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日本のエース・前田は徐々にギアを上げ、2安打ピッチングでMLB打線を封じ込めた



これがニッポンのストロング


 日本の、侍ジャパンの強みとは何か。あらためて投手のクオリティーの高さを知るゲームとなった。

 2017年の第4回WBCに向けた強化試合の位置づけとはいえ、小久保裕紀監督にとっては、初の公式大会。その初戦、指揮官は万全に万全を期し、頼れる大黒柱を先発のマウンドへと送り込んだ。その理由はこうだ。「8年前(06年の日米野球)に全敗しているのをすごく意識していましたので、初戦を日本のエース・前田健太で勝つことに大きなウエートを置いていました」

 その後のチームの行方をも占う大切なマウンドを託された前田は、見事、期待に応える。初回こそ二番・カノ、三番・ロンゴリアに対して計13球を投じて安打、四球とヒヤリとさせたが、後続を断つと、すぐにペースを取り戻した。「甘く行ったら長打という雰囲気を感じたので、本当に丁寧に投げました」と、レギュラーシーズンよりも変化球を多めに用い、かつ低めに集めて5回を被安打2の無失点。3打席とも内野ゴロに終わったゾブリストに「攻略するにはタフな投手」と自らの力を認めさせた。

 とはいえ、ここまでは映像をチェックしていたというMLBサイドも想像ができたであろうシナリオ。が、その後の継投にこそ、日本のポテンシャルが隠されていることには想像も及ばなかったのではないか。

 2番手・牧田和久の右アンダーハンドはメジャーでも珍しくないようだが、最速130キロ台の直球と、この日の最遅95キロの超スローカーブを織り交ぜながら、しかも丹念にコースを突く投手はMLB 打線を苦しめた。

「緩急をつけて、こちらの考えどおりに投げられました」と言うサブマリンに対し、二番・カノで始まる6回からの2イニングで打者6人から快音はなし。クイックを織り交ぜながらの投球術の前に屈強な打者たちも成す術はなかった。牧田にとっては13年の第3回WBCで抑えを任されて以来の代表だったが、世界が自身を苦にしていることを、あらためて感じたのではないか。

 次代の日本を背負う大谷翔平の3番手登板は、この日の最速159キロ、8回を3人切りで明るい将来を予感させ、抑えを託された西野勇士も1安打こそ許したものの、最後は併殺切りで見事大役を果たし、無失点リレーを完成させた。

 今、考えられるベストな継投での勝利に、指揮官も「日本人が誇る投手陣があっての勝利」と笑顔。ここに04年から続く日米野球の連敗記録を6で止めたことも併記しておく。

2回、先頭の内川が安打で出塁。三進後、松田の犠飛で先制のホームを踏み、この表情



守備でメジャー軍団を驚がくさせた菊池(中央)。打っても初回に二塁打など積極果敢



第2先発で2回を打者6人に抑えた牧田。13年WBCのリリーバーは、独特のフォーム、そしてボールが、世界に通用することをあらためて証明した



打っては初回、前田から左前打のカノは、守備でも華麗に舞ってみせた



2回に先制犠飛を放った松田。チーム一の元気者は6 回にも右前打で完全にノッた



MLBオールスターの先発は今季16勝のシューメーカー。2、4回の集中打に沈んだ




侍セレクション


#23 山田哲人


“ナーバス”が生んだ集中力

 ヤクルトでは守ることのない一塁での先発に「とにかく緊張して、打撃も守備も過去一番くらいの集中力を持っていました」。通訳が「ナーバス」を連呼する初々しい試合後記者会見となったが、その“ナーバス”が4回の貴重な追加点となる適時打につながるのだから、さすが193安打男。小久保ジャパンでの地位を一気に高めた。
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