同点の9回裏、二死満塁から打者が四球を選びました。通常ならばホームチームのサヨナラ勝ちのケースです。三塁走者は順当に本塁を踏みましたが、これを見ていた一塁走者はその瞬間に試合終了と思い、二塁ベースを踏まずにベンチへ戻ってしまいました。これを見てビジターチームの二塁手が捕手にボールを要求して二塁ベースにタッチし、一塁走者は封殺だから三塁走者の押し出しの得点は認められないはずで、チェンジで延長戦だ、と主張してきました。この場合の裁定はどうなるのでしょうか。 この場合の得点は認められ、サヨナラ勝ちは成立します。二死後、走者が封殺されたときは、いくら本塁を踏んだ走者がいても得点にならないのは、いまも昔も変わりません。しかし、四球でサヨナラ勝ちの場合は、打者と三塁走者が次の塁を踏んでいれば、得点は認められるのです。
最終回、延長回の裏の得点について定めた規則5.08(b)の【注】にはこうあります。
「たとえば、最終回の裏、満塁で、打者が四球を得たので決勝点が記録されるような場合、次塁に進んで触れる義務を負うのは、三塁走者と打者走者だけである」 あの有名な『マークル事件』をご存じの方には、得点が認められることに首をかしげられるかもしれません。1908年にニューヨーク・ジャイアンツがシーズン終盤のカブス戦で、中前安打でサヨナラ勝ちしたかと思われたのに、一塁走者のマークルが二塁ベースを踏まないで戻ってきたばかりに、アピールされて、得点を取り消された事件です。
この試合が引き分けに終わったのが原因でジャイアンツは優勝を逸したので、史上最大のボーンヘッドとして、いまだに語り草になっています。しかし、5.08(b)の場合(つまり、四死球の場合)は違うことを覚えておきましょう。