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【MLB】ニューヨークの大舞台でお化けフォーク、待ち遠しい千賀滉大のデビュー

 

メジャーでもお化けフォークは有効な球種と見られている。それを駆使し、千賀は大都会ニューヨークでヒーローになる可能性は大だ


 2022年、MLBの中でスプリットで最も多く三振を奪ったのはブルージェイズのケビン・ガウスマンだった。126個で、全三振の61.5%。スプリットの空振り率は44.5%だった。これに続くのはエンゼルスの大谷翔平で66個、空振り率は48.8%。ただ大谷の場合は三振で一番多かったのはスライダーで、スプリットの三振は30.1%に過ぎない。

 ほかにはジャイアンツのアレックス・コブ、ドジャースのトニー・ゴンソリンらが代表的な使い手。リリーフ投手ではオリオールズのフェリックスバティスタで全三振の67%、空振り率は53.3%だった。

 23年シーズンはそこにメッツの千賀滉大が割って入る。というか、ニューヨークの大舞台に立ち、すでに「GHOST FORK/お化けフォーク」のニックネームが知れ渡っているため、好投を続ければ大騒ぎになるのではないか。

 2月19日、キャンプ地ポートセントルーシーでライブBPに臨んだ。空振りを喫した22年の打点王、ピート・アロンソは「ボールが見えなくなった。お化けフォークのニックネームはもっともだ。たくさんの打者が空振りさせられるだろう」と舌を巻いた。

 首位打者ジェフ・マクニールも「ボールの軌道はこれまで見たことがない」と感心。東京五輪にアメリカ代表で出場したデビッド・ロバートソン投手(現在フィリーズ)は「突然、テーブルから下に落下する感じ、真下に落ちる」と表現した。スプリット自体は珍しくないのに、ここまで評価されるのは特に落差が大きいからだろう。

 メッツのジェレミー・へフナー投手コーチは「リリースポイントが違うから、角度が付き、ボールが消えていくように見える」と説明している。ソフトバンク時代はチームメートで、現在はパドレスに在籍するニコラス・マルティネスはMLBでは千賀の奪三振数がむしろ増えると予測する。日本の打者はバットに当ててくるアプローチなのに対し、メジャーはホームランか空振りかの大振りの打者が多いからだ。

 千賀の昨年の奪三振数は156個だったが、19年の自己最多記録227個を抜くかもしれない。メッツは全米でも特に野球人気の高いニューヨークのチームであることに加え、オフのスティーブ・コーエンオーナーの積極的な補強で、23年のサラリー総額はMLB球団史上最高の3億7000万ドル(約497億円)。注目度の高さが半端ではない。

 過熱する大舞台で果たしてどんなピッチングを見せてくれるのか。感心するのは、千賀が11月からワシントン州シアトル郊外のトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」の門をたたき、着々と準備を進めていたこと。同施設にはかつてはNPBの横浜・DeNAロッテで投げたブランドン・マントレーナーがいて、日本人メジャー・リーガーについてもNPBからMLBに移ることで、ボールの動きがどう変わったかを研究している。

 千賀は毎日、滑りやすい新品のメジャー球で練習しながら、握りをアジャストし、メカニックも多少変更を加えてきたそうだ。「GHOST FORK」、「DOCTOR・K」、ニューヨークで称賛の文字が躍る日が待ち遠しい。

文=奥田秀樹 写真=BBM
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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