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【MLB】FA市場の敗者レッドソックス、3年連続地区最下位の予想を覆せるか?

 

ケネディCEO[写真]は数年後の世界一を狙っているが、レッドソックスファンは3年連続の最下位は見たくない。ビッグマーケット運営の難しさに、CEOがどう対応する24年になるだろうか


 1月下旬、ボストンで行われたレッドソックスのファン感謝イベントで、球団のリーダーたちにブーイングが浴びせられた。サム・ケネディCEOとクレイグ・ブレスロー新編成本部長がステージに上がったときである。今世紀最多の4度の世界一を誇るチームだが、過去2年はア・リーグ東地区で連続最下位だ。

 11月ブレスローの就任会見で、球団のチェアマン、トム・ワーナーは「24年は戦えるよう、このオフについては補強にエンジン全開でアプローチする」と決意を語ったが、FA市場で獲得できたのはルーカス・ジオリト投手だけ。トレード市場でもボーン・グリッソム二塁手、タイラー・オニール外野手だけだった。

 特に補強が必要不可欠だったのは先発投手で山本由伸今永昇太の獲得にも動いたが、他球団のオファーに及ばなかった。ファンの欲求不満は募る。「ソーシャルメディアで怒りは承知している。この状況から脱し、再び皆さんにレッドソックスを誇らしく思ってもらえるようにするのが私たちの仕事。ブーイングを称賛に変えるには勝つことだ」とケネディCEO。

 しかしながら、24年の予想はとても厳しい。MLB公式サイトは23年の若手を軸に大躍進を遂げたオリオールズを優勝候補に挙げ、レイズ、ヤンキース、ブルージェイズもトップ10に入れている。一方でレッドソックスは30球団中19位の評価だ。年明け、地元記者が吉田正尚のトレードの可能性を報じた。外野はオニール、吉田、ジャレン・デュラン、ロブ・レフスナイダーに加え、若手が2人と頭数が足りている。外野に必要なのはパワーヒッターで、ゆえにFA市場でテオスカー・ヘルナンデスを狙い、吉田は若手先発投手との交換を考えているというものだった。

 しかしながらここでも十分なオファーを出せず、ヘルナンデスはドジャースを選択した。ファンが腹を立てるのは球団の24年のサラリー総額は現時点で1億7560万ドルで、ぜいたく税の基準額2億3700万ドルまで約6000万ドルもあり、たっぷり使う資金はあるはずだからだ。

 にもかかわらずオファーをケチるから誰も獲れない。とはいえそれには理由がある。レッドソックスには現在マイナーにメジャー若手有望株ランキングでトップ100に入る選手が3人もいる。彼らは、24年は2Aスタートだが、3人がメジャーで戦えるようになる25年以降が本気で優勝を狙うときと考えているのだ。「われわれにはコアとなる若手選手がいる。チームが長期的に成功するためには彼らを大事にして、規律を保ったアプローチを続けないといけない。お金の使い方はそれに伴って決まる」とケネディCEO。

 23年はやはり若手のトリストン・カサス一塁手が24本塁打、ジーター・ベロ投手が12勝とメジャーで活躍しており、若手の成長をもう少し待ちたいのだ。しかしながらファンにしてみれば、レッドソックスはビッグマーケットチームであり、宿敵ヤンキースのように毎年真剣に優勝を狙ってほしいのだ。

 そもそも若手有望株については期待どおりに育たないこともあり、ケガをしてしまうかもしれない。ファンはやはり3年連続最下位など見たくはないのだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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