打っている。

 当時、巨人のプロスカウトとして樋口のプレーを見ていた僕は、打撃のレベルの高さに可能性の大きさを感じていた。肩が強い長所もあり、僕の評価も高かった選手だ。樋口はパンチ力もある中距離ヒッター。広角に打つ技術もあり期待も大きかったが、プロの世界で実力がもう一つ突き抜け、レギュラーの座を狙える打者になるには「アイツはいつもヒットを打っている」、または「チャンスにメチャクチャ強い」の2つの言葉で表されるくらい打たないと本物と呼ばれることができない。

 調子を落としてヒットが出ず足踏みをすると、すぐに隣をライバル打者が追い抜いていく。26歳でプロの門を叩いた樋口は即座に結果を出し、そのままその水準を保ち、一線で活躍しなければならない「一発勝負」的な戦いを強いられていたことになる。だが樋口を担当したスカウトは、そういうチャンスを与えられる魅力がある選手という判断をしたのだ。

 樋口は死に物狂いで戦った。それでも結果の世界、続く2シーズンでは答えが出ず、戦力外通告を受けた。しかし・・・

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