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黒田入団交渉の舞台裏 伝え続けた7年越しの思い

 

2月16日、黒田復帰会見に同席した鈴木本部長(左)。伝え続けた思いが成就し、万感の表情を見せた


2月16日、広島市内のホテルで黒田博樹の復帰会見が行われた。同席したのは黒田との交渉役を担ってきた鈴木清明球団本部長。黒田が広島を去る決断をした07年から、待望の思いを伝え続け、背番号15は再び、広島の地に降り立つことになった。
写真=石井愛子

球団と選手の枠組みを超えて


 黒田博樹の広島復帰はこの男なくしては成り立たなかった。広島・鈴木清明球団本部長である。この物語の始まりは、黒田がアメリカに渡った3年後、ドジャース時代にまでさかのぼる。いや、黒田がFA宣言したときから始まっていたと言っていいだろう。

 07年オフのことだ。鈴木球団本部長は黒田に伝えていた。「ボロボロでも困るし、バリバリでも帰ってこいとは言えない」“通例”ならメジャーで成績が残せない、または出番が少なくなったときに復帰するのがセオリーだ。

 だが黒田の性格上、それがないことは分かっていた。タイミングは黒田にしか分からない。だから毎年オファーを出し続けた。黒田の現在進行形の心境を知りたかった。何度も断られたが、それでいて本音は別のところにあった。もはや交渉ではない。親心にも似た感覚だった。正直な心境を明かす。

「向こうで成功して、また1年向こうでやるということは、うれしかった。どうしてもウチに帰ってきてほしいんだと、何としてでも、という感じではなかった」

 ただ、今回は別だった。引退する、そう思った。可能性は引退が40パーセント、メジャーと広島復帰で30パーセントずつと言われていた。もし、来季メジャーでプレーして5勝、6勝に終わったら……。いや、もっと勝つはずだ。そう信じる気持ちに変わりはない。だが「ダメだから帰ります」が、黒田の美学にないことは鈴木球団本部長が一番知っていた。

 今回の交渉はまったく明かされなかった。アプローチしていることも、報道陣の質問にさえも口を閉ざした。鈴木球団本部長なりの誠意だったのかもしれない。しっかりと話をしたのは3回。だが「自信も手応えもまったくなかった」と言う。報道ではドジャースの高額オファーやパドレスがオファーを出したという情報が流れていた。日本の、それも地方球団の出せる条件とはかけ離れていた・・・

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