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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「己と向き合い継続してこの先も“継去現己”──」

 

宮古島キャンプで汗を流すオリックス時代のイチロー。若かりしころから、己と向き合いながら継続することによって前へ進む手応えを得てきた[写真=BBM]


最終船に乗り遅れた体験 時の流れを感じる“橋”


 2023年、宮古島へ3度行った。イチローが指導に訪れた宮古高校の野球部を取材するためだ。かつてオリックスがキャンプを行っていた宮古島には何度も降り立ったことがある。しかし、久しぶりの宮古島には、当時はなかった巨大な橋ができていた。宮古島と伊良部島をつなぐ全長3540メートルの伊良部大橋は、離島と離島にかかる橋としては日本最長なのだという。

 エメラルドグリーンの海の上に架かる美しい橋を渡ってみたら、時の流れを感じざるを得なかった。30年前の夏、初めて宮古島へ飛んだときのことだ。目指したのは宮古島ではなく、伊良部島。それまでなぜか野球部のなかった伊良部高校に、沖縄水産高校でコーチをしていた教師が赴任して野球部が誕生した。しかし、創部以来、30を超える連敗を重ねる、そんな離島の野球部を取材するために伊良部島を訪れたのである。

 宮古島に泊まって、毎日、船で15分の伊良部島へ通った。伊良部島から宮古島への最終の船が出るのは午後7時15分。ある日、取材が長引いて最終の船に乗り遅れてしまった。埠頭を離れる船を呆然と見送っていたら、港まで乗せてくれたタクシーの運転手さんが「ウチに泊まっていけ」と言ってくれた。その言葉に甘えて運転手さんのお宅にお邪魔すると、ほどなくテーブルの上に塩だけのにぎりめしと真っ赤なカツオの刺身、派手な色合いのラベルがついた一升瓶の泡盛が並べられた。

 聞けばカツオは・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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