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REAL VOICE 2024への情熱

DeNA・佐野恵太インタビュー BATMAN'S PRIDE「思い切って新しいことに取り組むには良いチャンス」

 

2020年首位打者、22年最多安打の強打者ながら、昨季はレギュラー定着後ワーストの成績に終わり、あらためてプロの世界の厳しさも体感した。新たな試みとともに一選手として臨む今季、バット一本で戦ってきた主軸打者の誇りを示す。
取材・文=日比野恭三 写真=井田新輔、毛受亮介


変化の好機に


 3月上旬、インタビューの場に現れた佐野恵太はにこやかだった。開幕に向けた調整が順調であることが、その姿からは感じられる。

 2024年のシーズンに臨む覚悟を聞かせてほしい──。

 冒頭そんなふうに伝えると、佐野は表情をたちまち引き締め、明確に言った。

「プロ8年目になりますけど、今年はその中でも一番、シーズンにかける思いは強いです」

 意気込む理由の一つは、昨季の成績が低調だったことだ。打率は.264。レギュラーの座を射止めた20年以降で初めて3割を切り、出塁率や長打率、本塁打数なども前年を大きく下回った。

 最も象徴的だった場面は、昨年8月6日の阪神戦(横浜)だろう。1点ビハインドで迎えた7回一死二、三塁。逆転の絶好機で代打を送られた。ベンチに戻りヘルメットを脱いだ佐野は、悔し涙をこらえきれなかった。

 7月の月別打率は.224で、8月も21打数3安打と不振の渦中にいた。当時の状況を、こう振り返る。

「確かにバッティングの技術面も良くはなかったんですけど、それと同じくらい精神面も良い状態ではなかったな、と。焦りや不安を拭えないまま試合を重ねていって……。それが野球のパフォーマンスの足かせになっていました」

 およそ4年ぶりだった代打の宣告。それは、もろくなっていた心にハンマーを振り下ろすようなものだったのかもしれない。だが、芯は砕けなかった。

「僕としてはやっぱり、ここまでバット一本で野球の世界を生き抜いてきたつもりだったので、(代打を出されて)経験したことのないようなショックを受けました。でも、久々の感情を味わうこともできた。結果を出せば試合に出られるし、結果を出さなければ試合に出られない。そういうプロの厳しさ、勝負の世界にいるんだということを数年ぶりに思い知らされました。そこで投げやりになるのではなく、なにくそと思って野球に取り組めたのは、唯一、救いのあるところかなと思います」

 その阪神戦のあとの期間に限れば、佐野の打率は2割8分前後に持ち直している。「なにくそ」の熱情に駆られ、ひたすらにバットを振り込んだ成果だった。

 昨季の佐野は、左翼手のほか一塁手としても多くの試合に出場・・・

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