目覚めた闘争本能各球団の将来を担う若手有望株を直撃する「PROSPECT FILE」インタビューの第2回は、楽天の新進気鋭の外野手・榎本葵が登場。昨年は開幕前に右ほほを骨折するアクシデントに見舞われたが、ペナント中盤に一軍へ昇格。チームに勢いを与える値千金のサヨナラ安打を放つなど、ブレークへの足がかりをつかんだ。迎えた入団4年目の2014年シーズン。キャンプから存在感を発揮し、自身初の開幕一軍のキップも勝ち取った若武者がスターダムへと駆け上がる。 取材・構成=松井進作 写真=BBM 4年目の原点回帰 ──2014年のペナントが開幕しましたが、入団4年目となるこの1年はどんなシーズンにしていきたいと思っていますか。
榎本 4年目ということで危機感もあれば、楽しみなシーズンでもあります。過去3年間で技術的にも少しは成長できていると思うので、あとは試合で結果を出したい。それに尽きますね。
──プロ入りしてからの3年間で自分が一番成長できたなと思える部分はどこですか。
榎本 守備と走塁に関してはそれなりに自信がついてきましたが、バッティングはまだまだ……ですね。
──2月のキャンプでは連日のように平石(洋介)打撃コーチからバッティングフォームについて指導を受けている場面が見られました。どんなアドバイスを?
榎本 実はフォームを1年目のときの形に戻そうかなと思って、それでキャンプからずっとテーマにしてやってきました。昨年までのフォームも悪くはなかったんですけど、自分がとらえたと思った打球がフェンス際で失速したりすることがあったので。それで平石コーチにいろいろと相談して、二軍だったんですけどそれなりに結果が出ていたころのフォームにもう一度戻そうかと。
──昨年のフォームと決定的に何が違うのでしょうか。
榎本 見た目には大きな変化はないんですけど、一番のポイントは打つときの軸を前に置いていることなんです。昨年とかはずっと後ろに軸を置いて引きつけて打っていたんですけど、なかなか自分の思うような打球を打つことができなくて。それで前軸に戻そうと。
──実戦でも何度か打席に立っていますが、ここまでの手応えは?
榎本 まだ理想のフォームが100だとすると50ぐらいです。体重移動の仕方を含めてベストのタイミングやポイントを見つけるために、これからも高い意識を持って自分が納得のいくフォームを作り上げたいと思っています。
──でも、こうして試行錯誤しながらも一軍でプレーできていることには充実感も感じているのではないですか。昨年の今ごろは右ほほの骨折(オープン戦の試合前に他選手の遠投のボールが激突)の影響でバットすら握れなかったわけですから。
榎本 本当にそうですね。昨年の春先はまだランニングをやっと始めたぐらいなので、そういう意味では開幕から一軍で元気にプレーできていることはうれしいですね。
──昨年は大ケガを乗り越え、シーズン中盤に一軍に昇格。そして、あの8月25日の
ロッテ戦(Kスタ宮城)でのプロ初打点でもあったサヨナラヒットが生まれました。あの1本というのは榎本選手の中でも大きな自信になったのではないですか。
榎本 うれしかったですね。あのヒットで名前も覚えてもらえたと思いますしね。ただ、シーズンが終わってみればサヨナラヒット1本だけで終わってしまったので。いかに継続していけるかという部分を追い求めていきたいです。そのためにはもっと、もっと技術を上げていかないとダメですし。打席の中でも甘い球をまだまだミスショットしていることも多いので、1球で仕留める確実性を高めていきたいと思っています。
▲昨年の8月25日のロッテ戦(Kスタ宮城)でのサヨナラ安打を放ったシーン。ニューヒーロー誕生の予感を感じさせる一打だった