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阪神・加治屋蓮インタビュー 進化を止めない!「(マウンドで)打者のことだけを考えられるようになったらこの投球フォームは本物」

 

昨年、開幕から22試合連続試合無失点を記録。前半戦の快進撃に大きく貢献した。しかし、後半戦は減速し、勝ちパターンに入り込むのが難しかった。そこで1年間、安定した成績を残すため、投球フォームを見直し、2024年に臨む。現役11年目。ベテランの域に入りながらも、常に進化を求め続けている。
取材・文=椎屋博幸 写真=佐藤博之、BBM


現状維持は退化


 結果だけを見れば1イニングを無失点に抑え、やはり今年もこの男の存在はチームに欠かせない。だが、この1イニング23球の中には、さまざまな意味が込められていた。

 順風満帆、自分の計画どおりに春季キャンプを進め、沖縄での実戦は打者を翻ろうするピッチングを見せた。しかし3月9日のヤクルトとのオープン戦は苦しんだ。本拠地・甲子園に帰り、自身にとっては今年最初となる甲子園。強くて冷たい浜風に体が冷え込む。2月の沖縄と正反対の気温で8回のマウンドへ。先頭の内山壮真に対し、ストライクが1球しか入らず四球を出した。本来ならそこから立ち直るのが加治屋蓮なのだが、不安定な投球が続く。伊藤琉偉を捕ゴロとして一死二塁とスコアリングポジションに走者を置いてしまった。続く増田珠にも四球を与え、一死一、二塁と自分で自身を苦しめる状況をつくってしまった。

 迎えた八番の松本直樹のときだった。二遊間からサインが出され、二塁へクイックけん制を試みた。強く速いけん制もキャンプ中から繰り返したプレー。何気ないけん制球だったが、打者と対峙(たいじ)するのではなく、けん制で間をつくったことで、大きく好転した。

「それまではストライクが入らず、こんな感じではなかったな、と思いながら投げていました。どういうリリースをしたらいいのか、どういう投げ方をすればいいのか、そればかりを考えていたんです。でもけん制をしたあと、ふとバッターだけに集中できている感覚になったんです。あれこれ考えず、打者を打ち取ることに集中する、という形ができていました」

 そのマインドの変化は、投球にいい方向へと向く。無心の状態で腕を振るだけの状況ができ、必然的に際どいコースに真っすぐも変化球も決まっていく。当然のように球審の右腕が高々と上がる。迎えた2ボール2ストライクから、三塁ゴロに仕留めると、内野の連携もスムーズにダブルプレーを成立させ、ピンチをしのいだ。



 ソフトバンク時代にお世話になった工藤公康監督(当時)の言葉が、今の加治屋のプロとして投げ続ける上での矜持になっている。

「現状維持は退化を意味する」

 22年オフ・・・

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