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【MLB】スコット・ローレン三塁手に可能性、23年アメリカ野球殿堂選出

 

攻守に秀でた才能を発揮したローレンが今回殿堂入りなるかどうか、興味深い。殿堂は数字ではなく球界にどのような歴史を残したか、ということが重要視されるべきだろう


 2023年のアメリカ野球殿堂入りの発表が1月24日に迫っているが、今回、選出に必要な75%の票を獲得できそうな元選手は1人。1年前に63.2%の票を受けたスコット・ローレンだ。

 攻守に秀でた三塁手で通算316本塁打、2077安打、8度のゴールドグラブ賞を獲得した。新人王獲得に加え、7度オールスターにも選ばれている。とはいえ昨年まで選ばれるか選ばれないかで物議をかもしたバリー・ボンズ、ロジャー・クレメンス、カート・シリングのような超大物ではない。MVP投票でもトップ10に入ったのは4位の04年だけだ。だから初めて対象になった18年は10.2%の得票しか得られなかった。以後17.2%、35.3%、52.9%、63.2%と急上昇してきたのである。

 MVP3度のアレックス・ロドリゲスは、実績は申し分ないが現役時代の度重なる薬物違反で1年前2度目の投票でも34.3%。今回も大して数字は伸びないだろう。28.9%だったマニー・ラミレスも同様だ。今年から新たに投票対象となったメンバーではカルロス・ベルトラン中堅手が435本塁打、2725安打、9度のオールスター、3度のゴールドグラブ賞、新人王と一番実績があるが、17年のアストロズのサイン盗みスキャンダルの首謀者という汚点が付いてしまった。3、4年後は分からないが、今回は75%に届かないだろう。

 ところで最近、MLB公式サイトのマイク・ペトリエロ記者が大谷翔平の殿堂入りの可能性について言及していた。大谷は二刀流でベーブ・ルースもやらなかったことを成し遂げているし、新人王の18年、MVPの21年、MVP投票2位&サイ・ヤング賞投票4位の22年と、3度も傑出したシーズンを送った。もし彼が選考対象の条件であるメジャーで10年以上プレーできれば、投票者たちは二刀流の彼を殿堂に入れようとするし、比較対象がないため(数字の)ハードルも少し下がるかもと指摘していた。

 ちなみに条件である10年以上のプレー実績だが、過去に一人だけ例外とされた選手がいる。1902年から10年までクリーブランド・ナップスで投げたアディ・ジョス投手だ。「ヘアピン」のあだ名がつくほど細い体を捩じり、打者に背を向け、ボールをぎりぎりまで隠して投げる投法は当時の球界にインパクトを与えた。抜群のコントロールで45完封。9年の実績ゆえ殿堂に入れていなかったが、50年代くらいから記者の間で「ジョスを殿堂に」のキャンペーンが始まり、70年にニューヨーク・タイムス紙のレッド・スミス記者が「ジョス抜きには野球の歴史は語れない。殿堂に相応しいか否かの尺度はそれであるべき」と持論を展開。78年、ベテランズ委員会によって選出された。

 このスミス記者の野球の歴史を語れるかどうかという考え方に同意する。近年殿堂「HALL OF FAME」は、FAME(名声、評判)よりも数字にこだわり過ぎだと感じるからだ。何よりも問われるべきは、球界にどんなインパクトを与えたか。21世紀でも二刀流が可能と証明した大谷は、すでに殿堂に相応しい足跡を残したと感じている。

文=奥田秀樹 写真=BBM
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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