しなやかで美しい投球フォームから投げ込まれる速球はMAX143キロ。打者の内角を突く強気のピッチングも持ち味だ。甲子園の舞台を踏んだことはないが、178センチサウスポーのスカウト評は高い。決して揺らぐことがないプロへの強い気持ちを抱き、あこがれの舞台への扉を、自らの力で切り開く。 取材・文=谷上史朗写真=太田裕史 ▲伸びのあるストレートと変化球のコンビネーションで三振の山を築く奪三振マシン。今夏の甲子園予選の準々決勝・八幡商戦では13三振を奪った
冒険の道を選んだ左腕
あるスカウトがぼやく。
「志望届を出せば十分ドラフトにかかるのに最近はなかなか出してくれない。夢より現実、そんな選手が増えました……」
別のスカウトもうなずく。
「僕らが見て判断する、選ぶより、今は選手が選択する時代。限られた中から指名するのは大変ですよ」
確かに近年は、社会事情も変わり、冒険より堅実な道を選ぶ選手が増えた。つまり、高卒選手であればドラフト上位指名可能な実力を持っていても大学や社会人へ進む……。もちろん、ユニフォームを脱いだあとの生活を考えてのことだ。今年もその傾向は続き、その上、さらにスカウトを悩ませるドラフト事情がある。左腕不足だ。
高校生の実力派、
田嶋大樹(佐野日大)は社会人、
森田駿哉(富山商)、
小島和哉(浦和学院)は大学進学と伝えられており、そこへ続く第二グループの選手にも同様の流れがある。その中、現段階で指名の可能性は「正直、微妙」と指揮官も本音を漏らす1人のサウスポーが敢然とプロ志望を表明している。
滋賀学園のこの夏のエース、中嶋優佑だ。魅力的な素材であることは間違いない。投球風景を見れば、スムーズな肩回り、ヒジ使いの柔らかさは一目瞭然。足幅をやや狭めに踏み出し、下からのねじれを順に上へつなげ、最後には顔のそばを通って出てきたヒジ先が気持ちよく走る。特にスカウトが元投手なら大いに好むであろう美しいフォームから回転の効いた真っすぐを投げ込む。先々の伸びをイメージさせる素材型左腕に、山口達也監督も楽しみを語る・・・
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