今季、ソフトバンクを3年ぶりの日本一へと導いた秋山幸二前監督。6年間の指揮官生活で3度のリーグ優勝、2度の日本一と見事な成績を残したが、その裏には数多くの苦悩があった。ユニフォームを脱いでから約1カ月半――。現役時代は選手とコーチの間柄だった伊原春樹氏に、その思いを語った。 構成=小林光男 写真=内田孝治 一番大事なのは開幕ダッシュ
伊原 見事な戦いぶりで
阪神を下しての日本一、本当おめでとうございました。
秋山 いやあ、ラッキーです(笑)。
伊原 そんなことないだろう。やっぱり勝負運もね、努力した人にしかつかないと思うよ。激闘から1カ月以上経ったけど、現在の心境は?
秋山 この前(11月24日)、福岡で優勝パレードをやったんですよ。最後にファンの人たちの前で手を振って、喜んでいる姿を見て、ホッとしましたね。その半面……少し寂しさもありました。
11月24日に行われた優勝パレードには約35万人のファンが詰めかけた(写真=湯浅芳昭)
伊原 非常にアキらしいと思ったのは、優勝パレードでもユニフォームを着ていなかったこと。お前さんの最後のユニフォーム姿を見たいファンは、たくさんいたと思うんだけどなあ。
秋山 本当は日本シリーズで全部終わったという区切りが、僕の中にあったんですよね。だから最初、「パレードに出ない」と言っていたんですけど、周囲からは「それはよくない」と(笑)。とにかくユニフォーム姿は日本シリーズで最後、と感じていたんですよ。
日本シリーズでは阪神を4勝1敗で下し、日本一に輝いた(写真=小山真司)
伊原 まあ、アキらしいよ(笑)。今季、
オリックスから
李大浩、
西武から
サファテ、
中日からはFAで
中田賢一を補強するなど、誰が見ても優勝だという戦力が整えられた状況での戦いだったわけだけど。
秋山 僕はとにかく開幕ダッシュが大事だと考えているんですよ。そこは少々無理をしてでも、例えば中継ぎをつぎ込むなどして、勝利をつかんでいく。開幕直後でこけてしまって、そのまま交流戦に突入する形になるとよくない。交流戦は同一リーグ同士の戦いではないから、簡単にゲーム差を縮めることができないので後々大変になってくるんですよ。だから、開幕ダッシュを是が非でも成功させるように戦略を練っていくんです。
伊原 ましてやソフトバンクは交流戦が強いもんな(2008、09、11、13年優勝)。
秋山 やっぱり、ソフトバンクは勝たないといけないチーム。だから正直、僕の中に若い選手を育てようという気持ちはほんの少ししかありませんでした。確実に二軍で実績を残さないと一軍には上げない。さらに、実際に自分の目で見て、ですね。iPadで二軍の試合も見ることができるので、成績を残している選手でも自分の目できちんと確認します。そこで判断。たとえ成績が良くても、プレーを実際に見て一軍で通用しないと思ったら上げません。なんかあまりそうは思われていないけど、僕は結構、細かいから(笑)。
監督業は激務 リセットする必要性
伊原 アキは表に出たら、全然話さんからな。
秋山 そりゃそうですよ。他球団になるべく情報を与えたくないですからね。申し訳なかったですけど、評論家時代に評論をやっていた媒体に対しても、監督になった瞬間に何か重要なことを聞かれたら「エッ、知らないよ」と。相手が新聞記事などを見て、優位に立ってしまいますから。だから、僕の場合、監督生活をスタートさせるにあたって、余計な情報は外にもらさないというところからスタートしました。
伊原 しかし、監督生活6年でリーグ優勝3回、日本一2回。非常に素晴らしい成績を残しているわけだけど、なんでユニフォームを脱いでしまったの? 体調も悪そうじゃないのに。惜しんでいるファンもたくさんいるよ。
秋山 それは・・・
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