平成最後の年にメジャーでニュー・ヒーローが誕生した。「二刀流」に挑戦したエンゼルスの大谷翔平だ。ア・リーグ新人王に輝いたこの1年を振り返る独占インタビューをお送りする。 取材・構成=椎屋博幸 写真=高原由佳(インタビュー)、Getty Images 協力=デサントジャパン株式会社 投手ではデータを多くは重視せず
──メジャー挑戦1年目、お疲れさまでした。メジャーを経験されて「野球」と「ベースボール」の違いを感じた部分とはどういうところでしょうか。
大谷 ありがとうございます。野球の違いというのは、そこまで感じる部分はなかったです。それよりもメジャーは単純に“レベルが高い”。それはオープン戦から感じていました。
──海を渡る前、大谷選手の中で「メジャーのレベルはこれくらいだろう」と感じていたところがあると思います。実際にはどうだったのでしょう。
大谷 たいぶ違いました。かなり高かったですね。(メジャーに)行くまでは願望も含めて日本プロ野球のレベルはメジャーに近いところまでは来ているんじゃないか、と思っていました。負けていないでほしいな、という願望も含めてですが……。テレビの画面上ではなかなか伝わりにくい部分で、相当高く、それを肌で感じられたのもよかったです。
──では、メジャーに日本とまったく違う野球のスタイルがあったという感じではなかったのですね。
大谷 多少、スタイルは違ってはいました。中南米の選手たちも含め、多くの国から集まってくるのがメジャーですから、そこでいろいろな野球観がミックスされるので野球のやり方やとらえ方にも違いは多少ありましたね。ただ、「野球として」やっていることは変わらないと思います。その中で実力自体が「高い」と素直に感じました。
── 一人ひとりの……。
大谷 はい、ポテンシャルがそれぞれ高いですし、チーム単位でも違います。その中で、球場の設備の面だったり、ラボ(ビデオルーム)の充実だったり、そのレベルの高さも違うな、と。
──選手にとって、すごく充実した環境が用意できているのですね。
大谷 もうすべてにおいてですね。普段の生活の面で、困ったことなどはほぼなかったですし、本職の野球のほうでは、その違いをたくさん感じました。
──違いについてですが、投手として、メジャーの公式球とマウンドには慣れましたか。
大谷 まず、キャンプ地のアリゾナと本拠地のアナハイムとでは気候が違ったので、公式球の滑りなどで少し苦戦はしました。ただ、最後はアジャストできたかな、と思っています。でもメジャーでは10試合しか投げていないですから、まだ慣れたとは言い切れないです。
──マウンドの硬さはどうですか。
大谷 そこまでマウンドに関しては感じることはないです。自分の技量で何とか乗り切れるものだと思っていますので、ギア(スパイク)などを大きく変更しようというものもないです。
──本拠地での開幕戦(4月9日)、アスレチックス戦は素晴らしい投球(7回1安打無失点)でした。アストロズやレッドソックスという強豪と対戦しましたが、レベルの高さを感じたでしょうか。
大谷 どのチームもそうですが、一番打者から九番打者まで全員レベルが高いです。レッドソックスは特に高いと感じました。「失投は逃しません!」というプレッシャーを一番から九番まで、すごく感じてマウンドにいました。
──その対策をデータを見ながらきっちりやってからマウンドへ……。
大谷 実はピッチャーのときはそこまでデータは重視していないんです。自分がいかにいい状態でマウンドに上がれるか、いかにいいボールを投げるか、のほうに集中していました。それが僕の中で最優先事項です。
──登板に向けて体調を整えることを優先的にやろうという意識ですね。
大谷 はい。これは
日本ハムのときから変わらないことですね。ピッチャーはまず自分のボールをキッチリ投げられてから、打者へ、というのが僕の考えです。バッターに関しては、この作業とは逆。野球は投手が投げて始まる競技です。投手の球を迎え撃つ打者は、まず相手投手のことを知らないと対応できないです。
──自分の打撃の調子がよくても、相手投手が絶好調なら、なかなか打てないと思います。
大谷 お互いの間に実力差があり過ぎれば、データはそこまで必要ないですが、実力が拮抗(きっこう)している選手同士ほど、打者は相手を知らないと打てない。知っていればヒットを打てる確率が高くなります。
──その打撃ではオープン戦で結果が出ずに開幕戦でいきなりノーステップの打ち方に変更しました。
大谷 もともと日本でプレーしていたときから、ノーステップで・・・
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