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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

併殺を防ごうと一塁走者が二塁前へのゴロをわざとつかんだ場合の処置は?

 

無死一塁です。打者は二塁手前に転がるゴロを打ちました。一塁走者はこのままではダブルプレーになると判断し、目の前に転がってきたゴロを走りながらわざとつかんでしまいました。当然、二塁手は次のプレーをできないわけで攻撃側は併殺を免れた形になりましたが、これは併殺を防ぐための頭脳的なプレーとして、成立するのでしょうか。

 頭脳的なプレーどころか大変な規則違反です。公正な野球規則が、こんなインチキなプレーを許すわけはありません。しかし、かつてはこのようなプレーが許されていた時代がありました。アメリカで、併殺を防ぐために実際にこのプレーを実行した選手がいるのです。

 1957年の開幕間もない4月中旬のレッズ対ブレーブス戦の1回表のことでした。1回表にレッズは一死一、二塁で打者は遊ゴロを打ちました。ブレーブスのジョニー・ローガン遊撃手は併殺コースに飛んだ打球に向かっていました。しかし、二塁走者のドン・ホークがそのゴロをつかんでしまったのです。ホーク選手はローガン遊撃手にボールをポイと放り投げると、さっさとベンチへ戻ってしまいました。

 守備側は怒ったところで、走者がボールをつかんだ瞬間にボールデッドになりますから、当時の規則では二死一、二塁で試合を再開しなければなりませんでした。しかし、こんなインチキなプレーは許せないというので、現在の規則7.09(f)が作られました。

「走者が、明らかに併殺を行わせまいとして故意に打球を妨げるか、または打球を処理しようとしている野手を妨害したと審判員が判断したとき、審判員は、その妨害した走者にアウトを宣告するとともに、味方のプレーヤーが相手の守備を妨害したものとして打者走者に対してもアウトを宣告する(以下略)」

 この場合、ボールデッドとなり、ほかの走者は進塁も得点も許されません。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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