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【MLB】プランBのジャイアンツ、604億円の補強は賢明? それとも無駄遣い?

 

3月に入り昨年のサイ・ヤング賞のスネルと契約したジャイアンツ。そのほかにも大補強をしたが、これが吉と出るか凶と出るか!?


 今季のジャイアンツは極めてユニークなチームづくりをしたと思う。大谷翔平山本由伸も獲得に動き、ファイナリストに残ったが、2人に選んでもらえなかった。しかしながらその後も「プランB」で積極的に動き、なんと総額4億ドル(約604億円)の補強を敢行した。

 行き当たりばったりではあるけれど、これだけ費やしたからにはファーハン・ザイディ編成本部長も、ボブ・メルビン監督も、即、結果を出すことを求められる。ナ・リーグ西地区の宿敵ドジャースにはかなわないとしても、ワイルドカード枠でポストシーズンに勝ち進まねばならない。果たして可能なのか? まず先発投手陣。2023年のナ・リーグ、サイ・ヤング賞投手のブレイク・スネルと2年総額6200万ドルで契約した。スネルは縦に割れるカーブが武器で、MLB公式サイトは空振り時のバットの芯とボールの隔たりは平均10.4インチ(26.4センチ)でメジャーベストだと称賛している。234奪三振の内109個がカーブだった。

 一方で四球が多く、99与四球はリーグワースト、1959年のアーリー・ウィン以来という四球王でサイ・ヤング賞になった。球数が多いから、先発しても平均で5.1回しかもたない。加えてケガが多く、8年のキャリアでシーズン30試合以上の先発は2度だけだ。ゆえにどこもスコット・ボラス代理人の求める大型契約に応じなかったのだが、3月下旬になって2年ならと獲得した。

 ジョーダン・ヒックスは10 3マイルのシンカーが武器のリリーバーだったが、先発投手として4年総額4400万ドルで契約。球種はシンカーとスイーパーに加えてスプリッターを練習中だ。課題はコントロールと長いイニングを投げるスタミナだが、ここまで4試合12イニングを投げWHIPは1.42。「今は90%の力で投げるようにしている」と話している。

 さらにトレード市場で21年のア・リーグ、サイ・ヤング賞投手で、現在はトミー・ジョン手術からリハビリ中のロビー・レイを残り7400万ドルの契約ともども引き取った。ほかは昨季サイ・ヤング賞投票で2位だったエースのローガン・ウェブ、球団の若手有望株で95マイルの直球が武器の左腕カイル・ハリソンだ。

 本拠地オラクル・パークは投手有利だし、うまくいくのかもしれないが、層は薄くケガ人が出れば苦しくなる。23年の弱点は攻撃力で昨季のOPS(出塁率+長打力)は.695で26位だった。そこで中堅手の李政厚に6年総額1億1300万ドル、指名打者のホルヘ・ソレアに3年総額4200万ドル、マット・チャプマン三塁手に3年総額5400万ドルの契約を与えた。

 李は左太ももの張りで一時期戦列を離れたが、打率4割、1本塁打と実力の片りんを見せ、ソレアとチャプマンも順調にキャンプを送った。しかし、かつてのバスター・ポージーのような相手投手を恐れさせる中核打者はいない。

 ジャイアンツはこのオフの補強で17年以来というぜいたく税の基準額を超えたが、本当に賢明な投資だったのか? これで勝てるのか? と思わずにいられないのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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