週刊ベースボールONLINE


第57回 日本国内で移籍する外国人選手――失敗のリスクを最小限に抑える方策

 

 日本野球機構(NPB)は12月2日、プロ野球12球団が来季の戦力とみなしている保留選手の名簿と、これから外れた自由契約選手125人を公示した。自由契約選手はオリックスの17人が最多。同球団からは、32本塁打、90打点の好成績を挙げて2位の原動力となった四番打者のウィリー・モー・ペーニャが公示された。決裂の理由は、球団の単年度契約の提示に対し、複数年契約を希望していたペーニャ側が折り合わなかったからだと伝えられている。

 退団が決まったペーニャには、トニ・ブランコを放出したDeNAをはじめ、複数球団が間髪を入れずに獲得に動いた。それに対し、昨年の首位打者と打点王のタイトルに輝いたブランコは、オリックスが獲得。昨オフ、ソフトバンクからオリックスにペーニャ、逆にオリックスからソフトバンクに李大浩が移籍するなど、まるで交換トレードのような動きも珍しくなくなった。

▲今オフもブランコがDeNAからオリックスへ移籍するなど、外国人選手の国内移籍の動きが激しい[写真=井田新輔]



 トレードをはじめとした移籍は、一昔前まで日本では暗黙の了解として同一リーグでは行わないという時代があった。だが、それも過去のものとなりつつある。特に外国人選手はチームの浮沈に大きくかかわる存在ながら、移籍がタブーではなくなっているのは確かだ。近年では、12年にパ・リーグの最多勝を獲得したデニス・ホールトンがソフトバンクから巨人に移籍するなど、タイトルホルダーが新天地を求めるケースも多くなった。

 ある球団関係者は「これまで『戦力外の選手を放出する』という暗いイメージがあった移籍が、請われて移籍するようになったのは非常にいいこと。球界の活性化につながる」と、近年の助っ人の国内移籍を歓迎している。

 球団にとって、実績のある外国人選手の国内移籍は、リスク回避と、調査のための時間短縮を図れるというメリットがある。代理人が介在する初来日となる選手は、たとえビッグネームだとしても、コンディションまでは分かりにくい。成功するかどうかは、いわばギャンブルだ。「外国人選手を選ぶときに一番大事なのは、環境を含めた日本野球に適応できるかどうか」と、パのある編成責任者は強調。日本でプレーし、実績を残した外国人選手ならば、失敗のリスクを最小限に抑えることができる。

 今後、外国人選手は国内で転々と移動するケースだけになるのか、といえばそうでもないようだ。日本で好成績を挙げた選手は、例外なく金額をはじめとした要求がはね上がる。獲得のライバルとしてメジャー球団も加わるなど、提示された金額に応えられる資金力が必要だ。この条件に当てはまる球団は、どうしても限られてしまう。「だれも知らないような優秀な選手を発掘できれば、担当者冥利に尽きる」と、セのある外国人選手担当は語る。メジャー・リーグでは無名だったヤクルトウラディミール・バレンティンが、来日した11年にいきなり本塁打王に輝き、来日3年目に60本塁打を放ってシーズン記録を塗り替えた。

 日本ハム中田翔、ソフトバンクの柳田悠岐ら、外国人にパワーでも引けを取らない日本人選手が出てきたのは喜ばしい。だが、まだ外国人選手の力は必要。異国の未知の新戦力を披露し、新天地で開花させるのも、プロとしての一つの腕の見せどころだ。
日本球界の未来を考える

日本球界の未来を考える

週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング