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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「球児に受け継がれた“イチローの野球”」

 

好走塁を駆使して和歌山大会を制した智弁和歌山高ナイン


 ついに陽(ひ)の目を見た。

 イチローがずっとイメージしていた“幻のプレー”が、現実のものになったのだ。7月27日、夏の甲子園出場が懸かった和歌山大会の決勝。市和歌山高と智弁和歌山高の対決は6回裏、智弁和歌山高の高嶋奨哉が市和歌山高の小園健太から先制タイムリーを放って均衡を破った。7回表、すかさず市和歌山高が追いつくと、その裏、智弁和歌山高が2点を勝ち越す。試合が動き始めた終盤、1点の重みは増すばかりの展開だ。

 8回表をゼロに抑えて3対1で迎えた8回裏。智弁和歌山高がさらに突き放すべく二死一、二塁のチャンスをつかむ。一塁ランナーが宮坂厚希、二塁ランナーは大西拓磨。ここで大仲勝海が三遊間の深いところへゴロを打った――この先、野球好きがイメージする当たり前のプレーはこうなる。

 ショートが三遊間の深いところで捕って、セカンドへ投げる。一塁ランナーは二塁へ滑り込むも間に合わず、フォースアウトとなってスリーアウト、チェンジ。

 ところが一塁ランナーの宮坂はここで二塁へ滑り込まず、二塁ベースを一気に駆け抜けてノンストップで三塁へ向かった。そのおかげで市和歌山高のセカンドの捕球よりも宮坂がベースを踏んだ足のほうが早く、塁審はセーフをコールする。市和歌山高のセカンドは、宮坂をアウトにしようと三塁へ投げた。すると宮坂は二、三塁間でストップ、挟まれてしまう。

 その間、二塁ランナーの大西は・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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