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2015シーズンへ始動開始!

日本ハム・大谷翔平 唯一無二の存在へ

 

年が明け、2週間あまりが経過したが選手たちも新しいシーズンへ向け本格的に始動。どの選手にもテーマがあり、戦う理由を持っているが、ここでは今季、目が離せない3選手をピックアップ。それぞれの立ち位置で意気込む彼らの心意気――
文=高橋和詩 写真=高原由佳

西岡剛 たくましくなった優勝請負人
井納翔一 謙虚さの裏にある決意

▲鎌ケ谷で自主トレに励む大谷。今季はプロ入り後、封印していたワインドアップも試している



さらに二刀流を昇華させる信念


 未知の突き抜けた才能が行く先の終着点は、見えてくるのだろうか。日本ハム大谷翔平が、3年目を迎えた。プロ入りから二刀流に挑み、周囲の懐疑的な風潮、意見を圧倒的かつ魅力あふれるパフォーマンスで封じ込めてきた。2年目の昨季は11勝&10本塁打。3勝、4本塁打だった1年目からは数字上で大きな上積みを見せて、説得力十分な成長曲線を描いている。同一シーズンの2ケタ勝利、2ケタ本塁打の達成は1918年のベーブ・ルース以来と脚光を浴びた。球史に残る偉人の名前がクローズアップされるほどの進境だった。

 成熟の一途をたどっているが、今季は歩みを止めないためにも勝負のシーズンになる。大谷は何を思い、何を理想としているのか。千葉・鎌ケ谷で自主トレを公開した年明けの1月5日、自然体の目標を明かし、またそこに少しの自信がにじんでいた。

「特に変わったことをするつもりはない。やることをしっかりやればいい。引き続きやることをやっていければ、いいかなと思います。3年目、どういう成績になるか楽しみです」

 その言葉が意味するものは二刀流をさらに昇華、ベースアップさせようとする強い意思と確信だ。今季は投手として確固たるエースの座を確立させる可能性があるだけでなく、それが使命ともいえる。昨季は1年間、ほぼローテーションを守り続けることができた。24試合に登板して2完封を含む3完投、155回1/3を投げ切った。シーズン終盤は、初体験の1年間フル稼働の余波もあり、蓄積疲労に悩まされてコンディショニングが整わず、調子を下降させていった。ただ、1年間のペース配分を体験できたことが、一番の収穫だった。徐行運転だった1年目の13年は13試合登板で、うち中継ぎが2試合。1、2年目を比べれば飛躍的な成長を遂げた。二刀流の軸となるのは投手である。ローテーション投手として1年を通して投げることへの対応法を把握できたことで、今オフに取り組むべきことが明確になった。大谷も「昨年を踏まえて今年またやってみて、ですね」と見ているように、大きな発見があったのだろう。

オフに実践する肉体面の強化


 昨季は1試合平均の投球回は7回未満。今季は年間180回以上を、1つの目標としているという。そのためオフ期間に、昨年から継続して取り組んでいるのが肉体面の強化だ。シーズン中は二刀流を実践していることもあり、過度な負荷のかかるメニューは避けているが、この期間は一気に土台を作り替えている。車でたとえるのであれば、排気量を上げる作業に取り組んでいるのだ。周囲の関係者によれば、背筋などが目に見えてたくましくなっているという。

「何キロとか決めてないですけど、増やしていく」

 昨年も約4キロの増量に成功してキャンプインし、一定の成果を上げた。それでも未完成で、パフォーマンス向上の余地があると判断し、さらなる高みを目指している。

 防球ネットに向かってのスローイング、投球動作の確認など、投手としての技術練習もシンクロさせ、変化していくボディの操作性も確認しながら、クレバーに課題と向き合っている。タフさを増し、プラスアルファで精度も高める。大黒柱としての任務の1つである、長いイニングを投げ切ることができれば、自然と勝利数など各種成績も好転するだろう。それは二刀流のレベルをさらに上げるための要素ともいえる。衝撃的な進化を見せ続けているが、まだ残されているシンプルな課題をクリアすることが、一番の大きなカギと自他ともに導き出している。

まずは投手としての起用を主眼に


 この局面を乗り越えれば、自然と驚異的な成績を残す可能性が高い。登板試合数は昨季とは大きく変わることなく、25試合前後となりそうだ。1試合平均のイニング数を増加させることができれば、投球内容が良くなり、ゲームメークできていることの証明にもなる。その結果、勝利数、防御率、三振数などが、飛躍的に向上すると推察できる。故障さえなく1年間を先発ローテーション投手、しかも大黒柱としての地位を確立できれば、沢村賞の候補にもなり得るだろう。昨季同様に、栗山英樹監督は今季も継続して投手に主眼を置いた起用法を念頭に置き、二刀流を運用していく方針を掲げている。「まずは先発投手。それが機能したら次は打者でDH。それもできたら守備に就く」。その言葉から推察できるのは、野手としての出場機会が停滞する可能性が高くなることだ。

 昨季は86試合に出場し、先発出場は53試合で計234打席だった。1年目の打席数は204打席だった。投手調整などで制約もあり、現実的に野手での出場には限界が出てくる。投手としては、昨季のように規定投球回に到達することは、アクシデントさえなければ見込める。しかし、打者としての規定打席到達は極めて厳しいと言わざるを得ないだろう。この2年間、ともに200打席台の前半にとどまったことを考えても、今季も同程度、あるいは幾分増加するかもしれない。昨季は打率を3分以上上げて、本塁打数も増加したが、その数字から爆発的な成績の向上は望めないのではないか。

▲天性の打撃センスで昨季、11本塁打をマークした。今年はどこまで数字を伸ばすか楽しみだ



 相手球団、投手の対策、配球、傾向などを生かし、これまでのキャリアハイをたたき出す可能性は十分にある。ポテンシャルと完成度の高さは、入団時から投手より打者と評価されている。今季も一定の水準で底上げはなされるだろうが、投手ほどの圧倒的な変化は起こらないだろう。栗山監督は登板翌日の野手出場の可能性を示唆してはいるが、それも通年で行うことは厳しい。

 今季もDH起用が基本プランになると見られる。出場機会が限られれば、打撃成績は必然と収まるべき数字になると見るのが常識的な見方だ。投手としてたたき出した昨季の成績が、すでに突出しているのだから、多くを求めるべきではないのかもしれない。

 大谷は年始のあるインタビューで二刀流について「生きがい」として自身の中で位置付けていることを明かした。野球、プロでプレーする上での大きなモチベーションが、2つの顔を持つ自分のオンリーワンの個性なのだろう。二刀流という響きでは両者は並列に見えるが、3年目を迎えて観点を少しずらして見ると明確になるかもしれない。発展途上の投手を極めながら、一流の水準にある打者としての価値もグラウンド上で解き放つ。15勝&20本塁打なのか、はたまた20勝&30本塁打なのか。周囲は期待し、分かりやすい数字を求める。ただ異論、反論が渦巻いた二刀流で走り出した原点に立ち返れば、プロのトップレベルで両立させている現実が尊い。それを3年目も続けている20歳の一挙手一投足を純粋に――。それが、唯一無二の大谷翔平の至極の楽しみ方なのかもしれない。
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