二死から見せた日本流

　初戦は投手力で勝利を収めた侍ジャパンが、今度は打でMLBオールスターを圧倒した。大量8得点の猛攻だったが、特筆すべきは、8回の2点以外はすべてが二死からの得点だったことだろう。

　まずは2回二死、松田宣浩が果敢な初球攻撃で三遊間を破る左前打を放つと、続く銀次も初球を中前へ。一、三塁から、九番の伊藤光は2ボールノーストライクからの3球目を中前に弾き返し、松田が先制のホームを踏んだ。さらに柳田悠岐がこれも初球を走者一掃の2点適時三塁打とし、一挙に3点を奪った。

　この4連打はすべてファーストストライクをとらえたもの。打たれた岩隈久志は「さすが日本代表というまとまりのある打線。投手としてみれば『そう来るんだな』と思うくらいですが、国際大会では積極的に打ちに行くのが基本。情報の少ない相手投手に追い込まれて決め球を投げられるのは嫌ですからね」と侍ジャパンの積極性を評価した。

　3対3と同点にされた4回二死一塁では、伊藤が「（一走の）松田さんが走ったのが見えたので」ととっさにバットを出すと、打球は中前打に。サインはなかったものの結果的にランエンドヒットの形でチャンスを作ると、柳田、菊池涼介の連打で2点を勝ち越した。

　さらに5対3の6回二死、四球で出た柳田が初球に盗塁し、2球目の暴投で三振とすると、菊池がタイミングを外されながらもしぶとく右前に落とし、ダメ押しに成功した。

　二死という犠牲バントが使えない状況から初球攻撃、ランエンドヒット、盗塁と、さまざまな手段でチャンスを拡大させ、変幻自在の攻めでメジャー投手陣を打ち崩した。

　ファレル監督は「失投を確実にとらえられた。二死からでもあきらめずに粘って逆方向へ打つなど、良い打撃だった」と侍ジャパンに脱帽。小久保裕紀監督も「日本らしいつなぐ野球で試合を作ってくれた」と打撃陣を称賛した。「対戦経験がないピッチャーばかりなので、どんどん打ちに行く姿勢を持って、初球から打てていけた。甘い球は積極的に打つというのが日米野球のテーマなので」。1本塁打を含む3安打1打点3得点と攻撃の要となった松田は打線爆発の秘訣を明かした。

　対戦相手の知識の少ない大会において、いかにチャンスを作り、それをモノにするかが勝敗を大きく左右する。今後の攻撃の指針とも成り得る14安打の猛攻だった。

侍セレクション

＃44 柳田悠岐


攻撃力はメジャー張り

　そのパワーとスピードにはメジャー・リーガーも目を見張ったことだろう。3安打4打点1盗塁という数字だけでなく、4回、8回には相手のスキを突いて三塁を陥れるなど、「足で揺さぶれ」という小久保監督の指令に応えた。「うまくいかないこともあるけど、思い切って全力プレーをやりたい」。怖いもの知らずの26 歳が、チームに勢いをもたらした。