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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「欲しいと願う子どもへ──手伝えるのは大人たちだけ」

 

ファンの要望に応えてサインする選手たち[写真はオリックス山下舜平大]。転売も目につく現代だが、問題は転売以前に、欲しいと願う人にサインが届くかどうかだ[写真=高原由佳]


 プロ野球選手にもらうサインに子どもがどのくらい胸をときめかせるものか、イメージできるだろうか。周りの大人にそんな話をすると、分かる分かると目を輝かせる人と、まったく興味ないと冷めた人、両極端なのが興味深い。こちとらサインをもらうと、うれしくて、うれしくて、色紙や手帳を肌身離さず持ち歩いていたほどだ。おかげで色紙の角は丸まり、サイン帳は色が変わってしまうのだが、そこは生涯手放すことのない宝物、何も美品である必要はない。

 初めてもらったサインは1974年の春、草薙キャンプを行っていた大洋ホエールズの当時のピッチングコーチ、藤田元司さんだった。怖々して近づけずにいた小学4年生に藤田さんは、あの甲高い声で「坊主、サインか」と声をかけて色紙にペンを走らせてくれた。その優しさだけでもありがたかったのだが、藤田さんは真っ白な色紙の隅っこにサインをした。ほかの選手のスペースを空けて、寄せ書きできるようにしてくれたのだ。

 子どもにとって1枚100円の色紙は貴重品。たくさんの選手にサインをもらうには寄せ書きは必須。本命でない(すみません)選手に真っ新な色紙を手渡したらでっかくサインをされて……いや、サインをしてくれて、内心、あーっと思った経験は一度や二度ではない。最初の選手に「寄せ書きでお願いします」と・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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