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【MLB】世界一に照準を絞るブレーブスの三振奪取王ストライダー

 

スペンサー・ストライダー


 現在、メジャーで最も見ごたえのある投手がブレーブスの開幕投手、右腕のスペンサー・ストライダーだ。クレムソン大出身で、2020年のドラフト4巡指名。もとは注目の若手有望株ではなかった。21年にメジャー・デビューを果たしたが、10月になってリリーフで2試合に投げただけ。22年も最初はブルペンで、11試合にリリーフ登板だった。

 初先発は22年5月30日。そこから才能発揮で、22年は11勝5敗、防御率2.67でナ・リーグ新人王投票で2位に入った。23年は20勝5敗、281奪三振でサイ・ヤング賞投票で4位に入った。

 ここまで320回2/3を投げて483奪三振。このペースでいくと、先発投手では史上最も早いペースで500奪三振に到達することになる。これまでの最速はフレディ・ペラルタの372回、大谷翔平は388回2/3だった。武器は時に100マイルを計測する直球と空振り率50%超えのスライダー。背は高くないが、たくましい太ももで体を支え、マウンド上で前方に大きく踏み出しボールをリリースする。

 エクステンションは7.1フィート(216センチ)だ。ボールを放す位置も低いため、高めを狙って投げる直球は伸び上がってくるように見え、アッパーカットスイングの打者には打ちにくい。だからほぼ2球種にもかかわらず、これだけ三振が奪えた。先発した最初の50試合で、17度も2ケタ三振を奪ったが、これはメッツのドワイト・グッデンの20試合に次ぐ史上2番目の快挙である。

 考え方もしっかりしており、往年のブレーブスのエース、グレッグ・マダックスに似ていると球団関係者は称えている。アレックス・アンソポーラス編成本部長は「野球界に関わって長いけど、こんな若手投手は見たことがない」と22年の公式戦が終わると、すぐに6年総額7500万ドルの長期契約を与え、期待どおりに成長を続けている。ただその一方で昨季は22本の本塁打を被弾、防御率は3.86だった。

 この数字ゆえにサイ・ヤング賞投票では4位に甘んじた。そこで今季はカーブを3番目の球種として加えることにした。平均球速81〜83マイルでスライダーより5マイルほど遅い。もともと大学時代に使っており、オープン戦でテストをすると好感触だった。まだ25歳と若く馬力もある。メジャーでは19年のジャスティン・バーランダー、ゲリット・コール以来のシーズン300奪三振も可能だろう。

 もっとも本人は個人記録よりもチームで勝ちたいと言う。「うちはワールド・シリーズに勝つ以外、受け入れられない。どこよりも優れた選手がそろっている。ハードルはできるだけ高く設定しておきたい」ときっぱり。

 ご存じのようにブレーブス打線は強力。ロナルド・アクーニャ・ジュニア、マット・オルソンなどの活躍で昨季は野球史上初めてチーム長打率が.500を超えたチームになり(.501)、チーム本塁打数も307本で2位のドジャースと58本差だった。

 三振奪取王に強力打線。同じく世界一を狙う大谷のドジャースにとってやはり最も手強いライバルなのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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