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球界インサイドルポ

開幕ダッシュに失敗した3チーム 次なる一手は!?

 

パ・リーグの優勝候補の一角に挙がっていたオリックス、新体制で最下位からの逆襲を誓う楽天、若手の台頭が目覚ましい中日。それぞれが希望と野心を胸に2015年シーズンをスタートさせたが、開幕カードで負け越し、苦しい船出となった。ここでは開幕ダッシュに失敗した3チームの現状と巻き返しへのポイントを探ってみたい。

オリックス・バファローズ



開幕12試合、2勝10敗


 オリックスの今季開幕は、よもやの“大ブレーキ”となった。しかもその内容がよくない。4月9日終了時点で完封負けが3試合、逆転負けが7試合。昨季、7回終了時までにリードすれば67勝2敗。先制して逃げ切るというオリックスの“型”が今、大きく揺らいでいるのだ。原因は明らかだ。ソフトバンクとの2強とまで評された、下馬評の“根拠”となった充実していたはずの戦力に、計算外の事態が続々と起こっているのだ。

 最大の誤算は、リリーフ陣に故障者が続出したことだろう。昨季62試合に登板し、7勝20ホールドをマークした比嘉幹貴が右肩痛、さらに55試合に登板した岸田護が、オープン戦終盤に左ワキ腹痛を訴え、ともに戦線離脱を余儀なくされた。

 岸田の場合は、勝ちゲームはもちろん、1〜2点のビハインドのケースで2〜3イニングをつなぎ、その間に試合を立て直す態勢を作るという、貴重な役割を担っていた。比嘉も右サイドから140キロ台後半のスピードを誇り、打者の左右を問わずに抑えられるだけでなく、けん制のうまさがピカ一で、走者を背負った、イニング途中からのリリーフでも、安心して投入できる“ジョーカー的役割”を担っていた。

逃げ切りの“算段”が立たない現状


 この2人の不在が、早くも大きな影を落としているのだ。典型的なケースが、4月4日、対日本ハム戦(京セラドーム)だった。先発のバリントンが6四球を出しながらも5回1失点でまとめ、1点リードで後半に突入した。昨年なら6回から岸田、7回に馬原孝浩、8回に佐藤達也、9回に平野佳寿の“方程式”が成り立っており、イニングの途中でピンチを招けば比嘉を投入するという、二段構えもできていた。

 しかし今季は、この“逆算”ができないのだ。この試合でも6回に登板したのはプロ4年目の左腕・海田智行、7回からは昨季途中に育成契約から支配下に復帰したばかりの右腕・榊原諒。2人とも球速は140キロ前後にとどまり、リリーフとしての実績、適性を見ても、現時点では、ベンチが絶対的な信頼を持って送り出せる存在ではない。

 その榊原が1点リードの7回、二死一、三塁のピンチを招くと、4番手に投入されたのは古川秀一。2010年のドライチで、今季からサイドハンドに転向した左腕だが、左打者のハーミッダに同点の右越え二塁打を許し、続く二、三塁の勝ち越しのピンチにマエストリを投入も、レアードに勝ち越しの2点タイムリーを許してしまった。去年なら、右のレアードに対しては、比嘉が投入されている場面だろう。

 さらに、弱り目に祟り目ともいうべきだろう。4日の試合前、ストッパーの平野佳が右足首の炎症で出場選手登録を抹消された。4月1日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)の9回、一塁ベースカバーに入った際に痛めたもので、昨季リーグ新の40セーブをマークした絶対的守護神までもが戦線離脱。岸田、比嘉、馬原、佐藤達、平野佳の5人が登板した昨季のイニング数は322回1/3と、チームの全イニング1294の約1/4。ここから3人も抜けては、逃げ切りの“算段”が立たないのは当然だ。しかも、昨オフに右ヒジを手術したエースの金子千尋は、調整遅れでいまだ実戦登板がなく、復帰のメドも立っていない。

絶対的守護神の平野も4月1日の試合の9回に一塁ベースカバーに入った際に右足首を負傷。チームはいきなり苦しい戦いを強いられることになった



3度目の正直となる「真の巻き返し」へ


 こうした状況を踏まえた上で、森脇浩司監督は開幕前「投手陣は、ちょっと開幕の時点ではしんどいかもしれない。我慢の試合が続くだろうし、これを打線でカバーする。そういうパターンがしばらく続くかもしれない」と語っていた。

 昨季まで、2年連続でチーム防御率はリーグ1位。僅少差を、質量ともに豊富な投手陣で守り抜くという、典型的な“守りのチーム”だった。そこに今季は、中島裕之小谷野栄一、ブランコら、いずれも打撃タイトルを獲得した実績のある野手陣の獲得に成功。ここに、昨季首位打者の糸井嘉男、10年の本塁打王・T-岡田を絡めた打線は、破壊力も十分だ。昨季80勝、優勝したソフトバンクとの勝率差もわずか2厘。攻撃力の上乗せでその差を埋められるというのが、優勝候補に挙げられた理由の1つ。その“頼みの綱”のはずだった打撃陣が今、大きく期待を裏切っている。

主砲として期待された新加入のブランコも故障で4月1日に一軍登録抹消。低迷脱却のために頼れる助っ人の復帰が待たれる



 4連敗の開幕4試合で、チームが迎えた得点圏での打席は21。そのうち犠飛1本、四球1を除けば19打数ノーヒット。これでは3完封を許したのも無理はない。しかもオープン戦終盤、古傷の左ヒザ痛を悪化させたブランコの調子が上がらず、練習中には左ヒザを保護する器具をつけなければならない状態だった。4連敗中の4試合は「五番・DH」に座ったが、ヒットは1本だけ。ポイントゲッターの役割を果たせなかった。

 1日にブランコ、9日にヘルマンが出場選手登録抹消され、分厚くなった戦力層を十分に活用できる状況になく、チーム打率は.216(4月9日終了時点)と、12球団最低の数字であえいでいる。

 ならば、どうすべきか――。

「まだ5球団全部と対戦していない状況だし、今年はどの球場で、どの相手に強いといったことも、これから出てくるだろうし、そういうことも考えて、いろんな選手を使うのも一つの手だろうね」と加藤康幸編成部長は、投手陣に関してはドラフト4位新人右腕の高木伴、同6位の左腕・坂寄晴一らの新戦力の台頭に期待を寄せ、ブランコが抜けた打線にも「大砲の役割が、今の打線の中で機能していないのは確か。そういうときには動ける、スピードのある選手を打線に挟んでいくのもいいかもしれない」と語り、森脇監督も「今は新しい人が出てくるチャンス。僕はそうとらえている」という。

 最後に“不吉な伝説”を――。

 大石大二郎監督時代の2009年、前年2位の躍進ぶりを受け、優勝候補に挙げる声が高まった中で、借金30の最下位。さらに岡田彰布監督時代には、前年に3位・西武に勝率1毛差の4位で競り負けた2012年、韓国の3冠王・李大浩(現ソフトバンク)の獲得に成功。戦力の充実をバックに、優勝候補に挙げられながら、これまた最下位に沈んだ。

「期待された年はダメ」――。

 それが“オリックスあるある”だと、ファンの間ではささやかれており、今年も“類似の状況”に映るのだが……。ここは“2度あることは”ではなく、3度目の正直となる『真の巻き返し』を信じたい。
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