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岡江昇三郎

新人が夢を語るのはいいが、「才能とは偶然の礼拝である」ことも肝に銘ずべき。退団までしっかり勉強を

 

ヤンキース・黒田は1年16億円で残留したが、新人諸君はそこにだけ目を奪われないでほしい[写真=AP]


 谷川雁(がん)という詩人を知っている人は、もうほとんどいないかもしれない。日本共産党に所属していた人だが、九州から動かず、共産党や日本社会党といった左翼勢力の独善性や中央集権的体質をトコトン批判し続けた詩人だった。

 ここは谷川の詩を論じる場ではない。彼は、野球が好きで熊本県の旧制中学生のころ、若き日の熊本工・川上哲治を熊本水前寺球場で見ている。それをあるエッセーで書いていたが、川上のあふれるような才能に感嘆している。痛烈な弾丸ライナーに見とれてしまったのかも。

 その谷川が、別のエッセーで「才能とは偶然の礼拝にすぎぬ」と書いている。これを見つけたときは、思わずうなってしまった。「才能」を持つと思われている人間のうぬぼれと、その「才能」をありがたがる軽薄な周囲の人間の双方を撃つ言葉だったからだ。川上の弾丸ライナーは、まぎれもなく彼の才能であり、それをファンが礼拝するのは、これはまた当然のことだった。

 しかし、ほとんどのプロ野球選手の「才能」と言われるものは偶然の産物である。偶然が作用してくれず、凡退したり、失投したり、エラーしたりすればすぐに「こいつは無能だ!」の罵声が待っている。

 本当の才能を持つ選手は、失敗しても許される、というか・・・

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プロ野球観戦歴44年のベースボールライター・岡江昇三郎の連載コラム。

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