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リリーフ陣が課題と言われるチームにあって、頼もしい存在だ。昨季終盤、逆転でのクライマックスシリーズ進出へと負けられない試合を戦う緊張感の中で、左腕の度胸満点のピッチングはチームを勇気付け、スタンドを沸かせた。今季は開幕からセットアッパーを託され、その期待に応えようと、決して好調ではないと言いながらも、試行錯誤を重ねている。いまや試合の最終盤、9回のマウンドに立つことも多い。悩めるチームに、一筋の光をもたらすプロスペクト(若手有望株)だ。
取材・構成=田辺由紀子 写真=斎藤 豊(インタビュー)、BBM

2年目の「冷静」

──今季は開幕からセットアッパーを任されました。1カ月以上が経ちましたが、開幕直後とは心境や投球に変化はありますか。

高橋 そうですね。だいぶ変わりましたね。変わったというか、変えたってところですかね。開幕から「8回は高橋」と言われていて、「絶対抑えたろ」と思ってて。バッター云々より、強い球を投げようという気持ちがとにかく強かった。それが強過ぎて、ちょっとバランスを崩して、ボールも行かなくて。それで4月13日の日本ハム戦(札幌ドーム)でサヨナラの一発を打たれてしまった。そこから、ちょっと気持ちの持って行き方を変えるようにしました。気持ちを入れ過ぎないように、ですね。変な意味じゃなく、気持ちを1回落として、「もうなるようになれ」と。軽い気持ちでピュンピュン放っていたらブルペンで調子が良くなってきて、それでマウンドでも無心で投げるようなってきて。例えばヒットを打たれても、「まあ、いいや」と切り替えて……。そこから、徐々に良くなってきましたね。

──昨年はかなり気持ちを前面に出して、それで成功した部分もあったかと思うのですが。

高橋 今年もそれで行こうと思ったんですけど、いまひとつ気持ちと体がかみ合ってなくて。どこか気持ちだけが先走って体がついてこない……ということが多かったので、じゃあ気持ちを抑えようと思って。冷静にやるようにしていますね。

──冷静にやるようになって、気持ちと体がフィットしてきた。

高橋 そうです。追い込んでから、1球ボールを投げるとしますよね。それで三振を取ったろと思ったら、自然に気持ちもぐわっと燃え上がる。そこで思い切り投げたら、いいボールが行くようになって。だから、今、それがちょうどいいのかなと。

──では、今、調子的には。

高橋 徐々にですけどね。ほんとに徐々には、絶不調から不調、不調から普通の間をうろうろとしてるくらいなので。正直、好調とは言えない(笑)。

──「ボールが行かない」のは気持ちの面以外に何か要因というのは?

高橋 体が軽過ぎたというのもありました。昨年シーズン後半を投げて、体がだいぶ疲れたんで、これを144試合やるならちょっと抑え気味にと思って。ブルペンで投げない日も続いて、過保護にし過ぎて(笑)、オフ状態の体になっちゃっていたので。自分の中でミニキャンプをやろうと決めて、朝にウエートをしたり、ランニングを多めに走ったりとかをやり始めて、それで最近はだいぶ良くなってきました。

──4月19日には、自身初セーブをマークしました。

高橋 (菊池)雄星の今季初勝利っていうんで、自分の初セーブより、雄星を祝っちゃったので、初セーブした気にもなってない(笑)。あんまり記録にはこだわらないですね。

──この日は9回に行くというのは、いつ言われましたか。

高橋 8回の雄星が投げ終わったあとですね。最初に8回に行くかどうかというときに、雄星がそのまま行くと。糸井(嘉男)さん、ペーニャと一発があるバッターだったので、「もし同点に追いつかれたら高橋」って言われて。無事に8回を雄星が投げ終わって、ブルペンに電話がかかってきて、「9回、高橋」と。

▲4月25日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では、1点差と詰め寄られた9回ニ死一、三塁で登板。先発・岸の2勝目をアシストした



──心の準備は問題なかった。

高橋 そうですね。9回は十亀(剣)さんとどちらが行くか分からないと最初から言われていたので。西武ドームはブルペンの後ろにファンがいるじゃないですか。「十亀、頑張れよー」とか声援が聞こえて。ファンの方たちもまさか僕が行くって思っていなかったみたいで、「おっ」って差し込まれてましたね(笑)。

──試合展開によって、集中の仕方も変わってくるかと思います。

高橋 昨年はどこで行くか分からなかったので常にハラハラしていましたが、今は8回または9回と限定されているので。だいたい行くか行かないかは見ていてある程度分かるので、点差などを見ながらスイッチを切ったり、入れたり。そこは切り替えができていると思います。
プロスペクトインタビュー

プロスペクトインタビュー

各球団の将来を担う若手有望株へのインタビュー。現在の不安や将来への希望が語られます。

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