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第95回 グローバル化とMLB――MLBへの働きかけと連動しながら国際大会の意義を訴え続けるべき

 

プレミア12へメジャー・リーガーが参加できない見通しとなった。田中将大の侍ジャパンの姿も見られない[写真=Getty Images]



 今年11月に東京と台湾を舞台に初開催される野球の国・地域別対抗戦「プレミア12」に、暗雲が漂ってきた。このたび「メジャー・リーグ機構(MLB)は所属30球団の40人の登録枠に入っているメジャー契約選手の不参加を決定した」と、現地関係者の話として一斉に報道。これにより、ヤンキースのエース・田中将大をはじめ、マーリンズのイチロー、マリナーズの岩隈久志、ジャイアンツの青木宣親ら日本人メジャー・リーガーも、日本代表「侍ジャパン」として出場できない見通しとなった。

 MLB側が選手供給を渋るのは、各国・地域が編成に苦心した過去3度のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と状況が似ている。だが、今回のプレミア12の事態はさらに深刻。MLBは公式戦に出場できるロースター40人が「出場不可」と明確に示しており、本人や球団が希望しても、出場は認められない。WBC2連覇を果たした日本をはじめ、第3回の同大会で優勝したドミニカ共和国も、メジャー・リーガーの力を借りることが一切できなくなった。各国・地域は“最強チーム”の編成が不可能で、骨抜きにされたプレミア12は「世界一を決める大会」からはかけ離れた状態となる。

 はっきりと認識しなければならないのは、MLBの最優先課題が「野球の世界的な振興、普及ではない」という現実だ。五輪競技から除外されたのは選手供給に非協力的なMLBの姿勢が一因と言われたが、その後も変わっていない。主催のWBCですら、単なる興行の一つ。五輪の競技復帰のための大々的なアピールとして位置付けられている新設のプレミア12でも、例外とはしない。MLBにしてみれば、犠牲やリスクを排し、自身の公式戦を万全な形で開催することが何よりも重要だ。アメリカという国家が時折示すような、国益を優先する大国のイデオロギー論にも通じる。

 とはいえ、MLBが名実ともに世界最高峰リーグであるのは間違いない。野球のグローバル化を視野に、いかに交流を進めながら融和できるか。日本をはじめ、球界が抱える大きな難題だ。

 WBCについては、MLBの情熱が失せてきたとささやかれている。東京五輪に向け、正式競技復帰は流動的。だからこそ、プレミア12は大事に育てなければならない。五輪復帰を腐心する世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催する、一部のカラーに偏らないと謳うニュートラルなイベントだ。サッカーのワールド・カップ並に大会の“格”が上がれば、世界的な振興・普及に直結する。日本国内でも、まだまだ認知度は高いとは言えない。MLBの対応も踏まえながらの大変な使命ではあるが、関係者が大会への価値と熱気を高めるべきだろう。

 MLB側が、こちら側に興味を示すように変えることも大事だ。まずは、大谷翔平(日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)、そして将来の清宮幸太郎(早実)らいずれMLBが触手を伸ばすであろうトップレベルの選手が、代表選手のユニフォーム着用を何よりの名誉と思える球界のムード作りが不可欠。将来海を渡る選手の契約書面に、「国際大会の代表召集を球団は全面的に協力する」という文言が入るのが当たり前となる時代が来ればいい。日本だけではなく、各国・地域からMLBに集まる選手たちの意識にグローバル化が根付けば、かたくななMLB側もきっと態度を変えてくる。

 プレミア12の成功と五輪への正式復帰は、今後の球界の行く末を大きく左右する。野球先進国の日本は、孤高の存在であるMLBへの働きかけと連動しながら、国際大会の意義を訴え続けなければならない。
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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