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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「杉浦正則が語る“全日本”の重み」

 

7月8日、東京五輪日本代表のユニフォームを着て京セラドームで始球式を行った杉浦氏


 かつてオリンピックの野球はアマチュアのものだった――四半世紀も前のことになると、どれほどの野球好きでもこれを実感するのは難しいことなのかもしれない。

 7月8日、バファローズとイーグルスの試合が行われた京セラドームに杉浦正則が登場した。東京オリンピックに向けて日本の野球界が“結束”することをテーマとした始球式に、バルセロナ、アトランタ、シドニーの3大会に出場し、世界記録となる『オリンピック通算5勝』を挙げた“ミスター・アマ野球”が招かれたのである。するとその始球式を見ていた20代の野球好きがこう訊(たず)ねてきた。

「杉浦さんってプロに行けたのに行かなかったんですよね。どんなピッチャーだったんですか」

 その問いに答えるなら「これほど“気持ちで投げる”という言葉がふさわしいピッチャーをほかには知らない」ということに尽きるだろう。もちろん、気持ちだけではない。右バッターのアウトローへ糸を引くようなストレート、思わずのけぞってしまう迫力十分のシュート、外角のボールゾーンへ逃げていくキレのあるスライダー、思わず腰を引くインコースへの鋭いカーブ。「最強のキューバが認めたピッチャーは野茂英雄と杉浦だけ」とバルセロナで監督を務めた今の日本代表の山中正竹強化本部長が話していたが、杉浦の技術はそれほど高いレベルにあった。しかもその技術を日の丸を背負う厳しい場面でこそ発揮できる――杉浦はまさに“気持ちで投げられる”ピッチャーだった。

 だからこそ・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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