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【MLB】同地区対決が減り、インターリーグ増加、スケジュール変更の狙いとは

 

公平性を重んじつつ、スターがすべての球団で見られるようにするやり方を取ったMLB。勝負よりも興行面もやはり大事ということか[写真は大谷翔平]


 過去10年ワールド・シリーズに勝ち進んだ20チームのうち、公式戦でもリーグの最高勝率だったチームは半分である。1968年までのルールなら、そのまま世界一決定戦に出られたのが、残り半分はポストシーズンの途中で敗れた。

 個人的に見てみたかったのは、2014年、若きマイク・トラウトを擁したエンゼルス。16年、ダルビッシュ有のいたレンジャーズ。18年MVPのクリスチャン・イエリッチがいたブリュワーズだ。

 3人はそのときに世界一の美酒を味わったかもしれない。もっともそれはあくまで昔だったらの仮定の話で、今はポストシーズンを勝ち上がらねばならない。69年から各リーグ東西2地区に分かれ、2チームがまずリーグ優勝決定シリーズを戦うとなった。94年からは各リーグ3地区構成で、+ワイルドカードのチームと、4チームで地区シリーズ、優勝決定シリーズを争う。12年には、ワイルドカード枠が2つになり、ワイルドカード同士の1試合のプレーオフを実施、勝ったほうが地区シリーズへ進む5チームの争い。

 そして22年に地区優勝の3チームとワイルドカードの3チームと6チームの戦いに拡大した。メッツのマックス・シャーザーはポストシーズンに出るチームが増えることに反対で、「地区優勝の価値が薄まる。162試合の長い公式戦の意味を尊重すべき」と主張する。だがMLB機構は1年前に提案したように、近い将来各リーグ7チーム、トータル14チームにしたいようだ。そんな流れの中、23年からMLBのスケジュールが変わる。

 30球団が少なくとも一度は互いに戦うようになり、インターリーグの試合が各チーム20試合から46試合と倍以上に増える。一方で同地区の対戦が76試合から52試合に減る。これには2つの意味がある。ワイルドカード争いがより公平になること。そして大谷翔平やアーロン・ジャッジのような人気者がすべてのチームと戦うことで、テレビ視聴率と観客動員の面でプラスになる。

 ワイルドカード争いの公平性については例えばオリオールズで説明できる。レベルの高いア・リーグ東地区に属し、昨季同地区の試合は34勝42敗の負け越し、それ以外は49勝37敗で、83勝79敗の地区4位でポストシーズンに進めなかった。もしオリオールズがア・リーグ中地区のチームなら結果はまったく違っていたのではないか。従来のスケジュールだと、同リーグのチームでも同じ対戦相手は52%に過ぎなかったが、23年からは76%が同じ相手で、より公平な競い合いになる。

 興行面では、大谷はMLBで5年プレーしたが、依然ナ・リーグのミルウォーキー、ピッツバーグ、シカゴ、ニューヨーク(メッツ)、ワシントンDCの5球場には行っていない。それが23年はミルウォーキー、ニューヨーク(メッツ)に遠征し、もし24年もエンゼルスに残っていれば、残る3球場も訪れる。

 地元ファンは初めて生で見る大谷を大歓迎するだろう。22年からユニバーサルDHとなったことも、インターリーグを増やせた要因になった。68年までのフォーマットは完全に過去のものとなっている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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